第一章
実家へ無事帰省した宏樹はまずは今の自分の状況を私情を挟まず説明した。
それを聞いた母こう返した。
「大変だったわね。」
「うん。こんなご時世だからね。」
「でもまぁ、暫くゆっくりして行けるんでしょう?」
「そうだね。一応そのつもりで帰って来たけど居て迷惑なら早めに帰るよ。」
「そんな迷惑な訳無いでしょ。アンタは母さんの可愛い一人息子なんだから気が済むまでいてくれて良いのよ。」
「ありがと。母さん」
「あ、そうだせっかく久々に宏樹が我が家に帰って来たんだからアンタが好きなものを夕飯に出すからね。楽しみにしてなさい。それじゃ私は夕飯お支度があるからその荷物を置いてリビングで休んで待ってなさい。ここまで来るのに疲れたでしょ。」
「そうだね。じゃあ母さんのお言葉に甘えてそうしようかな。夕ご飯楽しみにしてる。」
「任せなさい。」
と元気に宏樹にそう返す小百合。
それから小百合の言う通り荷物を置いて夕飯が出来るまで休んだ。
そして夕飯が出来上がったので食卓テーブルがある部屋に宏樹を御飯が出来たと声を掛ける小百合。
その呼び出しに素直に応じ食卓テーブルがある部屋に移動する宏樹。
「おぉー!母さん腕によりをかけたね。凄いじゃん。こんなに沢山…。美味しそう」
「当たり前よ。アンタが出て行ってからも父さんの分や自分の分たまにご近所さんにも腕を振るってるんだからね。むしろ前より腕が落ちるどころか上がってるんだから!」
「それは楽しみだなぁ~。ってそういえば父さんはどうしたの?」
「あぁー!言い忘れたわ。父さんはね。丁度昨日から会社の旅行に行って数日帰って来ないのよ。父さんもアンタに会いたがってわよ。」
「そうなんだ。父さんが…。なら帰って来る時に会えるか分からないけど会えなかったらちゃんと電話だけでもするよ。」
「えぇ。そうしなさい。きっと喜ぶわよ。アンタの事心配してたからねお父さんも。」
と親子の会話をしたところで冷めないうちに母の手料理を頬張った宏樹。
この数時間で多少のリストラで落ち込んだ気持ちや不安や緊張を和らげた。
少し晴れやかな表情になった息子の姿を見て微笑む小百合であった。
御飯を食べ終わるとその後はお風呂に入って旅の疲れを癒した。
その後は眠気が来るまで小百合と雑談をしてから
その日は幕を閉じた。
そして翌日
朝ご飯を食べ、宏樹は支度をして実家の周辺を生き抜きに散歩する事に決めた。
外に出ると昨日よりもより鮮明に景色が宏樹にとっては見えた。
「昨日は全然気付かなかったな…。でも懐かしいな。あっ、この畑まだあったんだ。お、こっちは良く昔行った商店があるなんか感動だな…」
と久々の実家の周辺でテンションが上がる宏樹。
それと同時にフラッシュバックする雪花との思い出
でも何故かそれを思い出すたびに胸がざわついていた。
暫く地元の周辺を感傷に浸りながら歩いていると急に声を掛けられた。
「あんた、もしかしてひろ君かい?」
「え?あ!広瀬のおばさん!」
「そうだよ。いや~暫く見ない間に大きくなったね。」
「そうですね。もう成人はしたんであの頃からはだいぶ経ちましたね。」
「そうね。昔は一緒によく居たゆかちゃんに助けられたり後ろについて歩いてたあのひろ君がねぇ~今はこんなに立派になって。そういえばゆかちゃんとは今でも仲良いのかしら?」
「今は…全然絡みが無いですね。」
「あら、そう。でも久しぶりに会えて嬉しかったわよ。ひろ君。それじゃこれからも頑張ってね。」
と言って去っていた。
広瀬のおばさん
幼少期の頃の宏樹と雪花とはよく交流のあった宏樹の家から少し遠くの方に住んで居る人である。
その後も宏樹は散歩を続けたが先程のやり取りでの自分の発言がどうも自分の中で引っかかっていた。
「なんでこんなに不快な気分になるんだ…」
と悶々としながらまた更に歩いていた。
ふとした瞬間に我に返ると時間を気にし、スマホを取り出し時間を確認した。
「十一時二十五分か。とりあえずお昼時だから一旦家に帰るか。」
と来た道を急ぎ足で進み実家へと帰った。
無事実家に帰ると母小百合が居た。
「あら、お帰り宏樹。お昼どうする?うちで食べる?それともどこかに食べに行くかい?」
「うーん。母さんが作るの大変そうだから食べに行こうか。俺が奢るからさ。」
と母親を誘い外食に出掛けた。
料理を注文し
その待ち時間に宏樹は思っていた事を吐露する。
「なぁ、母さん今までこうやって帰って来なくてごめんな…心配してたよな。」
「そうね。でも今こうして顔を出してくれて一緒に過ごせる時間とその気持ちだけで母さんは十分よ。」
「そっか。」
「そうよ。」
「あっ、そうだ。母さん」
「なぁに。」
「俺の昔の写真ってうちにある?」
「あるわよ。それがどうしたの?」
「見たいなぁと思って」
(何故俺がそんな事を提案するのかと言うと俺はあまり雪花ちゃんとの頃の事をあまり覚えていないだが、今何故か気になるのだ。だから当時の写真を見れば思い出すと思った。)
「良いわよ確か家の押し入れに昔の物は締まってあったはずだから家に帰ったら探すって事で良いわよね?」
「それでいいよ。」
と話をつけて暫くすると頼んだ料理が運ばれてきた。
その後しっかりご飯を食べ、実家へと戻る。
「それじゃ、探すわよ。宏樹」
「そうしよう。」
と準備をして協力しながら荷物を出してい行きつつ探す二人。
「ここだっけ?」
「いや、そこじゃないわ。もっとここよ。」
「そっか。」
とやり取りしながら約三十分部屋の物を出してやっと昔のアルバムが出てきた。
それを開いて母親と眺める宏樹。
「これ高校の時のだ。懐かしいな~。あっ、居たな。あの頃はよく一緒に遊んだっけ。」
と高校の頃の大会やたまたまその時に撮った写真がアルバムに入っていた。
眺め終わると奥から一瞬ピンと来ない無くて覚えのない古い箱と高校時代のより古いアルバムが二つ出てきた。
とりあえず、見つけた順にアルバムから開いてどんな写真があるのか見てみた。
「へぇ~昔の俺ってこんな事してたんだ。全然覚えてねぇな。」
などと呟きながらページをめくって行く。
そして最後のページを開くする中学に入学の時の写真だった。
どうやら逆から見ていたようだ
だんだん自分の表情が暗くなっていってるのが分かった。
そして極めつけが入学式の時の写真は特に暗かった。
「なんで俺こんな暗い顔してるんだ。それになんだこの苦しい気持ちになる実感は…」
なんだか少し怖くなった宏樹はすがるようにもう一つのアルバムを手に取り開く。
そこに映っていたのは明るい表情で立木雪花と移る幼き日の自分の姿だった。
「もう全然覚えてないけど。なんでか…懐かしいって感じるな。それに心がモヤモヤする…。」
と夢中で何かを探す息子の姿を見て小百合はその集中を壊さないようにこっそりと部屋を出る。
その事にも気づかず夢中でアルバム丁寧に見て行く。
すると雪花と昔家族ぐるみでよく行った遊園地の写真を見てふと当時の記憶と気持ちがフラッシュバックした。
「あっ…そうだ…なんで俺忘れてたんだろう。こんな大事な気持ちに…」
宏樹が思い出したもの
それは…宏樹にとって雪花が初恋の相手だった。
それを遊園地に行ったこの時、周りのカップルを見てあのカップルみたいなことをしたいと思ってそいうそぶりを頑張ろうとしたがことごとく失敗に終わった。
それは当時雪花が
「ダメだよ。宏樹君こいう事は本当に好きな子だけにしなさい。それにまだ早いわよ。」
と言われ阻止されてしまった。
当時はそれでかなり落ち込んで帰った事があった。
それと同時に何故自分が雪花の事を好きになったのかも思い出した。
いつも自分が困っていたら助けてくれて頼りになって何より一緒に居ると安心してでも何より彼女の笑顔それらを含めて段々と異性として意識して行った。
その意識を思い出した上で幼少の頃の写真を見て行くと当時の事や好きだという実感が蘇って来た。
するとある写真が引っ掛かった。
森の中で二人で汚れながらも満面の笑みで映る写真
その後ろにある秘密基地のようなものを見て宏樹は
当時の興奮を思い出した。
「あったな!ここ、懐かしい。」
と秘密基地で過ごしていた頃の事も思い出し、その他にも沢山の雪花との思い出の写真を見てアルバムに満足した宏樹。
そして最後に残った古い箱を開ける。
すると中には子供の宝物詰めのような感じが周りには広がっていたが何故か異彩を放つレターセットでしっかり封筒に入れられた手紙があった。
裏には子供の字で
大人になった自分へ
と書いてあった。
子供の頃の宏樹の字だった。
気になって中身を開ける。
中身はこうだ。
大人になった宏樹
もう忘れているかもしれないが
タイムカプセルを今俺が大事にしてる秘密基地に雪花と自分の分を埋めている。
大人になった自分に手紙を書いたから読んで欲しい。
と言う内容だった。
何処にあるのかの地図も中にあった。
何かに取り憑かれたようにこの地図の場所へ
急いで掘り起こす為の道具を見つけて
道具と地図を持って向かった。
「絶対にタイムカプセルを見つけないといけない気がする。何故か分からないけどそんな気が…!」
と極力急いで実家を出てタイムカプセルが埋まるその場所と宏樹は駆ける。
続
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