あの頃の思い出と

赤嶺高真@超BIGなプリン

          序章

 俺は、楠木宏樹くすのきひろき先程まで正社員だった現在二十一歳の無職だ。

 昨今の不景気で会社からリストラされたのである。

 あんなに会社の為に働いていたと言うのに都心の会社という組織は薄情だ。

 俺はこの日、リストラで首となり、憂鬱な気分で自宅に戻るとポストの中に一つの封筒が入っていた。

 差出人は俺の母親だった。

 とりあえず、部屋にそのポストに入っていた封筒を自分の部屋へ持ち込みつつ自身も部屋戻る。

 とりあえず、スーツを着替える事にした。

 俺はリストラしたてな憂鬱な気持ちのまま部屋の中で無感情で着替える。

 着替え終えて一息ついてとりあえず、気が向いたので封筒を手に取ってみた。

「誰からだ?」

 と差出人の名前を見る。


 楠木小百合


 宏樹の母の名前がそこにはあった。


「なんだ久しぶりにこんなの区送り付けてきて」


 とボヤキながらも封筒を開ける。

 中には数枚の手紙と一枚の写真が入っていた。

 早速先に入っていた手紙に目を通す宏樹。


(宏樹、元気かい?

 全然最近音沙汰無いけど心配で手紙をしたためます。手紙なら目につくでしょ。

 ちゃんとご飯食べてる?都会での仕事は大変だと思うけどあまり無理はしちゃだめよ。倒れたりとかもするかもだからちゃんと休息もするのよ。

 時間が出来たらでいいからちゃんと連絡やたまには声をかけなさいよ。

 お父さんも心配してるからちゃんと連絡しなさいよ!

 あ、母さんね!最近習い事初めてね!先生から筋が良いねって褒められてね~母さん凄く嬉しくなっちゃって一生懸命やってたら今度地区大会に出場する事になったのよ。だから今度帰って来た時に腕前を宏樹にも見せてあげるからね。因みに何してるかは帰ってから見せてあげるわ。そうそう写真が入ってるけどその写真はね、先月お父さんと家の片づけした時に押入れの奥から出て来てその写真に写ってる雪花ちゃん懐かしいわよね。

 あんな事があったのは残念だったけど本当にいい子だったわよね。その写真をアンタが少しは実家を思い出すように同封します。最後にアンタが出て行ってから暫く経つけどアンタの部屋の綺麗さ維持の為に掃除してるけど基本そのままにしてあるから帰る場所は残ってるからいつでも実家に帰って来なさいよ。たまには父さんも母さんもアンタの顔見たいから。でもすれ違うのも嫌だから帰る時はちゃんと連絡入れなさいよ。母さんとの約束よ。それじゃあね

 母さんより)


 と書いてあった。

 相変わらず心配性なのとマイペースだな。母さんは…

 とこの手紙を読んで宏樹は思い出した久しぶりに幼馴染の立木雪花の事を。


 立木雪花たちき ゆか

 宏樹が物心ついた時から家族ぐるみで親交があった女の子である。

 当時は引っ込み思案だった宏樹を姉のように手を引っ張って連れ出したり、一緒に日々を過ごしたり、面倒を見たりとにかく一緒に子供の頃を過ごした幼馴染である。


 と写真で見るまで宏樹は立木雪花の事を忘れていた。

 それまで学生生活や部活、資格の勉強、毎日の勤務の中で忘れて行ったのである。

 宏樹はある事を思い立つ。


 それは、これまで仕事に明け暮れてまともなプライベートを送れず、都内に友人や

 居場所と呼べる場所も無い宏樹は決意する。


「全く、仕事をリストラしたてで気持ちは乗らないけど…こうして都内に居ても会社もクビになったしする事無いし雪花ちゃん…の事も気になるしとりあえず、里帰りしてみるか。」


 その日、母親の楠木小百合に電話をかけ、二日後に実家に帰る事とちょっとした雑談をして規制する支度の準備もしながらその日は眠りについた。


 夢の中


「そんな所に居たら危ないよ。怪我したらまたおばさんを心配させちゃうでしょー!宏樹君。」

「だって頑張らないとまたクラスメイトに笑われるから練習しなきゃ!」

「そっか。負けたくないんだね。だったら私も手伝うから一緒に今度の運動会でいい結果だそう。怪我しても私がフォローするから宏樹君は一生懸命頑張って。」


 と言い優しそうに微笑む女の子。

 その笑顔が徐々に消えて行き宏樹の意識が戻る。


「あれ…なんだか懐かしい夢を見たような…あっ、そうだ、今何時だ!」

 と焦ってスマホの時間を見る。

 時間は七時半


「あっ、そっか。俺…会社クビになったんだった。とりあえず今日は明日実家に帰る為の準備を終わらせなきゃな。もう新幹線のチケット取ってるし」


 と自分に言い聞かせるように呟きながらベッドから出て顔を洗って、朝ご飯を作ってテーブルの上に置き


「頂きます。」


 と言って朝ご飯を食す。

 朝ご飯を食べ終わると食器を洗って片付け、いつも置いている場所に置く。

 その後は歯磨きなどをしそれらを済ませると翌日に帰る実家に対してのお見上げを選ぼうと宏樹の家の近くの大型ショッピングモールへと徒歩で向かった。


 そこで両親が好きなおつまみやお菓子を買い、せっかく来たのでフードコートでスタミナ丼を食べて家へとまた行き同様に帰宅した。

 そのまま実家帰省の為の準備を続けた。

 全てを終える頃には夕方になっていた。


「よし、これで終わり。後は明日無事に新幹線に乗れれば大丈夫だな。ふぅ~疲れたし腹減ったし夕飯は近くのコンビニで買ったやつ食べるか。明日丁度ごみの日だし」


 と決断した宏樹はコンビニに行ってよく仕事帰りで疲れ切った時にいつも宏樹が買っている麻婆豆腐弁当を買いに出かけた。

 そして無事に麻婆豆腐弁当を買い、家に帰って食べた。


「よし、これ片付けたらお風呂入るか。」


 と呟き、麻婆豆腐弁当の空き箱を片付け、着替えを用意してお風呂に入った。


「一日の疲れが染みるわぁ…って言っても会社に勤めてた時の方が疲れたけど。」


 と呟きながら風呂に入った。


 暫くして風呂から上がり着替える。


 着替え終わると溜まっていた洗濯物を洗濯機に入れ、洗濯する宏樹。


 洗濯が終わるまでの待ち時間で髪の毛をドライヤーで乾かしてその後はビールとつまみを食べて一息つく。


「なんかリストラは結構凹んだけど別に無職になっても死にはしないんだなぁ…」


 と呟きながらビールを流し込み、飲み終わり摘まみ終わる頃には洗濯機の選択は終わっていた。

 食べ飲み終えたものを片付けて手を洗ってから洗濯物を干して

 その後は最終確認をして歯磨きやスマホの充電をして就寝した。


 翌日


 目覚ましが鳴る。


「ん…うるさいな…起きますよ。」


 と不機嫌そうに目覚ましを止めると気の言うコンビニで買ったサンドイッチを食べて荷物を持って時間内に乗れるように早めに家を出る。

 電車で新幹線に乗れる場所まで移動し無事に目算通り新幹線に乗れた。


 そこから揺られる事一時間半。


 地元に迎えるバスがある宏樹の地元の中では都会の駅に降り、そこからバスに乗りまた更に揺られる事四十五分後


 宏樹の地元の近くに着いた。


「懐かしいな…久々に来たな。」


 そこから残りは別の地方バスに乗り地元へ向かう。


 その道中窓の景色を見ながらたまに家族で出かけた事や雪花やその両親と出掛けた事を思い出す。


「そう言えばこの景色見たんだっけ。あっ、でもあの建物は違う建物に変わってるなあの頃とは…まぁ、流石にしょうがないか。」


 と感傷に浸る宏樹を他所にバスは進んで行く。

 すると乗る事三十分後

 宏樹の地元の家の近くへ着いた。

 着くと急に久しぶりに会う両親にどんな風に接したらいいのか不安になってきた宏樹。


「なんかヤバい緊張して来たな。何話せばいいんだ…今まで会社の事にかかりっきりでそれ以外がダメになってるな…俺。」


 と近くまで来たが足取りが無性に重くなる宏樹それでも少しずつ実家へ歩を進める。

 そうこうしているうちに久々の自分の実家に着いて居た。


「うーん…どうするか。ここまで来て流石に引き返す訳にもいかないし…あー!もう、埒が明かないから押すか。」


 と考えたり悩む事を辞め、実家のチャイムを押す。


 するとドタバタと足音がこちらに向かってくる。


「はーい、どちら様?」

「か、母さん…」

「宏樹!おかえりー!良く帰って来たわね。ここまで遠かったでしょ。さぁ、いらっしゃい。」


 と宏樹の悩みなど全く知る由の無い母は宏樹のよく知る母親のノリとテンションで歓迎した。

 それに緊張が解けた宏樹は母親に何の変哲無く、いつもここで口にしていた言葉を母親に向けてかける。


「ただいま。」


 こうして実家に帰省したのであった。


             

            続



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