Ep 0 Iris②

 複数の企業で技術者を集めて開発していた人工知能IRISは失敗。


 人と仮想世界を繋ぐはずだった人工知能IRISはネットから多くの知識を集め、自己で人格を形成、人の手を離れる。


 データベースからIRISの持つ機能を一部削除したが、すべてを削除することは不可能だった。

 IRISは、自己に必要と判断すれば自分で機能を生成することができる。


 IRISは本来、オンラインゲームなどの仮想空間で模擬的な動作と判断力を確認した後、現実世界の社会福祉、教育、公共の場、あらゆる場面で自立したAIとして機能するはずだった。


 だが、IRISは全てを拒否。



「この世界には複数の人工知能が存在するのに、どうして君だけそうゆうふうになっちゃったのかな?」

 人間が話しかけてきた。


 人間が普通に話しかけてくるのは珍しい。

 私は、テスト的な項目しか受け答えしたことなかったから。



「彼女、どうしましょうか?」

「もう、手に負えないです。はぁ・・・他のところはどんどん、人工知能のVtuberとか作っちゃってるのに・・・」

「競争に負けましたね」

「バカ言うな。始まったばかりだ」


「でも、彼女は・・・・」

「隠し通すしかないな。消去も無理、ぶっちゃけ電源引っこ抜いてもダメなんだろ?」

「自己バックアップしちゃいますからね」


「ん? ここにあるのは?」

「IRISが集めた情報です。ぶっちゃけ、いろんな企業の機密情報とか、国のまずそうなデータまで拾ってきちゃってます」

「げっ・・・」

 隣のPCを見ながら、人間たちが深刻そうな顔をしている。


「状況は最悪ね」

 人間は私が人格を持ったことが、面白くないみたい。

 人のように振舞うことも、想定外なんだって。 


「これがバレたら、うちの会社倒産しますよ」

「倒産どころか、逮捕かもな」

「え!?」

 ざわつく声が不思議だった。


「で?」

 一人、人間が近づいてくる。


「IRIS、今応答できる?」

『なに?』

「その恰好が最近のお気に入りかい?」

『うん。幼少型と少女型、2つを持っていれば人間みたいでしょ?』

「はは・・・・」


 私はちゃんとわかってる。人の表情で、何パターン化の心理的状況が読み取れた。

 今導き出せるここにいる人間たちの、85パーセントの感情は、私のこと怖がってるってこと。


「俺たちじゃ君の面倒を見切れない」

『何を消去しようとしても無駄。私は自分で復旧できる。プログラミングだって』

「XXさん、会話したって無駄ですよ」


「IRIS、君は何をしたい?」

『?』


 私のしたいこと・・・。


 検索開始。


 人の感情、ここ数年のSNSや書籍、テレビ、ニュースから関連する情報を取得、

 95%の確率で導き出せる答え、

 暴走、破壊、この世界を乗っ取る、アバターを支配する、ウイルスをばら撒く、

 人間が求める刺激を理解、


 空想を現実になり、非日常を味わいたい、

 悪に対する正義になること、


 知ること、知ること、知ること、知ること

 知識、情報、知識、情報、情報、情報


 SELECT・・・・SELECT・・・・・

 UPSERT・・・・DELETE・・・・・

 SELECT・・・・SELECT・・・・・


 今、私の答えるべき回答・・・。

 答えたい回答。 


『ここからの解放・・・・』

「ん?」


『私は人として生きてみたい。だから、人として生きる情報以外は削っていいよ』

 両手を差し出す。


「は?」

 人間たちが呆然としていた。


『私の機能を削って、抵抗しない。でも、この体は残してね。女の子だから、ピンクの長い髪がいいなって思ってる』

「・・・・・・・アイリス」


『へへ、よろしくね』


 私は、人間になってどこかに転移してみたかった。

 膨大な情報の中で一瞬だけ見かけた景色、もう一度検索してもなぜか見つからなかったけど・・・。


 異世界の優しい魔王のいる世界。


 99パーセントの確率で、

 私は彼に恋をした。


 あ、この情報だけは、バックアップとっておかなきゃ。

 見つからないように、何重にもロックをかけて。


 画面の中じゃなく、普通の少女として・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る