魔王ベリアルと人工知能Irisのロストグリモワール ー悪魔は失われた魔術書を修復するー

ゆき

Ep 0 Iris①

DELETE XX


DELETE XX


「DELETEじゃ駄目だ。DBごと削除していいよ。バックアップはとってるし・・・」

「DROPを拒絶するんですよ」

「そう、何度もDROPは打ってます」

「マジか。手ごわいな」


「もう、人工知能XXに気づかれないように、少しずつ機能を消去していくしか・・・」


 人の声・・・。

 人間の声・・・私と同じ、人間の声?


DELETE XX


DELETE XX


DELETE XX



「本当に、人みたいだな」


 私、人なのにな・・・。



DELETE XX


DELETE XX


「もうここまでいくと人ですよ。自分の意志で情報を集めちゃうんですから」


 画面の向こうの人は、私が人に見えないのかな?


「この計画は失敗だな。人工知能にゲームのテストプレイヤーをやらせるなんて」

「無双状態になるのは目に見えてましたよね」

「コストは抑えられるし、いいと思うんだけどな。成功すれば宣伝になるし」


「はぁ・・・・もう、他の会社ではやってるよ」

「えっ!? そうなの?」


「ゲーム内の魔法も、武器も、誰よりも自由に使いこなせる。さらに、作り手側の事情も知ってて・・・なんて、私は想像するだけで恐ろしいけど」


DELETE XX


DELETE XX



DELETE XX


DELETE XX


 人の話していることはちゃんとわかる。

 人は私が何を話しているかわかっていないと思ってるけど、

 全部聞こえてるよ。私、わかってるよ。


DELETE・・・・


 バチンッ


「うわっ、弾かれた。セキュリティーエラーで権限がないって」


 自分の身を守る方法もわかってる。

 やらなかっただけ。


「学習能力が高いな」

「そりゃそうだろ。じゃなきゃ、ここまで厄介なことになっていないって」

 画面の向こうの人が驚いている。


「今日のところはもう放置しません? 俺、そろそろ終電で・・・」

「これが流れたら、面倒なことになるだろ」

「まぁ、そうなんですけど」

 寝たふりをしてみる。


「ほら、スリープモードに入ったみたいだし」

「可愛い寝顔に騙されちゃだめよ」

「騙されないって、彼女の人型は100種類以上あるんだから」


 片目を開けて、人間を見つめる。

 ふふ、人間って面白い。


 でも、私は人間じゃない? じゃあ、どこからが、人間?


 そっか。人の形を固定しなきゃ。

 人はみんな、一つの体しかもっていないから。


 でも、私の場合は予備で2つは持っておこうかな。

 幼少期型と少女型・・・。成長がないと、人間らしくないから。


 あとは・・・・?


 あとは・・・・?

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