第16話 書庫部屋

 

 リーナが、アーモンド侯爵の屋敷に居候するようになって、1ヶ月が過ぎた。


 今日は、新たなリーナの部屋になる書庫への引越しの日である。


 部屋の中央に、デン!と、天蓋付きのトリプルベッドが置かれ、その周りに本棚がたくさん置かれてる感じだ。


 これぞ、理想的な配置。


 リーナは、本棚から本を選んで、ベッドに寝転び、ゴロゴロ本を読む感じ。


 そして、窓際の一角にガラス張りのバスルームがあり、リーナとミミが2人で入っても余裕なバスタブが置いてるのである。


 本当に最高!


 そして、部屋の端には、サラとミントの部屋が有り、住み込みみたいな感じで、リーナの部屋の中で住むらしい。


 これぞ、オタクにとって理想的な生活。

 基本、部屋から一歩も出ずに過ごす事ができちゃうのだ。


 食事も、サラが持ってきてくれるし、お昼寝する時は、膝枕してくれるのである。

 ミントは、足の爪を切ってくれるし、遊んでるのか、綺麗に、マネキュアまで塗ってくれる。


 どうやら、リーナの足のケアは、ミントの担当らしい。


 毎日。一生懸命、足の指の間まで拭いてくれるので、本当にくすぐったい。

 こんなに足を綺麗にしてくれたら、もう、足の匂いなど全くしないと思えるほど、無臭になってしまった。


 そして、そんな理想的な生活をしてたら、事件が起こったのだ。


 事件と言っても、リーナには、全く関係無い事なのだけど。

 そう、ついに、ドレスナー伯爵家が市場に卸した魔聖水の品質が、ガクンと落ちたのである。


 これは、相当な問題になっており、ゾンビ化してる貴族にとっては死活問題。


 だって、折角、肉が腐ってくるというゾンビ化が止まってたのに、また、肉が腐ってくるのだ。


 そして、注目されたのが、リーナ。

 アーモンド侯爵家の長男エドモンドの婚約者で、まだ結婚もしてないのに、アーモンド侯爵家に居候している少女。


 そして、アーモンド侯爵家に居候するようになってから、アーモンド商業ギルドを通して売り出された魔聖水。


 最初は、見向きもされなかったのに、あまりにドレスナー伯爵家の魔聖水で作った上級ポーションが効かないので、代わりに使ってみたら、まさかのゾンビ化が徐々に治ってきたのであった。


 実を言うと、今、リーナが、アーモンド商業ギルドに売ってる魔聖水は、魔聖水(上)ではない。


 ゾンビになったアーモンド侯爵達を治してしまったので、魔聖水(超)を売り出していたのだ。


 だって、今迄、ゾンビになった人間を、元の人間に戻す事が出来るのはエリクサーだけと言われていたのだ。

 それなのに、アーモンド侯爵達のゾンビ化が治っていたらおかしいでしょ。


 なので、リーナは、ゾンビ化が徐々に治る魔聖水(超)を売り出したのである。


 しかも、売れ出したからといって、ドレスナー伯爵のように価格を釣り上げる事はない。

 良心価格で販売しているのである。


 それと同時期に、リーナがドレスナー伯爵家で、虐待を受けてたというニュースまで流れてきたから、ドレスナー伯爵家は、批判の的。


 昔、ドレスナー伯爵家に仕えていた使用人がリークしたと思われる。


 多分、ドレスナー伯爵家の力が弱体してる今だー!と、思ったんだろうね。


 そして、リーナに全く食事を与えてなかったやら、リーナが魔聖水を作れると分かったら、毎日魔力が枯渇するまで、魔聖水を作らせていたやら、リーナに対する非道な仕打ちが、出るわ、出るわ。


 逆に、ある程度、リーナの魔聖水のお陰で、ドレスナー伯爵家が盛り返してきた頃の、リーナの女神のような行い。(金のスプーンや金の鍋をばら蒔いた行い)とかが、広まり、リーナは、聖女だったのではという話まで出てくる始末。


 そして、やはり、リーナが聖女だと決定づけられたのは、ゾンビだったアーモンド侯爵や子息のエドモンドが、完全に人間に戻ってたから。


 そんな噂が広まるにつれて、聖女様に合わせろという問い合わせが、アーモンド侯爵家にたくさん来るようになってしまっていたのだった。


 まあ、それはリーナの意向を受けて、全てアーモンド侯爵が断っていたのだが、ついに、高位貴族のアーモンド侯爵でも断る事が出来ない大物から、リーナに会いたいという手紙が来たのである。


 その人とは、マリリナ王国国王コスマン・マリリナからの手紙であったのだ。

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