第3話 実の娘を毛嫌いする父親
「この魔聖水(上)を、どうしよう……」
リーナは、悩みに悩み、空腹も加わり倒れそうである。
だって、リーナは、極度の人見知りなのだ。
親であっても話せないし、今世では同性である女性とも、女性恐怖症だから話せないのだ。
ハッキリ言うと、男の人の方が、まだ話しやすかったりするのだが、既に、使用人が殆ど居なくて、給料が高い男性の使用人は、全員辞めてたりする。
だからと言って、父親に話せば良いのだが、実の父親は、アイナがこの家に来てからというもの、アイナを実の娘のように可愛がり、本当の実の娘であるリーナの事を、居なかった事にしてる節があるのだ。
仕方が無いので、リーナは、コップに入った魔聖水(上)を、誰も居ない時を見計らって、リビングの机の上に置き、魔聖水を作れるようになったと手紙をしたためて、置いておく作戦を実行したのだった。
すると、案の定、1時間程経つと、リーナが占拠してた書庫に、両親とアイナが無遠慮に入ってきたのだった。
「リーナ! 先祖様が作ってた魔聖水が作れるようになったって、本当か!」
何故か、分からないが、父親が、リーナを怒鳴りつけてくる。
極度の人見知りのリーナは、本棚に隠れて、コクコク頷く事しかできない。
「では、やってみせろ!」
父親は、無遠慮にリーナの腕を掴み、そして、空のコップをリーナに手渡す。
リーナは、腕が痛いのを我慢して、急いで、コップに水を注ぎ、【鑑定書き換え】スキルで、魔聖水(上)に書き換える。
一応、父親も、【鑑定】スキル持ちなので、魔聖水(上)を確認して、驚愕の表情を浮かべる。
「どれだけ出せる?」
「魔力が、切れるまで……」
リーナは、顔を真っ赤にさせながら、何とか答える。
「そしたら、毎日、魔力が切れるまで、魔聖水を作り続けろ!
魔聖水を入れる瓶は、こちらで用意する!」
父親は、有無を言わさずに命令する。
というか、魔力が切れるまで?
普通は、魔力が切れるまで魔法など使わない。
魔力切れを起こすと、死にはしないが、滅茶苦茶、死ぬほど気持ち悪くなるのである。
この冷酷過ぎる男は、血の繋がりがある実の娘に対して、毎日、死ぬ程、気持ち悪くなれと言ってるのだ。
そんな、リーナに対して冷たい父親なのだけど、養女のアイナに対してだけは、別。
「お義父さん、これで、また、今流行りの可愛いドレス買ってくれる?」
アイナは、上目使いで、オネダリする。
「ああ。また、アイナに、流行りのドレスを幾らでも買って上げれるぞ!
最近、我慢させてて、本当に悪かったな。
ドレスナー伯爵家の家業である魔聖水製造が、また、復活したら、昔のようにドレスナー伯爵家も、復興出来るからな」
「良かったわね! アイナ!」
両親もアイナも、大喜び。
リーナに、毎日、死ぬほど気持ち悪くなる仕事をやらせる癖に。一言も、お礼の言葉もないのである。
「そういう事だ。リーナ。明日、早速、空き瓶を持ってくるから、その中に、魔聖水を並々入れて、部屋の外に並べておけ!
この部屋は臭くて敵わんからな!」
実の父親は、リーナに吐き捨てるように言う。
「あの……ご飯は……」
リーナは、このままご飯を貰えないのは、死活問題なので、勇気を振り絞って、父親に聞く。絶対、リーナにご飯を与えてないの忘れてる筈だし。
「ん? ご飯?そんなものメイドに言えば良いだろ?」
父親は、不思議そうな顔をして、リーナに聞く。
「あの……私のメイド、もう居ない……私、1週間、水しか飲んでない……」
「なんだ?俺が、お前に飯も与えなかったとも言いたいのか?
そんなもの、厨房に行って、貰ってこれば良いだけだろうが!
本当に、お前は卑しい奴だな!
一々、俺に指摘してくるなんて!
まあ、いい。お前用に、貧民街で安い子供買ってきて、メイドとして付けてやる!
魔聖水の運搬とかの仕事も、やらせないといかんからな。この部屋は、臭くてたまらんし、誰も近づこうとしないから、お前には、貧民の獣臭いメイドで十分だ!」
父親は、汚物でも見るような顔をして、鼻をつまみながら、リーナの部屋から出ていったのだった。
そして、父親が完全に見えなくなるのを、部屋から顔を出して確認すると、
「ふぅ~何とか上手くいった」
リーナ的には、ご飯さえ出て来れば大成功だったのだ。
そもそも、部屋から出たくないし。
父親は、魔力が無くなるまで魔聖水を作り続けろと言ったが、【鑑定書き換え】スキルがあれば、やりようは色々あるのだ。
それにしても、ここまでリーナは、父親に嫌われてるとは思ってもみなかった。
まあ、無視し続けて、お風呂に入らなくて臭くなってしまったのも原因かもしれないけど。
まあ、それもこれもアイナが、この家に来てから。
アイナが、この家に、初めて来た時、リーナを見て、臭いとか言ってから、父親も、リーナの事を臭い、臭い言い始めたのである。
人間、一度、人を貶める言葉を使い、尚且つ、相手が言い返さないと分かると、タカが外れてしまう生き物なのだ。
父親も、リーナに臭い、臭い言い続けてるうちに、実の娘だというのも忘れて、リーナをストレスを発散する捌け口にしたのかもしれない。
貧乏とは、それだけ、人を卑しめるものなのだ。
実の父親に、ここまでされたら、普通の13歳の少女なら傷付くものだが、リーナの中身は、110歳の大賢者。
スルースキルも、しっかり身につけてるので、耐えられちゃうのであった。
それより、今から、食事が復活する方に、ワクワクするリーナであったのだ。
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