第4話 猫耳メイド

 

 次の日、獣人の汚らしいメイドの子供が、リーナが占拠してる書庫にやってきた。


 歳は、どうやら、リーナより年下のようで、10歳ぐらい。

 年齢を聞いても、知らないという。


 話を聞くと、この獣人は、貧民街で彷徨いてた孤児で、パンをやるから着いて来いと言われて、パン欲しさに着いてきたら、ここでメイドをして、リーナの世話をするように言われたらしい。


 リーナは、女性恐怖症で、女の子は大の苦手なのだが、年下で見るからに汚らしい、この獣人の少女には意識もしないので、どうやら、普通に話しても大丈夫のようである。


「名前は?」


「わかんない……」


「じゃあ、呼びにくいので、あなたの名前は、今日からミミね!」


 ただ、ケモ耳が生えてるから、安易に付けただけなのだが、付けられた本人は、何故か大喜び。


「嬉しいです!私にも、名前があるなんて!」


 この子、どういう環境で生きてきたんだろう……


「字は書ける?」


「すみませんです……書けません……」


 まあ、自分の名前も無かったら、普通、書けないよね……


 というか、この子、物凄く臭い。

 自分も臭いと認識してるが、この子の臭さは常軌を逸している。

 多分、生まれてこのかた、体を洗った事が無いのだろう。


 というか、よく、こんな子を伯爵家の御屋敷に入れるよな……。

 なんか、自分の実の父親の常識が分からなくなってきた。


 まあ、この子を連れて来たのは、父親じゃないかもしれないが、父親が命令した奴も、達が悪い奴だったのだろう。

 多分、貰ったお金をちょろまかして、その辺に居た孤児を攫ってきた感じ。


 まあ、一応、パンをやると言って、ここまで連れて来たので、攫って来たというと語弊があるかもしれないけど。


 リーナは、仕方が無いので、ミミを庭に連れていき、服を脱がして、水魔法で洗ってやる。

 だって、鼻が曲がる程、臭いから。

 伯爵家にも、一応、浴室はあるが、使用人の為に、勝手に使ったら怒られそうだし。


 それにしても、臭い事が、これ程不快だとは、全く気付かなかった。

 多分、リーナの父親も、今のリーナと同じ気持ちだったのかもしれない。


 まあ、そんな訳で、ミミを洗うついでに、自分の体も洗う。

 庭で裸になって、はしたない?

 まあ、殆ど、使用人が居ないので、リーナとミミを注意する人など、そもそも居ないのである。


 てな訳で、思う存分、二人で洗い合う。

 ミミも洗われて嬉しそう。

 今まで、リーナと同様、散々、臭いと言われてきたのだろう。


 貧民街は、糞尿が流れるドブ川しかないので、綺麗な水は貴重。

 唯一ある井戸も、ヤクザが管理してて、水を買うにも金が居る。

 とてもじゃないが、今まで、体を洗う水を確保する事など出来なかったのだろう。


 ていうか、ミミって、黒猫の猫耳族だと思ってたのだが、どうやら、白猫の猫耳族だったようだ。体毛だけじゃなく、肌も真っ黒だったけど、洗うと真っ白な肌が出てきた。


 安易に、黒猫だと思って、クロとかいう名前を付けなくて本当に良かった。

 数分前の自分、グッジョブ。


 多分、汚れで真っ黒だったので、今まで、紫外線を体に浴びて無かったのだろう。

 汚れを落とすと、透明感がある超絶美幼女の白猫になってしまったのだった。


 ちょっと、今まで、全く緊張してなかったのに、変わり果てたミミを見て、緊張してしまう。


「あの、リーナ様? どうしましたか?」


 ミミは、不思議な顔をして聞いてくる。


「いや……何でもないから……」


 今更、話せなくなるとか、主人として恥ずかしい事だ。

 自分は、この娘を守っていかなくてはならないのである。

 なんせ、自分より年下だし。それに名付け親だし。


 そんな事もありつつ、部屋に戻ると、大量の空き瓶が置かれていた。

 多分、その中に、魔聖水を入れろという事だろう。


 一瞬、ゾッとしたが、でも大丈夫。


 昨日の要領で、空き瓶の中に水を入れて、魔聖水(上)を作る。


 そして、鑑定の精度を上げる。


 すると、


 名前: 魔聖水(上)が入ってる安価な瓶

 成分: 魔聖水(上)と、ガラス

 効能: 上級ポーションを製作する為の材料


 ちょっとだけ、多くの情報が鑑定される。


 それに、


 名前: 魔聖水(上)が湧き出る安価な瓶

 成分: 魔聖水(上)と、ガラス

 効能: 上級ポーションを製作する為の材料


 と、文字を消して、書き換える。

『入って』を消して、『湧き出』を入れる感じ。


 これでおしまい。


 もう、リーナがやる事は何もない。

 ミミに命令して、魔聖水(上)が湧き出る瓶から、他の空き瓶に、魔聖水(上)を入れて貰えばいいだけ。


 魔力も、最初の1回しか使ってないし。

 湯水のように魔聖水(上)が湧き出る魔道具を、リーナが作り出す事に成功。


 もうこれで、ドレスナー伯爵家の台所事情も盤石だよね!


 ーーー


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