第6話∶月詠の三姉妹(2)
彼女がこの神社の巫女、ということでいいのでしょう。
それにしても…、月読神社なら聞いたことありますが、月詠神社は聞いたことがありません。
それにアギトさんが言っていた『入口』の話、ここに無いはずの神社、失礼ながら彼女が人間かどうかも疑わしくなります。
ここに漂う空気も、今は冬なのに風が暖かい。
「霊門寺様、この方が助手の?」
「ああ、そうだ。最近異常に怪異や怨霊の依頼が多発して手が足りなくなったんだ。」
二人が僕を置いてけぼりで話をしている中、倉庫らしき建物から声が聞こえた。
「お!、アギ兄来たのか!?」
扉の影からにゅっと、巫女服の女性が顔を出した。
狐色のボーイッシュで、ぱっちり目で金色の瞳は太陽のように輝いていた。
ひまわり畑が描かれた黄緑色の羽織も相まって、何だか夏みたいな女性だった。
夏のような巫女は、嬉しそうな表情でこっちに向かって走ってきた。
「アギ兄久しぶり!!」
「おう、一週間ぶりだったか?」
無邪気に喜んでいる狐色髪の巫女はこっちに気づいていないようだ。
そんな様子の巫女を、月上弥生さんが頭目掛けてチョップした。
「っ痛!、なにするのさ姉さん!?」
「お客様の前ですよ。今日は霊門寺様の助手となる方が来ると教えたはずです。」
狐色髪の巫女はやっとこっちに気づいたようだ。アギトさんと会えて嬉しそうだったから、なんだか申し訳ない。
一応僕から自己紹介しよう。
「はじめまして、アギトさんの助手の言乃葉語と申します。」
「あたしは月上葉月。よろしくね!」
(月上ということは、姉妹?)
「あの、二人って姉妹なんですか?」
「えぇ、葉月は私の妹です。」
「あたし達三姉妹で神社を管理してるんだ。」
「そういえば、霜雪はどこだ?」
まさか三姉妹だったとは、やっぱり弥生さん(名字が同じだから下の名前で呼ばせてもらおう。)が長女だったのですね。
弥生さんは二十代で170くらい?
葉月さんは18歳で162くらいだろうか。
「霜ちゃんならあたしの後ろで隠れてるよ。」
そういうと葉月さんの後から黒髪ロングの少女がチラッと顔をのぞかせた。
葉月さんとは真逆で大人しい印象の少女で、中学生くらいだろうか?
「は…、はじめまして。月上霜雪と、言います。アギトさんからお話は、聞いております。」
裾の長い巫女服と白い羽織を着た少女は言葉をつまらせながら自己紹介をした。
人見知りで、緊張しているようだ。
「はじめまして、僕は言乃葉語。よろしく。」
自己紹介を終えると、葉月さんが僕に話かけた。
「ねぇねぇ、語君って中学生くらい?」
やっぱり間違えられますか、最初アギトさんとあったときも少年呼ばわりされましたね。
「僕は高校生1年です。」
「そうだったの!?ごめんね見た目が可愛いかったから。」
「いえ、よく間違えられますし。」
「てことはあたしの3つ下か〜。」
「ところで、ここってどこでしょうか?ああなた方は一体?」
僕の疑問に答えてくれたのは、ポニーテールの弥生さんだった。
「私達月上家は、陰陽師や霊媒師の支援を生業とする家系なのですよ。今は霊門寺家の方に仕えております。」
「そしてここ月詠神社は、特殊な空間にあり、『入口』を開かない限りはだれも入ることも認識することもできません。」
イマイチ理解ができない。どういうことでしょうか?
頭を悩ませていると、アギトさんが口を開いた。
「つまりだな、ここは異空間で、その異空間に入る玄関口は日本じゅうにあるんだ。まー入口は現実からは開けないが。」
「つまりそういうことです。立ち話あれですので、良ければ中にお入りください。」
そうしそう、詳しいことは中に入ってから聞くことにし、僕は中に案内された。
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