第5話∶月詠の三姉妹(1)
今日は日が強い。それでも空気は冷え切っており、いやでも冬と認識させられる。
普段の僕なら、この時間は情報収集をしている。
では何故僕はわざわざ寒い日に外に出ているのか。
霊門寺さん…、じゃなくてアギトさんの助手になった時、とある場所に来て欲しいと呼ばれた。
アギトさんに住所に向かってみることになった。
(住所を見たところ、目的地が山の奥になってるんですよね…。あの山ってなにか建物がありましたかね。)
山と言っても大きいものではなく、住宅やらの建物に囲まれた小さな山だった。
そう考えてる間に、僕は山に着いた。
どっから入るのか山を一周してみたところ、
古びた鳥居があった。
苔むし、風化した石造りの鳥居の奥には草の生い茂った石造りの階段が続いていた。
もう手入れもされてない廃神社だろうか、神社の名前もかすれて読めない。
怪しい、実に怪しすぎる。
何故アギトさんはここに?
失礼ながら、かなり怪しい雰囲気を感じる人だったし、もしかして僕って騙されてる?
昨日でたレインコートの怪人も、アギトさんの一人芝居の可能背も…。(それにしては派手でしたが)
入るか入らないか、悩んでいると鳥居の下に白髪の長身男性が立っていたことに気づいた。
「ひっ!?アギトさん!?」
「何だもう着いていたのか、遅いから様子を見に来たんだ。」
何故入らない?っとアギトさんは続けて言った。
何でって、こんな古びた鳥居に入るもの好きではないし、何より怪しすぎる。
「あ〜、まー仕方ないか。確かに詳細を教えずに呼んだのは悪かった。とりあえず入れ、お前の疑問もいくつか解決できる場所だ。」
仕方ない、もしなにかあったら全速力でにげよう。
幸い、僕は逃げ足には自信があるし、廃神社も嫌いではない。
そうして僕は前に進むことにした。
やはり階段は長く、しかも森が生い茂っている。
木々が天井代わりになるほど生い茂っており、階段も風化して、ヒビから草が生えているほど、階段も放置されているみたいだ。
なれない運動で疲れが溜まり、中間あたりで空気が変わるのを感じた。
本当に人の手が届いていない、原生の森林の空気のようだった。
息が荒くなるころには、ゴールとなる鳥居が目に入った。
その鳥居は不思議なことに、入口とは違い、赤と黒が特徴的な鳥居だった。
しかも、風化した階段とは不釣り合いなほど綺麗だった。
やがて鳥居の前に付き、光が差し込む。
道中が薄暗かったせいで、思わず目を瞑った。
ようやく光に慣れた頃、僕は信じられない光景を見た。
廃神社ではなく、まるで出来てからそんなに時間が経っていないような、神秘的で美しいの神社だった。
あまりにも予想から外れた景色を前に、僕が唖然としていると、アギトに後ろから話しかけられた。
「結構綺麗だろ?この神社。」
「ここにこんな神社があったのですか?地図には何も書いていなかったのに。」
目の前の光景を理解できていない僕を後目に、アギトさんは言葉を続けた。
「ここは
全く理解できませんが、多分僕ではわからないので、これ以上考えるのを止めた。
「お前が昨日みた札は、ここで作られてるんだ。助手である以上ここのことも教えなきゃと思ってね。」
「お戻りになられたのですねアギト様。そちらの方がお客様でしょうか?」
真横から穏やかな女性の声が聞こえた。
振り向くと、そこには箒をもった茶髪の若い巫女服の女性が立っていた。
女性は丁寧にお辞儀をし、言葉を続けた。
「はじめまして言乃葉様。私はこの月詠神社を管理している巫女、
彼女が身につけている桜吹雪が描かれた白い羽織が、温かい風でなびいた。
桃色の瞳は、つい見惚れてしまうほどに美しく、儚げだった。
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