第4話∶記者見習いと霊媒師

 「ただいま〜。てっ、誰もいませんけど…」

静かで暗い廊下は語の小さな呟きがよく響く。

電気を点けずに自室に向かい、荷物を静かに置いて崩れたように座り込んだ。

「ふ〜〜、」

深く深呼吸して頭の中を整理した。

学校指定のカバンから使い古した水色のメモ帳を片手にパソコンの前へと向かい、早速今日起きたことを記録することにした。

今日は本当に色々あった。

友達の付き添いで忘れ物を取りに行くために夜の学校に入ったら(もちろん先生に許可をとって)

怪異に遭遇して、さらにそれを倒しに来た霊媒師にも出会った。

怪異が本当に実在しただけでも驚きなのに、あんな感じに御札をスタイリッシュに投げる霊媒師がいるなんて夢にも思わなかった。

しかもその霊媒師の左腕は曲げる度にウィンと小さな機械音が鳴っていた。

義手なんだろうか、あんな生身の腕みたいにに滑らかに動く義手があるとは。

知らないだけなのだろうか?とにかくこれも調べる必要がある。

 「怪異、ですか。」

アギトさんから聞いた《レインコートの怪人》について。

あれは『怪異』と呼ばれる存在で、都市伝説が完全な実態を持つとああなるらしい。

完全な実態と聞くと不完全な存在がいるのだろうか?

聞いてみると怪異の下位にあたる『怨霊』がいるらしい。

それらが実態を持つ仕組みも聞いてみたが、その辺りの話はややこしいからと教えてくれなかった。

ならいつか教えて下さい、と頼んだ。

この話は少し遡る。

ーーーーーーーーー数十分前ーーーーーーーーー

 アギトさんに助けられてから外に出るまで、僕は歩きながら質問した。

 アギトさんは僕の質問に嫌な顔1つもしないで答えてくれた。不思議そうな顔をしてたけど。

 これは校門を出たあたりの会話です。


 「あの、霊門寺さん。」

 「アギトでいい。それにしてもよく質問するな、そんなに興味深いことなのか?」

 「はい、僕は新聞部に所属していまして、新聞部の性なのか、好奇心は高いほうです。」

 「なるほど道理で、だからそんなに質問していたのか。」

 

 アギトさんが不思議そうな顔をしてたのはそういうことだったのですね。


 「…で、いつか詳しいことを話してほしい、だったか?」

 「はい、できればインタビューをしたいので、後日で構いません。」

 「それは無理だな。」

 「そうですか、分かりました。」

 「……以外と諦めが早いな。」

 「ちなみに、理由をお聞きしても?」


 「俺は日本の各地を転々としてるからな、それに依頼が溜まってて教える時間がない。」


 少し残念ですが、無理に聞くわけにはいきません。

 インタビューを諦めようと思った瞬間、アギトさんが驚くべきことを口にした。

 

 「だが、俺はしばらくここに住むつもりだ、良かったら俺の助手にならないか?」

 「……え?」 

 

 僕は足を止めた。

 いきなりの提案に驚きが隠せなかった。僕はただの新聞部で、アギトさんみたいな霊媒師じゃない。

 

 「え、でもいいんですか?僕はアギトさんみたいに霊と戦えるわけでは…。」

 「いや、やってほしいのは情報収集と聞き込みだ。できるか?」


 確かに僕はこのあたりの情報に詳しいほうだ。

 ニュースにもなっていない事件とかも普段から調べて聞き込みもしているから、情報収集は得意だ。

  

 「依頼が溜まっているのも、情報収集に時間がかかるからなんだ。それに俺は地域独自に伝わっている都市伝説に詳しくなくてな、そういうのが得意なやつがいれば怪異退治がスムーズに進む。助手になれば色々と教えられるし、それに自分で体験したほうがいい記事がかけるんじゃないか?」


 確かにこれは願っても無い話だ、まさかアギトさんからこの提案をしてくれるとは。

 断る理由も無い。


 「分かりました。是非僕を助手にしてください!」


 この時、僕のとしての運命が、

      変わった気がする。 

 


 


 

 

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