第15話 ヤンヤン、支部で整備を見学する!
コムラータを救ったお礼に、金品を色々もらえたそうだ。
食べ物はすぐ悪くなってしまうけど、金品なら立ち寄った町や村で使えるから困らない。
ということで、陸上戦艦グワンガンは、何の異変もない平和な旅をした。
考えてみたら、こっちに進行していたガリア軍を全滅させたので、今のところは平和なんだよね。
全滅させてよかった、ガリア軍。
ガザニーア軍の機体から解体した武器や武装がたくさんあるので、旅の間はこれの使い勝手を試すことになった。
『うわーっ』
『うーわー!』
「あー、ウーコンとサーコンが推力に振り回されてるー」
新型機のバックパックを取り付けたら、二人の乗ってるヴァルクはめちゃくちゃ加速した。
どうやら純血連邦製のヴァルクと、大陸同盟製のバックパック、非常に相性がよろしいらしい。
ヴァルクは流線型で、めちゃくちゃ速そうだもんね。
私が乗ってるのも純血連邦製なんだけど、旧式だからねー。
「でも私はスアが一番だと思ってるよー。これからもよろしくねー」
虎の模様をペンキではなく、専用の塗料で塗り替えた愛機、スア・グラダート。
すり減ったパーツを新型機の部品に交換したりして、地味~にアップデートされているのだ。
ちょっと動きがスムーズになったね。
こうして、ウーコンとサーコンの機体がパワーアップした。
スアはまあ、ちょっとだけ新型っぽくなった。
グワンガンはホホエミ王国を超えて、グエン共和国にやってくる。
ここに支部があるんだって。
元々は華国に本部あったんだけど、ここは純血連邦所属のコサック共和国による猛攻を受けて国土の大半を放棄。
ついでに偉い人たちも逃げ出して、グエン共和国支部に逃げ込んでいる。
今は本部機能を、あちこちの支部で請け負ってる。
日国は海に隔てられた島国だけど、地形的に純血連邦が攻めにくいので、支部の一つが置かれている。
ただ、ここはめちゃくちゃ少子化が進んだので、大陸側からたくさん人を送り込んでどうにか運営してるみたい。
昔はすごかったって聞くねー。
さあ、グエン共和国だ。
ホホエミ王国は森の国だったけど、こっちは山と森と水の国。
景色がとってもキレイなんですけど!
住民もみんな素朴な感じで……なんかうちの村よりも年寄りが少ない。
「グエン共和国は侵略者と徹底的に戦うからな。民間のMWまで武器を積み込んで、男も女も純血連邦に攻撃をしかけたんだ」
今は非番らしい副長が出てきて説明してくれる。
暇らしい。
「そうなんですかあ」
「そうなんだ。でな、町を焼き尽くされたらみんな森に籠もり、そこから反撃を続けた。森を焼かれたら山に引っ込んで反撃した。昼も夜も襲撃した。純血連邦の連中はすっかり精神的に参っちまってな。撤退したってわけだ。おかげで、ここにはあいつらも手出しをしてこない。支部を置くにはピッタリなのさ」
「なるほどお。で、それがなんでお年寄りが少ない話に……?」
「ある時代の大人はほとんど戦死してるからだよ。国が若いんだ」
「な、な、なるほどー」
戦争でみんな死んでるのはヤバいなー。
怖いなー。
そういう歴史……というにはかなり最近の出来事があるのに、グエン共和国の人たちはフレンドリーで、グワンガンに手を振ったりしてくる。
私も手を振り返す。
ふむ……わかりやすいイケメンというのじゃないけど、人の良さそうなお兄ちゃんが多いな……! チェックチェック。
「誇りなんだよ。自らの力で国土を守りきった。誰もが戦士となり、侵略者を追い返した。グエン共和国にとって、犠牲者は戦いの殉じた勇者たちなんだ。そういう国だ」
はえー、凄い価値観。
私にとっての戦いは婚活の片手間だなあ……。
私がグワンガンに乗ってから出会ったのって、せいぜい小競り合いくらいだもんね。
そうこうしている間に、支部が見えてきた。
グワンガンの通信装置は、グエン王国に入った時点で“偶然”回復し、支部とのやり取りが可能になった。
そこで艦長、「ガリア軍が山の中腹に作った基地は、ちょっと敵機のバックパックを叩き込んだら全滅、その上で原子炉が爆発しくさりました」と報告したらしい。
支部は「なるほどわからん」となって、詳しい説明を求めたというわけ。
支部には陸上戦艦を三隻止められるようになっていて、駐艦場というらしいそこに、うちの船を停めることになった。
支部の建物自体はさほど大きくなくて、五階建ての茶色い建物だ。
むしろ周辺に作られている訓練場がめちゃくちゃ広い。
私のスアと、ウーコンサーコンのヴァルクはトレーラーに乗せられ、訓練場、その奥にある大規模整備場などを巡る。
グワンガンの格納庫だけだと整備しきれないところを、ここで徹底的にメンテナンスしてくれるらしい。
整備場の人たち、すっかりヴァルクの方をグワンガンの主戦力だと思っている。
ふふふ、スアの凄さが分からないようですね……!
まあ、ちょっとカスタムされた中古マシンみたいなもんだしなあ。
ちょっとドヤ顔しながら整備される様を見つめる。
「お嬢ちゃんがこいつのパイロット? いやたまげたね。かなり実戦を経験してるだろ、アレ」
なんかイケてる感じのおじさんがやって来た。
ここの整備長らしい。
階級は……ちゅ、ちゅ、中佐!?
「はっ、はい! ヤンヤン上等兵です! スアに乗って毎日楽しく仕事をしてます!」
「ああ、形式張った挨拶はいらんよ。俺はダット技術中佐。ここの責任者だ。いやあ、戦闘データからも異常な密度の交戦記録があるのに、被弾箇所がゼロ。これは異常だよ。マニピュレーターのすり減り度合いから、あの手斧を愛用したことはよく分かるが……つまり、手斧を振り回せる距離で戦ったのに被弾してないと来た。お嬢ちゃん、あんたがあの船のエースだな?」
な、何も言ってないのに当てられてしまった……!!
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