40×30神話体系
「日本ファンタジーノベル大賞」の賞金は、なんと300万円である。公募の事情は知らないが、ふつうは100万円以下ではないだろうか。
しかし、教えてもらった話によると、賞金はもともと1000万あったそうだ。日本における国力の衰退の一端が垣間見えると書いたら、大げさな話であろうか。
まあ、私には関係のない話ではあるが。
私の目標はあくまで、森見登美彦先生に作品を読んでもらうことである。
「日本ファンタジーノベル大賞」の選考は4次まであるそうだが、何次までいけば、森見先生に読んでもらえるのだろうか。
1次は下読みの人が、ある方いわく、「小説としての態を為しているか」を確認する審査になるだろうから、森見先生の目に触れることはない。
私の力量からして、2次から森見先生が見てくださると仮定して、1次選考突破を目指すのが、現実的であろう。
であるから、「日本ファンタジーノベル大賞」応募に対する、私の目標は、「森見登美彦先生に作品を読んでもらう」イコール「1次選考を突破する」である。
森見先生が3次、最終選考にしか参加しない可能性もあるが、それならばそれで仕方のない話である。常に現実が先にあるのだから。
しかしだ。賞金が300万円もある公募なのに、毎年の応募者数が500人前後であるのはどういうわけであろうか。とても少ない気がする。
理由を知りたいが、私にはその術がない。いまどき、原稿を郵送しなければならないからだろうか。
そう。データ原稿は受け取ってもらえないのである。
募集要項の原稿枚数の項目を引用すると、『原稿枚数は、400字詰め原稿用紙300~500枚。ワープロ原稿の場合は1行40字×30行、A4判用紙に縦書きで印字し、400字詰原稿用紙換算枚数を明記。』とある。
いまどき、手書きで送って来る人などいるのだろうか。書く方もたいへんだが、それ以上に読む方がつらい。しかし、繰り返しになるが、なぜ、いまどき、データ原稿がだめなのだろうか。実に疑問。
問題は、私が用意しようとしているワープロ原稿である(よくよく考えれば、ワープロって)。
私は横書きで、38字×48行で原稿を書いたので、これを縦書き、40字×30行に直さなくてはいけなかった。そして、直したところ、悲劇に見舞われた。
私が応募しようとした作品である「スラザーラ内乱記注解」を縦書き、40字×30行に直したところ、枚数が何と722枚になってしまった。
原稿枚数の上限は、400字詰め原稿用紙500枚までなので、それを40字×30行に直すと、(400×500)÷(40×30)≒166枚である。4倍近く文字数をオーバーしている。
ある方に、公募はプロの原稿が求められると教えてもらった。
また、別の方からは、編集者の要望に応じて、文章の量を増減させるのがプロの習いとも聞いた。
しかし、しかしである。さすがに、4分の一に縮めるのはむずかしい。
そこで、私は愛着があり、内容にも多少の自負ある「スラザーラ内乱記注解」で応募するのを諦め、その続編である「イルコア戦記注解」に望みをかけることにした。
「イルコア戦記注解」を縦書き、40字×30行に直したところ、246枚となった。1.5倍オーバーだが、これならば、推敲を重ねれば、規定枚数以内に収められる可能性がある。
そのため、私は、「日本ファンタジーノベル大賞」に「イルコア戦記注解」で挑戦することに決めた。「イルコア戦記注解」はその質に問題はあるが、起承転結がはっきりしているので、ある意味、「スラザーラ内乱記注解」よりも、公募向きかもしれないと自分を慰めながら。
続編を単独の作品にするのだから、かなりの加筆がいるであろう。
つまり、減量しながら、筋肉量は増やすという、考えるだけで嫌なダイエットをこれからしなければならないわけである。やる前からうんざりしてしまうが、森見登美彦先生に作品を読んでもらうためだ。仕方があるまい。
さあ、推敲をするぞとパソコンに向かった青切だったが、そこに新たな悲劇が生じようとは夢にも思わなかった。つづく。
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