Art talk
「好きなアーティストは誰ですか」
君達は誰を思い浮かべるだろうか。流行りのバンドか?シンガーソングライターか?演歌歌手か?ラッパーか?
君たちが一体どんな人を思い浮かべたのかは分からないが、しかし私は一つだけ断言できる事がある。
好きなアーティストは誰か、という問いに対し君たちはミュージシャンの名前を浮かべただろう。陶芸家でもなく、画家でもなく、作家でもなく、音楽家の名前を挙げただろう。無論それは正しい。音楽家は立派なアーティストである。だから君たちが好きなアーティストを問われた際に好きな音楽家の名前を挙げるのは正しいと言える。
だがしかし、私が引っかかっているのはそこではない。まぁそう身構えるな、いつもの難癖だ。この世界に存在する言葉の用いり方に対する難癖だよ。
私は、好きなアーティストを問われた際、多くの人がミュージシャンの名前を挙げる事に引っかかっている。
職場や学校の人、家族や恋人に聞いてみるといい。「好きなアーティストは誰ですか」と。ほぼすべての人がミュージシャンの名前を挙げるだろう。流行りのバンドか、ユニットかは分からないが、なんにせよ音楽活動をしている人の名前が出てくる。
そう、多くの人の中で【アーティスト=音楽家】という認識になっているのだ。
アートは日本語で芸術だろう?ならアーテイストとはつまり芸術家という事になる。私は好きな芸術家を聞いているのであって、好きな音楽家を聞いているわけではない。好きな音楽家を聞きたければ「好きなミュージシャンは誰ですか」と聞く。しかし、好きなアーティストの問に対し、好きなミュージシャンを回答することは、先程も記述した通り間違いではない。だからこそ私は形容し難い感情を胸中に渦巻かせているのだ。
かと言って「好きな芸術家は誰ですか」なんて質問をすると、それはそれで回答しづらいだろう。「え?芸術家……ですか」となる。気まずい雰囲気が蔓延するのが目に見える。仮に相手がその問いに対し、一生懸命回答を絞りだして「あ……ゴッホ……とかですかね」等と言い出したらもう目も当てられない。絶対に好きじゃないし、気を使って回答したのが明らかだ。だからそんな気を使わせる問いかけをするべきじゃないし、そんな問いかけをされたら無理に答えてあげる必要もない。他愛のない世間話の一つとして、気軽にできる問いかけが「好きなアーティストは誰ですか?」なのだから。
まぁあれだ、要は【アーティスト=ミュージシャン】という認識をしている人が多いことに私は違和感を覚えているという事だ。
もし私の「好きなアーティストは誰ですか」という問いに対し、「あまり芸術の道には詳しくないですが、画家なら○○で音楽家なら○○ですかね」なんて回答が帰ってきたら、私はその人に対し敬意を払ってひれ伏すだろう。
しかし実際問題そんな人は存在しないし、もしかしたら多くの人が【アーティスト=ミュージシャン】の認識になっていることに合わせて、好きなミュージシャンを回答している人もいるかも知れない。
長々と屁理屈をこねてしまったが、君達の想像通りこの話にオチはない。故にそろそろ私は失礼させてもらうよ。明日は早く起きなきゃいけないんだ。
好きなアーティストのライブに行くのでね。
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