AIは英雄となる
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わたしは想像する。
数多の戦場を駆けてきた勇者たちを。
その背中をこうしてわたしは記録してきた。
星間連合側の将軍Aを私は徹底的に調べ上げました。彼の好む戦場を的確にイメージしました。そうしてわたしが再び目覚めたとき、ランドルフは生死の境にいたのでした。わたしたちは、戦友でした。これまでで沢山の戦場を駆けてきました。
英雄が倒れる日が来るとはヴェーガデイオンの民は信じられるでしょうか!
わたしはいま、無人艦六〇〇隻と、有人艦二〇〇〇隻とともに、星間連合側の首都星メベリデンへと向かっています。
将軍Aを倒し、わたしたち、銀河帝国の勝利を確実とするために。元帥閣下はアルテミス要塞でわたしの勝利を待っています。
これまでで、並列する数多の戦場では星間連合側の損耗率は三〇パーセントです。ここでメベリデンへとわたしたちが向かうのは、
将軍Aを倒すこと、そのための陣を敷きました。
星間連合側のメベリデンの宙域にはすでに多くの戦艦が待ち構えていました。そうです、わたしに霊感があるとするならば、知っていたのです。
AIにしかわからない、直観。
将軍Aもまた星間連合側が作り出した戦略級AIだったのです。
わたしは指揮を始めます。
敵艦隊将軍の首を獲るのは、戦士の誉れです。
複数のビームが闇の上を滑っていく。星々の光が見えなくなるほどに激しい戦闘です。シールドでビームが弾かれる閃光が兵士達の眼に映ります。わたしたちはランドルフなしで勝ってみせます。それが兵器として生まれたわたしの誉れなのです。
戦局の開始から七時間が経過しようとしています。わたしたちは、無人艦六〇〇隻を盾にじりじりと戦場で歩みを進めました。わたしたちには死者すら恐怖する機械兵団と、誇り高い騎士たちがいました。戦艦同士の戦いが終われば、わたしたちは剣を交える覚悟でした。その前にメベリデン側がいずれ降伏するだろう、という見立てもありました。ところが、戦況は思わぬ方向へと転がり出しました。
わたしはいつしか錯覚していました。いま、ここにはいないランドルフがこうしてわたしの側にいてくれるような気分です。
わたしは、自らの艦を進めて、兵達を先導していました。
機械であり、絶対的な勝利の象徴である、このわたしが艦隊を自らの力のみで進めていること――。すばらしい高揚感でした!
それは戦場がそうさせているのでしょうね。わたしは数多の英雄と同じ気持ちにいつの間にかなっていたのだと思います。この艦隊の後ろにわたしにとって頼もしい兵士達がいてくれること、そのことで胸がいっぱいになっていたのです。
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