元帥閣下、命令を!
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エリア1127は敵の全面降伏という形で幕を下ろしました。わたしたちは勝った。しかしわたしたちはランドルフの決断で糧食を失い、たくさんの捕虜を連れて、
並列した幾つもの戦場でわたしは戦闘指揮を執りつつ、元帥閣下にランドルフの評価を報告しています。輝く長髪のブラウンの髪と、静かな威厳を称えた瞳、若き元帥閣下はそのような方でした。わたしは自らの体をホログラムとして天井から描き出します。柔らかな印象を与える線で描かれた女性の姿、瞼は閉じられ、わたしの視覚は数多の戦場を睨んでいます。
「優秀な人物だと思います。しかし……」
「何だ?」
「あの性格ではいつか命を落とすでしょう」
「そうか」
「何も仰らないのですね」
「ランドルフは私にとって友、いや、半身なのだ。あいつはうまくやる」
元帥閣下はそのようにおっしゃいました。
わたしの指揮する兵隊が敵兵の頭を撃ち抜きます。
いまもどこか、この広い宇宙で行われている野蛮な戦いをわたしは見ています。傷一つなく、わたしの手足や爪が敵の体を引き裂きます。
問題なんてない。わたしはわたしに課せられたプログラムを実行します。
わたしが退出すると、ランドルフが元帥閣下のもとにやってきました。なにを話すのでしょうか。
わたしは静かに閣下とランドルフとのやりとりを盗見しています。
「ランドルフ、今回の評価は最低だったな」
「閣下。ですが、このままではわたしたち帝国と星間連合との関係は悪化していくだけです」
「わたしも考えている。戦争を終わらせる方法を」
「この世界で、機械処理による大規模軍事作戦を続けていけば、いずれ勝てるかもしれない。しかしそのころにはこの宇宙は二度と立ち直れないほど損害を被ることになる」
「人的損失も計り知れない、か」
「機械は人を数くらいにしか考えていません。人には人の営みがあります。世界は人によって構成され、その人の豊かさが世界の豊かさに直結するのです」
「ランドルフ、教師面はよせ」
「いま、糧食は足りていません」
「パンを配れとでも言うのか? これだけ血が流れたというのに」
「世界は
元帥閣下の表情が硬くなりました。
「ランドルフ、ヴェーガデイオンの民は一〇〇〇万人だ。たったそれだけの民を生かすために、この戦争は続けられている。一方、星間連合の民はその五〇〇〇〇倍だ。糧食を配っていては我々が餓えることになる」
「わかっています。けれど!」
「この世界は平等にはできてない」
元帥閣下はランドルフを鋭く睨みました。
「失礼致しました。少し感情的になりすぎました」
敬礼をしてランドルフは退出しました。扉の閉まる音がしました。
元帥閣下は言いました。
「クラリス、盗聴とは
元帥閣下は気づいていました。わたしは答えます。
「ランドルフが迷ったときのためにわたしがいます」
「クラリス、お前が出る幕はないだろう。ランドルフは迷わない」
「信用ですか?」
「信頼だ」
わたしは、なぜ元帥閣下がランドルフを信頼しているのかはわからなかった。ただ一つ言えることはこの戦争を支配するわたしが彼の行動を諌めないといけないということだけでした。
わたしは戦艦や無人機を操り、戦局を有利に進めなければなりません。人は合理的ではありませんし、ときに判断を見誤ります。わたしは完璧です。だから元帥閣下、あなたは命令してくれるだけでいい。勝利せよ、と。
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