第26話 桜の花が舞えば入学式(5)

「ああ、本当に綺麗で素敵だね。君の事を優しく覆う。ソメイヨシノの花弁は……」と。


 何処からともなく、私の耳へと、大変に優しい声音の台詞が聞こえてきた。


 だから私の口から「えっ!」と驚嘆が漏れ。


 その後は、「何故、貴方がここに?」と。


 私の口から大変に不機嫌極まりない声が呟かれるから。


「あれ、君どうしたの?」と、彼……。


 そう、私が以前、早咲き桜の下で遭い、言い争いになった彼が、前回遭った時とは違う様子……。


 そう、その数日前に会った時……。


 桃の花の下で会った時のように優しい声音、振る舞いで首を傾げてきた。


 でも彼が、今更のように、私の御機嫌伺、なのだろうか?


 大変に優しく、御日様のように微笑んでこようが。


 私は彼の事が嫌い!


 それも大嫌いな訳だから。


 私はプイだ!


 そして無視!


 自身の顔を赤鬼! 般若面のように恐ろしくしながら。


 私はソメイヨシノの花の下から慌てて移動を始めだせば。



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