第16話 彼は首を傾げる(2)

 彼は困惑、動揺するだけではなく。


 私に対して怪訝な表情──敵意を剥き出しにしながら見詰めつつ。


「はぁ、お前誰だ?」


 私が予想もつかないような台詞を呻り、吠えつつ問いかけてくる。


 だから私は「えっ?」と驚嘆を漏らしつつ、驚きを隠せない表情をすれば。


「お前、赤の他人の俺様に対して、少し馴れ馴れしくないか?」と。


 彼は前回、私とお会いし、会話をした時のような、桃の精霊の微笑みをくれる訳ではなく。


 鬼のような形相……。


 そう、私が、まるで別人ではないか? と思うような口調で尋ねてくるから。


「あ、あの、お兄さんは……。この先の桃の並木で。数日前に、私と会ってお話しをしましたよね?」


 私は彼の悪態振りに畏怖しながら、恐る恐ると尋ねてみた。

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