第15話 彼は首を傾げる(1)

「この間はどうも」


 私は自身の自転車愛車のペダルを力強く回し、スピードを上げる行為をやめ。


 愛車を停車する。


 その後は、愛車のサドルから、自身の腰を下ろし、地面に立てば。


 あの、例の少年……。


 そう、以前桃の木の満開時にお会いした。


 桃の精霊の様のように麗しく、優しい少年が、今度は、この【早咲き桜】の木々……。


 それも以前桃の並木でお会いした時と同じように、私は彼と偶然にもお会いする事ができた。


 だから私は愛車の横に立ち、彼に挨拶をした。


「…………」


 でも彼は無表情、無反応……。


 私と前回お会いした時のように。


 私の呼びかけに対して彼は、神や仏のような温かい笑みを浮かべ、気さくに話しかけてくれるような事はなく。

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