第12話 早咲き桜が咲けば(5)

「まあ、綺麗……」


【早咲き桜】を見ながら、自身の両足で力強く。


 えっちら、ほい!


 よっ、こら、しょい! と。


 自転車のペダルを回転をさせながら。


 自身の目の先に見える。


【早咲き桜】の並木を見ながら歓喜──。


 私は思わず声を漏らしてしまう。


 だって自転車を走らす私に対して【早咲き桜】の木々達は。


 自身の持つ沢山の腕に握る花──。


 それも満開で咲いている【早咲き桜】の花弁を。


 少し早い春風に乗せ──。


 自転車を走らす私の視界を意図的に遮るように。


 自分達の桜色した花弁を舞い散らしてくる。


 フリフリと、春風に乗せてね。


 だから【早咲き桜】の舞いを見ている私【神童美月】は何とも言えない気分……。


 そう、まるで数日前の出来事!


 この河川公園よりも下流にある、桃の並木の満開──散る中で。


 桃の花弁達と同化して見えるほど麗しい少年……。





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