第6話 桃の花が咲く季節は出会い(6)

「別に良いよ」


 それから「綺麗だね」と、「可愛いよ」と、桃の精霊のように麗しい男の子ひとは私の方をみながら言ってくれた。


 それが風に舞う、桃の花弁の麗しさに惹かれ、魅入り、微笑んで漏らした言葉なのか?


 それとも私に向け、容姿を褒め称えてくれた呟き。


 そう、私に対して『貴女の事が気に入り、魅入ってしまった』と、言った。


 愛の告白なのかは?


 私にはわからないけれど。


 私は桃の精霊のように麗しい彼の言葉を聞き。


 唖然、呆然としながら佇んでしまうのだが。


 私が自身の顔と心の中を、この桃の花弁の色のように染め、動揺をさせている張本人様はと言うと?


 私にクスクスと悪戯ぽく微笑むと。


 自身の顔と視線を天空へと変え。


 風で舞う、桃の花弁を見ながら、自身の両腕を腰の位置まで上げ、掌を広げつつ。


「桃の花弁綺麗……。本当に綺麗だ……」と、独り言を呟く



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