第5話 桃の花が咲く季節は出会い(5)

 だから私は、彼の問いかけで我に返り。


 私は慌てて口を開き。


「すいません」と、彼に謝罪し。


「貴方の後ろで風に舞う、桃の花達が。貴方の容姿とマッチしているな? と。私は思いながら見詰めていました。本当に申し訳ございません」と。


 私は今度は、桃の色ではなく、自身の顔を茹蛸のように真っ赤にさせつつ、彼に深々と頭を下げ謝罪をした。


 まあ、本当は中学生の彼に、『貴方の麗しい容姿と桃の花弁が舞う姿が余りにも絵になるから。私は見惚れていました。申し訳ないです』と。


 私は告げたかった。


 でも、それを桃の精霊様に私が告げるのは、愛の告白に相当する言葉だと思うのと。


 私は普通女の子ひとだから、桃の精霊さまに愛の告白……。


 大それたことは言ってはいけないと思い。


 自身のお口にファスナーでチャックをした。



 ◇◇◇


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る