3.〚DV考察〛
〚DV考察〛
―DVという名の暴力はなぜ隠されるのか―
▼ここ日本では、昔から主に女性や子供が世間から目につきにくい場で暴力を振るわれ、我慢を強いられるということがまま見受けられてきた。近年になりやっとDV――ドメスティック・バイオレンス(ドメスティック=家庭内の、バイオレンス=暴力)――として、犯罪として認識されるようになってきたところだ。
▼だが、残念ながら現在でもDVは加害者により巧妙に隠され、加害者からの暴力の末に被害者が殺されるという事件に発展して発覚する場合や、被害者が自責の念や日常の辛さから逃れるために自殺して初めて発覚する場合もある。対策を急ぎたいところだが、そのためにはどうしたらいいのだろうか。
▼DVと一口にいっても様々な形があり、被害者がそれをDVと認めていないことも多いと、専門家は話す。気に入らないことがあると家族や恋人に暴力を振るうなどの直接的な暴力以外にもDVに該当する事案は多く、加害者の言うこと(性行為を含む)に従うよう強要する、何を言っても無視する、生活費を渡さないなど、多岐にわたる。
▼では、なぜそのような一方的な暴力や嫌がらせなどに、被害者は声を上げず我慢してしまうのだろうか。専門家によると、加害者の多くがDVを行った理由として「自分を怒らせた相手が悪い。だから躾として暴力を振るった(嫌がらせをした)」と答えるという。被害者は加害者の歪んだ正義感を論じられ、自分が悪いのだと思い込み、我慢して発覚が遅れてしまうのだ。
▼ここに、筆者が行った女性被害者へのインタビュー録を記す。
――あなたが受けていた被害はどんなものでしたか。
恋人の男性に、体の見えない部分を蹴られたり殴られたりしていました。また、体を売ってお金を稼いでくるよう強要されたこともありました。
――あなたがDV被害を受けている時、どんなことを考えていましたか。
自分が悪い、自分が何もできないのがいけない、恥ずかしいと思っていました。どんなにひどいことでも、言われた通りにしてさえいればいいとも思っていました。
――誰かに相談しようとは思いませんでしたか。
自分が悪いと思っていたので、誰かに相談しても解決しない、自分さえ変われれば相手は満足して優しくしてくれると思っていました。
――相手は常に暴力などで支配していたのでしょうか。
いいえ。暴力を振るわず、優しくしてくれることもありました。今考えてみると、そんな優しい時もあったからこそ、次に暴力を振るわれる時がくるのを恐れて、相手の言いなりになってしまっていたのだと思います。
――別れようとは思わなかったのでしょうか。
漠然と別れを考えたこともありましたが、優しい時もあると思うと踏み切れませんでした。
――なぜ、その言いなりの状態から脱することができたのでしょうか。
ある人に、蹴られて体にできた痣を見られ、「暴力男から逃げろ」と言われたことがあったんです。「暴力男」や「逃げろ」という言葉が私にとってはとても衝撃的で、目が覚めました。逃げてもいいのだと、そこで初めて気付きました。
――加害者から無事に逃げられましたか。
はい。目が覚めてからすぐに一人暮らししていた部屋を解約し、加害者に黙って別の場所に引っ越しました。電話番号や仕事も変えたので、その後は特につきまとわれることもなく、穏やかな生活を送ることができています。
――同じように悩んでいる被害者へメッセージをどうぞ。
暴力や嫌がらせであなたを服従させようとする人など、必要ありません。いらないものは捨てて、逃げてしまいましょう。
――ありがとうございました。
(監修 心理学者・精神科医 時任伊都夫) (坂本玲子)
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