第20話 フィスカの能力、不発!!

「なんだ!? どうしたフィスカ!? 」

「そうだ、そうだ! にっひっひ。 私たちには、まだがあるじゃないか」

 そう言いながらフィスカがかざしたのは黒い塊。


「それって! フィスカが盗んできた…… えっと…… それはなんだ? 」

「悪いが勇旗ユウキ、お前も巻き込んでしまうかもしれん。 いや、必ず巻き込まれる。 が、今はやるしかない! 」

「ちょっ! ちょっ待て! やるって何するつもりだ!? 」

「予定より回収量は少ないが適応してくれ……! せーのっ!! 」


 フィスカは国宝それを大きく振りかぶると、そのまま勢いよく地面を殴った。

 先ほどヴァーサが地面を蹴った時とは少し違う、『ボン』と鈍い金属音が響き渡る。


「これはっ、ヴァーサのときと同…… じ? 」

フィスカが立っている場所を中心に、影がうまれ、何かが這い出して来る。


 さっきのヴァーサとは違う影だ。

 色はフィスカの髪と同じ、綺麗な淡藤色あわふじいろをしている。

 頭を失った蜥蜴とかげのような見た目のそいつらは、まるで本物の蜥蜴のようにちょろちょろ動く。


 フィスカに向かって来る蜥蜴とかげだったが――

「えっ…… フィスカさん? 終わり? 少なっ! 青いの来てるけど?! 」

 わずか5匹。 ヴァーサの時とは比べ物にならないわずかな量だった。


 フィスカは「(はぁ、はぁ…… )」と息を切らしてから、額の汗をぬぐって見せてから

「こりゃあダメだな! 」

「ええええええ?! 」

「ここまでか…… 油断した。 うぅ、ヴァーサぁ~!! 」

 叫ぶフィスカだが、男との戦闘が激化する中では、充分に声は届かない。 ちらりとこちらを振り返った気もするが、やまない攻撃に移動の隙はなさそうだ。



「おいどうすんだよぉフィスカ! その黒い石でなんかできるんじゃないのか?! 」

「ムリだ! 適応も量も足りなかった…… これだから出所の怪しい中古品は困る。 もう勇旗ユウキがやってくれ」

 急に子供らしく、ぷいと拗ねた様子のフィスカは、諦めてしまったのか、頬を膨らませてぷりぷり怒りながら、力なく黒い石を勇旗のほうに差し出した。

「は?! 」

 とりあえずそれを受け取る勇旗。


 黒い石と、迫る青い影、そして目の前のフィスカの前髪、横たわる少女の前髪。 それらを交互に

見つめる勇旗。

「ぱっつん前髪を前にして、やるしかねぇ!! 」

 

 先ほどの動きを真似して、

 勇旗は黒い石で、地面を力一杯叩く。

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