第16話 『ダリタキガルとは!』


『いいか?! 勇旗ユウキとやら! ダリタキガルは機密情報の保存を目的として作られた人工生物だぁ!!――――と言われているらしい……! 』

「リエットさんも、ちゃんと確信を得てから教えて下さい。 勢いつけたらいけるとでも思ったんですか? それで、情報の保存とは?」

『ごほん、生物が最高の情報記憶媒体ばいたいになりうる! という逸話いつわは聞いたことがあるな?! 』

「いえ、ないです」


 ヴァーサが走り去った後、リエットが『説明してやる! 』と、ようやくまともに勇旗ユウキと会話を始めた。

 指名手配犯らしく、できればとっとと身を屋内に隠したかった勇旗だが、せっかくなので色々と教えて貰おうとしているところだ。

 (しかしまともな会話になるまで随分と苦労した)


『遺伝情報をつかさどるDNAが無数の塩基配列――ようは文字列であることぐらいならわかるな? 』

「まぁ、そのくらいなら 」

『文字列を見れば、それが誰なのか、どのパーツなのか。 何のための情報なのか読み取れる。 要はその、いや利用か……? そうだな――― 』

「なぁ! 聞こえたか勇旗ユウキ! 今の音っ! ヴァーサに違いない、きっと凄いぞ! やっぱり見に行こう! 」

「フィスカ! ちょっ引っ張んなって、今リエットと話してんの、わかんだろ? 」


 横目にいるフィスカは、またハイテンションな少女に戻り、時々聞こえる轟音ごうおんにはしゃいでいる。

 感情がコロコロ変わるあたり、実に子供らしい。


 向こうの様子をうかがおうとして、つま先立ちする度に踊るパッつん前髪が実に天晴れあっぱれである。

(目の前がマンションだから、つま先立ちは絶対意味ないけどな? )


「――――あ~リエットさん、 のところからもう1回お願いできます? 」

いやだな! 同じことを2度は言わぬが自然界のおきてというものだ! ……つまり物体の構造とか、機械のプログラム、そういうを一度暗号に変換し、対象となる生き物の遺伝子、文字配列の中にそれを突っ込むという話だ! 』


どの辺が自然界か分からないし、結局2度言ってくれたけど、別に悪いことじゃないし、わざわざ突っ込まなくて良いか……


「なるほど、理解しました。 でもそんなことして、生き物の方は大丈夫なんですか? 」

『大丈夫だ! 遺伝子を発現させない方法など、いくらでもある。 生物こそ大丈夫なのだ! もちろん、デメリットもあるがな! 』

「ふむふむ、わざわざ機械でなく生き物を使うメリットは、情報の隠し場所がばれにくいってとこか? 」

『いや、機械より優れているのはその容量だ! 大量に詰められ、方法を知る者ならば容易に任意の情報を引き出せる! 』

「へ、へ~すごいん、ですね? 」

『すごいだろぅ! ……だ! ダリタキガルの発生にはもう1つ重要な過程があってだなぁ! なんとなんと――――! 』


 色々教えてくれるし、案外親切なんだろうな、リエットさん。

 でも、常に勢いをつけないと喋れない人なんだろうか………。

 まともに対応していてはとても疲れる。



「勇旗! おい勇旗って! 」

 さっきから無視しているが、フィスカが隣でずっと騒いでいる。


「んだよ、騒がしいな。 そんで、今度はどうしたフィスカ? 」

「ヴァーサ。 ヴァーサの方からな! 」

「音がするんだろ? 俺も聞こえてるよ、あれは本当に人間が暴れて出せる音なのか………? 」


「いや、そうではない。 ――――青が、来ているんだ! 」

「あ? 青………ぉぉぉぉおぉ?! 」


 そこには不気味な青い人影が立っていた。

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