プロローグ②


 また私の傍から人がいなくなった。


 どうしてこうなってしまったのだろうか。


私のショックは相当でかくて、立ち直りなど不可能に近かった。


 私は部屋の隅でうずくまる。


 お父さんも、お母さんも、たかしも、どこへ行ってしまったのだろうか。


 たかしの話はおばさまから少し聞いた。


 少しいきたいところがあるといって、出かけたそうだ。


 あいつのことだ、どこか楽しそうな廃墟とか秘境とか見つけたのだろうか。


 私は少し気がかりだった。


 あいつがこのタイミングでどこかそういうとこへ行くとは思えなかった。


 あいつは気が利かないけど、空気はある程度読める。


 ……。


 もしかすると、探しに行ったのではないか。私の父親と母親を。


 突飛か……。


 でも、いくとしたらどこだろうか。


 そんなこと分かりっこない。


 でもなんか……。あいつが行きそうなところって……。


 私はおもむろに立ち上がった。


 そして、昔の思い出にしたがっていくのであった。




 ついた。


なんとなく足が向かったのは、子供のころにたかしと探検しに行った、廃墟だった。


ここは、昔に幽霊が出るとのうわさがあった。


消える人のうわさ。突然現れる人のうわさ。それが幽霊のうわさにつながった。そうして、見知らぬ(まあ当然ではあるが)物が突然現れたり。そのような、不思議な出来事があった。


だから、ここなら、とたかしが思い至るのもあるのかもしれないと私は踏んだ。


 たしかに、わたしには昔からちょっと第六感といおうか、そういうところがあった。不思議系女子では断じてない。


 たどり着いた廃墟はやはり物寂しいものだった。閑散としていて、人っ子誰一人いない。


 昔とほぼ何も変わらない。


 私はあちこち探してみた。


 ただ懐かしさが感じるだけで、特に何も手掛かりがなかった。


 私は困った。


 でも、当たり前かもしれない。


 見つかるわけないわね。だったらこんな騒がれていないし、解決してる。


「はあ」


 ちょっとなんかバカみたいだなと感じた。


 でも、気はまぎれたのかもしれない。


 歩き回って疲れたから、その場に座り込んだ。


 そうしていると、なにか物音がした。


「なにかしら」


 私は物音がしたほうへ歩いてみた。


「あったかな?」


 先ほど探した部屋に見おぼえないものがあった。


 人形だ。フランス人形。ちょっとかわいい感じの。


 私は怪訝な面持ちで拾い上げる。


 私の見落としか。あったかなと不思議に思った。


 そうすると、つん、とまた何かが落ちてきた。


 財布だった。


 誰かいるのかな? とあたりを見渡す。


 恐くなってきた。


 私はそれも恐る恐る拾い上げる。


 そうして中身を確認してみる。


 私ははっと驚いた。


「たかしの……?」


 それはたかしの財布であった。


「どうして?」


 私は混乱した。


 まさか、ここにいるの?


「たかし!」


 淡い期待をした。返事はない。


 私はがっかりした。そうそうありえない。


 でも、たかしがここにいたのは間違いない。


 わたしはあたりを見渡す。


 そうすると、不思議なモノをみつけた。


 モノ、というか、視覚的に不思議なものがあった。


 空間が、ゆがんでた。


 どうしてだろうか。この世のものではない。


 心綺楼か何かか。


 私はこれが気になった。亀裂が入っているような気がした。


 私は恐る恐るその歪んだ空間に手を伸ばした。


 カチャリと音がした。


「キャッ!!」


 悲鳴を上げた。


 そうして私はどこかへ飛ばされていった。

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