第4話 只管謝るのみ

 それにしてもなんで陣内さんがわたしを?


「あの後みんなそれぞれカップルになってしまってね。キミと僕だけあぶれたんだよ。そのまま放っておいても良かったのだけど、お店にも迷惑だしね。キミの家はわからないから仕方なく僕に家に連れ帰ったってわけ」


「それはもう重ね重ね申し訳ございません」


「それはいいよ。僕もごく偶に痛飲して前後不覚になることもあるからね」


「ありがとうございます。こんな阿呆のことは庇わないでも大丈夫です、ハイ」


 昨夜は陣内さんのことを陰キャ呼ばわりしてしまったが、単に物静かで落ち着いている人ってだけのようだ。クソめんどくさい酔っ払いの始末をしたのに小言の一つも出てこないとは人ができているのか人がいいだけなのか。


「ところで、シャワー、浴びる?」


「えっ⁉」


 思わず両腕で自分の身体を抱きかかえ身構える。


「……えっと。キミ、遠藤さんだったよね。髪はボサボサだし、化粧も落とさず寝ていたからこう言っちゃなんだけど結構酷い顔しているよ。シャワー浴びたほうがいいんじゃないかなと思ってね?」


「もうホント。非常に申し訳ないです……」




 シャワーを浴びてまた元の服を着る。せめて下着だけでも変えたかった。 


 それにしても昨日の今日会ったばかりの男にこのわたしのすっぴんを見せることになろうとは思いもよらなかった。直す程度の化粧品は持ち歩いているが、一から顔面を再構築するほどの道具アイテムは持ち歩いていない。




「お目汚ししてすみません」


「どこが? 全くもって遠藤さんはかわいいじゃないですか?」


「あ、いや……」


 久しぶりに可愛いと言われ、照れてしまう。最後に可愛いと言われたのは大学の時付き合っていた元カレに……あれ? いつ言われただろう。うーん、覚えていないぞ。


「そうだ。何か食べる? お腹すいたでしょ。と言ってもグラノーラくらいしか今はないけど」


「はい、それくらいのもののほうが丁度いいので、陣内さんが良ければ頂きたいです」


「おっけ。僕の手作りのものだけど不味くはないと思うので我慢してね」


「グラノーラって手作りできるんですか?」


「案外と簡単だよ。僕は、市販のグラノーラだと甘すぎて苦手なんだよね」


 わたしはダイニングチェアに座ったままで陣内さんが用意もなにも全部やってくれる。グラノーラも手作りするくらいだし意外とマメな人なのかもしれない。


「はいどうぞ。僕も食べるからね」

「ありがとうございま~す。いただきまーす」


 陣内さんは謙遜していたが、かなり美味しいグラノーラだった。甘味はドライフルーツとはちみつの優しい甘みだけで市販の商品みたいなくどい甘さがなくてわたしも好きな味だった。

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