第17話 放課後清掃

「疲れる〜」


 放課後、僕と白石さんは先生に遅刻の罰として掃除を押し付けられた。掃除の時間にサボってた人達の代わりにやらされてるらしいんだけど……2人でやるのってキツくない? サボってた人達もサボりの罰としてやらせればいいのに。


「なんで僕達がこんなことを……授業に少しだけ遅れただけじゃん。罰を与える程のものでもないでしょ」


「ほんとにね〜。わざわざ私達にやらせなくてもいいのに」


「サボって帰ってもいいかな?」


「駄目だよ〜。私を1人にする気?」


「うん。頑張って」


 そう言って教室を出るために用具をしまいに行く。すると白石さんに手を掴まれた。流石に逃してくれないか……


「ちょっとー! 本当に帰っちゃ駄目だよ!」


「えー、別にいいじゃん。どうせそんな真面目にやらないし。適当にやって帰るつもりだから」


「真面目にやらないと駄目だよ〜」


「これくらい別にいいでしょ。そう言う白石さんだって、手が止まってるよ?」


「うぐっ、これは、その……監視! 監視だよ。蒼がいつ逃げ出しても捕まえれるように構えてるの!」


 酷い言い訳だ。さっき掃除しながらでも僕を止めれてたし、仮に僕が逃げ出しても罰を受けることになるのは僕なんだから捕まえる必要はないはずだ。


「それも結局サボってるのと変わらないじゃん。適当な理由をつけてやらないようにしてるだけでしょ」


「違うよ! 休憩してるの。休憩。一緒にしないで!」


「まだ休憩しなきゃいけないほどやってないでしょ? なら変わらないよ。ほら、早く掃除しなきゃ」


「ぶー。自分はやらないくせに人にはやらせるんだ。いじわる」


 そう言いながら頬を膨らませてこっちを睨んでくる。かわいいだけで全く怖くないけどね。


 最近、こんな感じで見つめてくることが増えた気がする。どんな表情でも可愛いから、毎回照れそうになるんだけど、できる限り照れないように気をつけている。最初された時は照れてしまって、凄い弄られた。それ以降は、弄られたらなんか悔しいから軽く受け流すようにしている。


「はいはい、意地悪で結構。好きに言ってくれていいよ。僕は白石さんにはこのスタンスで行くつもりだから」


「ひどーい。私は適当にあしらってもいいと思ってるってこと?」


「うん。正直思ってる」


「女の子だぞー!丁重に扱えー!」


「全く、こんなにかわいい子に雑な扱いをするなんて、ひどい男だよ」


「自分で言う?それ。確かに可愛いと思うけど、口に出して自称するのはどうなの?」


「ホントのことだもん。じゃなきゃ転校して1ヶ月なのに何回も告白されないと思うし」


「確かに。ほとんど関わってないのに告白される要因なんて、容姿だけだろうからね」


 全員振ったらしいけど、どうしてだろう?付き合ってみてから考える。みたいなタイプだと思ってたんだけどな。


「後、私にばっかり言うけど、蒼もすぐそういうことを言うじゃん。気をつけたほうがいいんじゃない?勘違いされても知らないよ」


「そういうこと? 僕、何か言った?」


「ほら、私のことが可愛いって」


「あぁ、それか。確かに言ったかも。でも、勘違いされることは無いと思う。だって僕だよ?勘違いはおろか、興味を持たれることすらされないね」


「変な自信持たないの。蒼の事を好きになってくれる人は絶対いるよ?」


 どこにそんな根拠があるんだか。絶対なんてありえないんだし、僕は信じない。今までだって、僕に興味を持ってくれた人ですらほとんどいなかった。そして、興味を持ってくれた人も、離れていったんだから。


「なんで根拠もなしに絶対だなんて言えるの? いない可能性の方が圧倒的に高いと思うけど」


「根拠ならあるよ。ここに」


 そう言って、白石さんが自分を指差す。なんで自分を? 手紙かなんかを持ってるってことなのかな? だとしたら、びっくりはするけどちょっと嬉しいな。


「どこに? 何か証拠になるようなものを持ってるってこと?」


「気付かない?」


「何に?」


 疑問に思い、白石さんのことをしっかりと見てみる。特にこれといってそれっぽい所はないんだけどなぁ……


「そんなにじっと見られると恥ずかしいんだけど……」


「あ、ごめん」


 思ったより長いこと見てしまっていたようだ。失礼なことをしちゃったな。、


「大丈夫だよ。もしかして、わからない?」


「うん、全然わかんないや」


「仕方ないな〜。ヒント! 私が証拠だよ」


「えっと……どういうこと?」


 証拠が白石さん自身? 何を言ってるんだろう。全く意味がわからない。


「これ以上は言いませ〜ん。ほら、帰ろ!」


「サボらないんじゃなかったの!?」


「気が変わったの! それにしても、これでも気付かないか〜」


「気付ける要素なんてあった? 僕には全くわからなかったんだけど」


「気付ける要素しかなかったと思うんだけどなぁ。まぁ、仕方ないか。蒼だしね」


 凄い馬鹿にされてる感じがする。僕の何を知ってるんだ。自慢じゃないけど、僕は周りの変化には滅多に気付かないほどの鈍感だぞ。つまり、気付くわけがない。


「そうだね、人に言われるのはなんか癪だけど、仕方ない。だって僕だから」


「自信持って言わないの。まったく、早く帰るよ」


「うん」


 白石さんと一緒に帰るのは久しぶりだな。行きに出会って一緒に行く、というのは偶にあったけど、帰りは僕はさっさと帰るし、白石さんは放課後も色々な人に話しかけられてたりしているから、帰るのが遅かったりする。だからタイミングが合わなかったのだ。僕としてはどっちでも良かったけど。


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