第4話 ゲームスタート!

「じゃあ始めるよ! こっちはまずは私がやるけど…そっちは?」


 始まってしまった。良くて同点の勝負が。僕はこの勝負は負ける。ほぼ確実に。空、頑張ってくれ。僕にはどうしようもない


「行け、蒼! 君に決めた!」


「勝手に決めてんじゃねぇ!!」


「じゃあ栞ちゃんとやるか? どちらにせよやる事になるなら、話しやすい方とやりたいんじゃないのか? 栞ちゃんとはちょっと話しにくいんだろ。どうなんだ? 蒼くーん?」


 おい、答えにくい質問をするのは辞めてもらおうか。白石さんの方が話しやすいのは間違ってはないけど、黒井さんが多少なりとも話しづらい人みたいになるじゃないか


「ちょ、言い方ってもんがあるだろ! 答えにくい……」


「答えにくいということは話しにくいということですか?」


「ふーん。蒼ってそんなこと思ってたんだ〜」


「思ってない! 思ってないから!」


 ちょっと思ってるけど


「ちょっと思ってるんだ〜?栞かわいそ〜」


 なんでバレるの!? おかしいでしょ!


「そう……ですか。そう思われるのも仕方がないですよね。私あまり喋りませんし、無愛想ですし距離も少し遠いですし……」


「あーあ。栞ちゃんが凹んじまった。どうしてくれんだよ」


 空の野郎、楽しそうな顔しやがって。狙ってやりやがったなあいつ


「だからそうじゃないってぇ! 悪ノリもやめろー! 寄ってたかって僕をいじるんじゃない!」


「あはは!」「ふふっ」「くふふふ」


「3人して笑ってんじゃないよ!!」


 それと、悪役みたいな笑い方してんじゃねぇよ、空。まぁ僕からしたら空は完全に悪者だけどね。このゲームをやることになったのは大体空のせいだし。


 ひとしきり笑われた後、仕切り直しでゲームが始まった。はぁ……やりたくない。


「じゃ、そろそろ始めよっか! 私と蒼でいいんだよね?」


 ここまでくればもうなんでもいいや。好きにしてくれ。


「もう好きにして…」


「言質、とったからね? 好きにさせてもらうから。これからもずっと」


 おっと? おかしくないか?


「え、ちょ、そこまでは言ってな「それじゃ、はじめるよー! 準備はいい?」い……」


「どんまい、蒼。俺にあんなことするからだな」


 そう言われると何も言えないけど、今の流れはお前も共犯だボケ。


「はいはい、わかりました。僕は何をすればいいんですか」


 ここまで来たら諦めよう。どうせ僕の意見は反映されないんだ……


「おいおい、そんな拗ねるなって〜。星華ちゃん、慰めてあげて〜」


「え〜、しょうがないな〜。こっちおいで?」


 白石さんが手招きしてくる。楽しそうだね君たち。


「ほら〜、はやく〜」


「行かないよ。みんな僕のことを小さい子どもと勘違いしてる? 僕はれっきとした高校二年生で、君達と同級生なんだけど?」


 なんか僕舐められてないかな。酷いなまったく。


「強がらないの。ほら、よしよし〜」


 いつの間にかこっちに移動してきていた立石さんが撫でてくる。恥ずかしい。


「ちょ、やめ、恥ずかしいから!」


「あはは! 蒼顔真っ赤〜。ほら、うりうり〜」


「だから辞めてって!」


 恥ずかしさのあまりつい強めに手を払ってしまう。やば、やっちまった。


「あ……」


「ご、ごめん」


「こっちこそごめんね。しつこかったよね。大丈夫だよ。私が悪いから」

「じゃ、じゃあはじめよっか!」


 多少のトラブルはあったものの、全員座席に戻り、謎のゲームが始まった。


「じゃあ気を取り直してルールを説明するよ!」


 ついに始まってしまうのか。少しぐらいは善戦できると嬉しいが


「ルールは簡単。何をしてもいいから照れさせたら勝ち! 照れたら負け! じゃあ空、やろっか!」


 あれ?僕じゃない?


「いやなんで!? 蒼じゃなかったのかよ!」


「蒼と栞でやってもらったほうが面白そうだし。お願いできる?」


「そんな理由かよ。まぁ、いいぞ」


 なんだかもう訳がわからなくなってきた……なんでもいいから頑張れ、空


「じゃあ空、こっち来て。隣に座ろ」


「あ、ゴメンなんだけど栞は蒼の隣に座ってもらっていい? 話しづらかったら言ってね?」


「まぁ、大丈夫ですよ」


「まだそれ引っ張るの!? 大丈夫だよ!」


「ありがと! じゃあ空、こっちに」


「おう」


 俺は星華ちゃんの方に移動する。隣に座って……まずはどう攻めようかな


「そうだ。罰ゲームって何するんだ?」


 とりあえず普通に会話しながら決めるか。名目上は交流会だしな。


「あ、そういえば! 言われなかったら忘れるところだったよ。ありがとー!」


 おい、忘れてたのかよ。言わなきゃよかった


「おい空! 余計なことを言うから!」


「忘れてるなんて思うかよ普通!」


 などと言い合っていると突然袖を引かれた。反射で俺はそっちの方を見る。すると……


「蒼ばっかに構ってないで、私にもかまって?」


 今のは危なかった。顔が良すぎるのはずるいな。何するにしても照れさせれる可能性がある。気をつけないと。


「悪いな、星華ちゃん。気をつけるよ」


 そんなことを言いながらソファに無造作に置かれてる星佳ちゃんの手に手を重ねる

あれ?なにか……震えてる?


「大丈夫?」


「な、何が?」


 気付いてないのか……?いや、誤魔化してるのか?わからない


「いや、なんでもない」


「そう?」



 よかった……気付かれてないみたい。さっきのことでちょっと昔を思い出しちゃったけど、これは私の秘密だからまだバレたくない。まだ完全には2人を信用できてないから。


「まぁ心配してくれてありがとね!」


「何? 何かあったの?」


 今の会話を聞いて蒼君も心配してくれる。ほんと、蒼君に声をかけてよかったなぁ。空君も連れてきてくれたし、蒼君本人も優しそう。この2人を信用できるようになるといいなぁ。


「いや、何でもないよ。ありがとね」


「あ、うん。まぁ何かあったら言ってね」


「うん!」


 さて、そろそろ攻め始めるか。覚悟を決めろ、俺。元カノにやったように攻めるんだ。思い出せ。あのときの俺を。


「なぁ、星華ちゃん」


「どうしたの……?」


「俺が居るのに他の男と楽しそうにするんだ」


 軽く星華ちゃんの方に寄り、演技をする。


「へ!? いや、その、」


「どうした? 別にいいんだぞ。蒼は友達だしな。ただ……」


「た、ただ?」


「俺は君に夢中だからあの娘とは話さなかったけど、星華は話すんだな〜って。」


「へっ!? 私に夢中……? そんなに言ってくれるなら、まぁやぶさかでもないけど、まだ私達お互いのこと知らないし……あの、えっと、まずは段階を踏んで友達からで……」


「星華、顔が真っ赤ですよ? ちょろすぎない?」


「白石さん……流石にそれは……」


 僕でもそこまでではないんじゃないか? ほら、あっさり終わりすぎて言った本人が一番驚いてるじゃん。固まってるよ。ひとまず再起動させなきゃね。せーの!

 ペチーン!


「いってぇ! なにすんだ!」


 よし、再起動完了。昭和の家電の直し方で空は直せるね。つまり空は古いってこと??


「固まってる空が悪い。白石さんがちょろかっただけでしょ。何をそんなに驚いてるの」


「そうですよ。星華がちょろかっただけです。特に驚くことでもないですよ」


 何を今更、と黒井さんからも援護が飛んでくる。これは勝ったな。


「う、うるさい! ちょろくないもん!」


 いやいや、無理がある。赤くなるだけならまだしも、急に早口でなんか色々言いだすのは、ちょろすぎるとしか言いようがない。


 そもそも、空は夢中って言っただけなのにどうしてあんなになったのかがわからない。


「はいはい。そういうことにしとこうね。僕よりちょろそうな白石さん」


「うううう、うるさい!」


 あ、これ楽しい。さっきまでされる側だったけど、やる側も楽しいもんだね。リアクションが良いから尚の事楽しい。


「それにしても空……即興であんなことできるんだね。たらし? もしかして」


「昔やったことをやっただけだ! それにあんなのはまだやったうちに入らない!」


 てことはもっと色々できるってことか? こいつまじかよ。


「そういうことをやってたんですか、空くんは」


「その話は後でいいだろ! 進めてくれ!」


 逃げたな。いつか絶対問い詰めてやるからな。どうせ別れた彼女にやってたとかそんなのだろ。


「とりあえず俺の勝ちってことでいいのか?あれだったらもう一回やる?」


「やらない! 同情で再戦させてもらっても惨めなだけだよ!」


 どうして私がこんな目に〜! そりゃ中学も高校も女子校だったから耐性はなかったけどさ、自信はあったんだよ!なのにどうして……


「それじゃあ空君の勝ちってことで。次は私達ですね。始めましょうか」


 白石さんの惨敗でひとしきり笑い、次は僕達の勝負が始まった。正直に言おう。勝てる気がしない……

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