第3話 ファミレスに集合

「改めて自己紹介するね。私は白石星華だよ! よろしくね!」


「黒井栞です。よろしくお願いします。」


「池田蒼だよ。よろしく。」


「三宅空だ。よろしくな!」


 全員が自己紹介をし、僕達の交流会が始まった。正直不安しかないんだけど大丈夫かな?


 店内にお客さんは少ないけど、できるだけ騒がないようにしないと。


「交流会っていっても何すんの?」


「どうすんですか? 星華、何か考えているんですか?」


「何も考えて無いよ? 適当に雑談しようかな〜。ぐらいで。交流会ってそういうものだと思ってたけど、もしかして違った?」


 実際、交流会って皆何やるんだろう? そもそも交流会なんて皆やってるのかな?


「確かに、そんなもんなのかな? 僕も初めてやったからわからないや」


「人と喋るのも交流だし、それでもいいと思うぞ。俺はそれでも満足だし」


「なるほど。ですがせっかく集まったので、私は皆で何かしたいです」


「わかった! ちょっと考えるね」


 そんな感じで僕達は交流会は始まった。だが、当初の不安は的中し……


「「「「………………」」」」


 沈黙してしまった。こういう時、何を喋ればいいんだろう。僕は普段全然喋らないからその辺は全くと言っていいほどわからない。


「何か喋ってよー! なんでこんなに静かなの!」


「そういう白石さんだって喋ってなかったじゃん。あとうるさい。ここファミレスだよ?」


「あ、ごめん。じゃなくて! 私は何をしようか考えての! 私がいないと何も進まないの?」


 実際そうみたいだ。空は普段、もっとおしゃべりなんだけど……今日はどうしたんだろ?


「じゃあ〜、みんなって最近何してるの? 最近やること無くて暇なんだ〜」


「私は普段は本を読んでますね。星華、暇と言いましたが、勉強はどうしたんですか?」


「や、やってるよ! やってるけど暇なの!」


 勉強って終わりがなくない? やってて暇になることは無いと思うんだけど。まぁ、僕が気にすることじゃないか。


「僕は本読んだりゲームしたりだね」


「俺もほとんど蒼と同じだけど、運動も好きだな。あとは筋トレもしてる。蒼もやってるんだっけ?」


「そうだね、最近始めたんだ。まだ全然効果が見えないけどね」


 そう言って力こぶを作る振りをする。全然できてないけど。


「頑張ればいつか効果が出るよ。きっと。でもそっかぁ、みんな本読んでるんだ。私も読んでみようかな」


「読んでみたら良いんじゃない? 結構面白いもんだよ」


「ほんとにな〜。俺も蒼に誘われるまで読んでなかったけどさ、いざ読んでみると結構面白くてハマったんだよな」


 空は、僕が本を布教して以来、その前までが嘘のように読書にハマった。どこが琴線に触れたかは僕にはわからないけど、想像以上に好きになってくれたから布教した本人としてはとても嬉しい。


「ならさ、読み始めるのにおすすめの本ってある?」


「それならこれですかね。」


 そう言って黒井さんが出したのは、最近行きつけの本屋でおすすめされて読んでみた、結構有名な作品だった。


 序盤は、展開が少し難しいな。って思ったけど、物語が進むにつれて前半の難しかった部分がどんどん解明されていく感じが凄く好きだったな。


「あ、それ知ってる。僕も最近読んだんだ〜。空は貸してあげたけど読んだの?」


「読んだ読んだ! めっちゃ面白かった!」


「二人も読んでたんですね。この本、とても面白いんですよ。初めて読んだ時は読む手が止まらなくて久しぶりに夜ふかししてしまいました」


「一回読み出すと止まらないんだよね。凄いわかる」


「その本、俺でも読みやすかったんだよ。おすすめだぜ?」


「わかった。読んでみるね! だから貸してもらってもいい?」


「はい。読み終わったら返してね」


「わかった!」


 僕のおすすめも今度布教してみようかな……貸すとしたら?あれは難しいか。あんまり本を読まない人でも読みやすい本にしなきゃ……


 などと考えている間も話は進んでいたらしく、反応のない僕に空が声をかけてきた。


「蒼、どうした?」


「え?」


「なに? 話聞いてなかったの〜?」


「大丈夫ですか? ぼーっとしてたみたいですが」


「だ、大丈夫だよ!」


 ただ考え事をしてただけなのにそんなことで心配をかけてしまった。これは失敗だな。今はひとりじゃないんだし、没頭するんじゃなくてしっかり話も聞かなきゃね。


「本当ですか?」


「ほんとほんと! ちょっと考え事してただけだから」


「ならいいですが」


「蒼〜。お前緊張してる?」


 ケラケラ笑ってんじゃねぇよ。お前も緊張してるだろどうせ。


「うるせぇ。笑ってんじゃねぇよ」


「わりぃわりぃ」


「てか緊張してるのは空の方じゃない? いつもより口数少ないよ?」


 本当にどうしてだろう。いつもはうるさいぐらい喋ってくるのに今日は何故だか静かだ。やっぱり無理やり誘ったことだし、気分が乗らないのかな。


「うるさいな。そんなことないだろ」


「あるよ。いつも僕に話しかける感じならもっと口数が多いね」


「そんなことないって。初対面の人にお前に話しかける感じで話せってか? 無理だろ。それがわからないからお前はぼっちなんだ!」


 そうやってギャーギャー騒いでると対面にいる二人が黙ってこっちを見てくる。どうしたんだろう。


「二人ってさ」


「おう」


「凄い仲いいんだね!」


「そうかな? 二人からそう見えるならそうなのかもね」


 僕って友達少ないから他人から見て仲がいい人がいるのは凄い嬉しい。僕は、いつも一人だったから。


「そうですね。一見大人しそうな蒼君も気兼ねなく言い合えるみたいですし」


「まるで私達みたい!」


「そんなことはないんじゃ」


 あれ、うそ!? と、いい反応をする白石さん。冗談を言い合える間柄って意味では僕達と似てるのかな?


「そうだ、みんな!」


 立石さんが声をかけてきた。………なんか嫌な予感がするけど、フラグか?


「どうしたの?」


「ゲームしない?」


「いいよ。やろうか! 何をやるの?」


「おい、蒼。少しは興奮を抑える努力をしろ。いいのか?星華ちゃん。こいつとゲームして。辞めるなら今だけど」


 止めないでよ空。僕に、よりにもよってゲームを仕掛けてしたんだ。恐らくこれはこの計画を降りる最後のチャンスだ。


「早くやろうよ。言っとくけど、負けるつもりはないよ? ゲームと来れば特に、ね」


 何であろうと負けるつもりはない。自慢じゃないが僕はゲームならここら一帯では負けないぐらいには強い。悪いが勝たせてもらおう。



 このときの僕は忘れていた。今が何の集まりなのかを。それを覚えていれば、あんな勝負をしなくても済んだかもしれないのに。


「じゃあ二対二で勝負だよ!」


「りょーかい。チーム分けは?」


「男対女でいいんじゃないかな?」


「わかりました。それで?何をするんですか?」


「うーん……」


 白石さんは悩み始めた。何も考えてなかったみたい。まぁ、何が来ようと負けるつもりはない。僕と空が勝って、それで終わりだ。


 ……あれ以外なら。


「最初だし照れたら負けゲームでもやろか!罰ゲームありで」


「え?」


 と僕が 


「は?」


 と空が


 やっぱり疑問に思うよね、空も。普通のゲームやると思ってたんだけど……


 そんな困惑している二人に白石さんは


「え?」


……それだけ!? 疑問を持たれると思ってなかったの!?


「いや、一言で返されても困るんだが。本気でやる気なのか?」


 空もこれにはストップを入れた。そうだよね。流石にそうだよね。初対面でやることじゃないよね。


「本気だけど、駄目だった? 今日ってそういうコンセプトの集まりでしょ?」


「確かにそうだけど……それ出会って1日でやることか?」


 頑張ってくれ空。流石に僕じゃこのゲームは勝てない。なんせ、女の子の友達すらほとんどできたことがないからね! ……悲しくなってきた。


「空くんは怖いのかな?」


 栞さんもそっち側か〜。しかも煽ってきてるし。空、耐性低いけど大丈夫かな?


「何がだよ」


「私達に負けるのが」


「ほう? 俺達に勝てるとでも?」


 おーい、空ー?乗るなー?僕はこのゲームにおいてはポンコツだぞー。


「ならいいですよね。やりましょう」


「いいぜ、やってやるよ」


 おい。僕の意見はどこ行った。少し聞くぐらいはしてくれよ。全力で反対する準備はできてたのに。


「空からのOKも出たね。じゃ、やろっかー!」


「ちょ! 僕はまだやるって言ってないんだけど!」


「蒼、諦めろ。お前は参加する運命なんだ。」


 どうしてこうなってしまうんだ。僕は無視される運命なのか。


「それじゃあスタート!」


 結局僕の意志とは関係なく始まってしまった。どうなることやら。


 逃げたい。今すぐにでも。

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