4話

 リュウが次に狙ったのは、自身と血の繋がりの濃い母親だった。自らをこの地球という星に産み落とした罪人であり、父を誑かし、父を死まで追い詰めた人間。そうリュウは捉えていた。母が居なければ父もまだまだ世界を改革させる力を持つ、底知れぬ闇を持つ神になれたのに。


 リュウの逆恨みによって母は狙われた。だが、そんなリュウの逆恨みを、思考を理解したかのように兄カズヤはリュウの目の前に現れた。しかしリュウもまたカズヤが現れることを知っていた。


「やっぱ来るよね〜」

「どういう意味だ?」

「兄さんはこっち側の人間って話だよ」

「はぁ??」

「兄さん、僕が母さんが悪いと思って襲うって分かったんでしょ?」

「あぁ、次に狙う人物は実の父親を……」


 カズヤはハッとした。


「そう、兄さん。君の細胞もどこかでは父であるミチヒロの意志をつごうとしているんだよ!」

「ふ、ふざけるな。俺は警察で弱き者を助けるために……」

「そうそこだよ。弱き者を助ける? んな思想持ってる君は、根っからの弱者なんだよ」

「はあああ?!」


 リュウは拳銃を構えた。カズヤは懐から警棒を取り出して応戦する素振りを見せたが、すぐさま警棒を地面に落とした。


「あれ?」

「俺にはお前を殴れねえよ」

「ハハハハッッ!!! 笑わせるなよッ!!」

「……は?」

「根っからのバケモンの血を受け継いでいるお前が、人を殴れない? 殺せない? ナメたこと言ってんじゃねえよ! 血が騒いでるんだろ!!」


 リュウは一発撃つ。鋭い銃声が天高く鳴り響く。住民たちは一斉に窓を開け現状を確認しようと身を乗り出す。そこを狙い撃つようにリュウは3発家に銃弾を撃ち込んだ。


「や、やめろリュウ!!」

「なにが?」

「罪もない人を殺るな!!」

「……罪もない人? そんな人間いる?」

「……は?」

「人間は生まれた時から罪を持っているんだ。生きている罪、泣く罪、騒ぐ罪、死ぬ罪」

「生きていることの全否定じゃねえか!」

「……生きている意味はなくない?」

「ならなんでお前は生きてるんだよッ!!!」


 カズヤの問いにリュウは首を捻った。そして少し考え込んだ。カズヤはその間に拳銃を奪おうと近づいた瞬間だった。再び銃声が轟く。


「……分かった。僕は僕を主張したいから生きてるんだ」

「……?」

「父ミチヒロの意志を継ぎ、自分を主張し、生きている罪人たちを葬るために生きてるんだ」

「お前のしていることは父と同じ極悪人だ!」

「……んー。それってさぁ」

「なっ……」


 気づいた時には時すでに遅し。カズヤの胸には銃弾が撃ち込まれていた。その場に倒れ込み、身動きひとつ取ることなく目を閉じた。


「分かったんだ。僕は君みたいな説教垂れを殺したかったんだ」


 そしてリュウは母親の元に乗り込んだ。


「り、リュウ。銃声酷かったけど大丈夫? 怪我は?」

「母さん」

「リュウ……?」


 リュウは自分で改造したナイフで母親の腹をえぐった。


「リュウ。あなたもお父さんと同じなのね」

「同じだなんて、父さんに失礼だろ」

「リュウ、やめて。もう罪を……」


 ☆☆☆


「……カズヤが亡くなった」

「な、なんだって?!」


 任務外中の死亡。警察手帳、バッジを奪われている今カズヤの死は無意味なものとなった。警察は自分たちの力不足とリュウに勝手に接し、勝手に亡くなったカズヤに恨みさえ残した。


 そしてリュウ確保のために警察は最終手段へ出た。


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