第4話 顔色

 入院中に心理テストを生まれて初めて受けた。

 有名なロールシャッハテストと、こちらは初耳のバウムテストとWAIS-Ⅳと言うものを。

 結果は退院後に書面と口頭で伝えられたが、良い部分もあれば悪い部分もある、という無難なものだった。

 心理テストの際は当然ながら病棟に心理士が来るのだが、これが担当医だったりソーシャルワーカーだったりすると、ちょっとした騒ぎになる。

 皆が「早く退院したい」「退院させろ」と押し寄せるからだ。

 前回登場した罵詈雑言氏などもその一人で、普段の数倍の早口で、自分はもう回復しているから、と訴える。その様子はとても回復しているようには見えないのだが。

 私が懇意にさせてもらっているソーシャルワーカーは役職が上らしく、沢山の患者を担当しており、その分、言い寄ってくる患者も多い。

 実は、とネタばらしなのだが、私の退院が5週で収まったのはこのソーシャルワーカーへの根回しが効果的だったからなのだ。

 私の主治医がそのソーシャルワーカーと相談支援員に病状などを見るよう指示していたらしく、それを逆手に取って、前述二人に、主治医に退院を早めるように伝えて、とお願いしていた。これが効果的に働いたのだ。

 クリスマスや正月を病棟で迎えたくはない、とは青峰さんとの会話だが、お陰で私は12月1日に退院が決まった。

 ちなみに病棟で食べるかも、と予約していたカップケーキは無事キャンセルされた、と相談支援員さんからSMSがあった。

 入院中、5回ほど主治医の診察があった。

 毎回「顔色が良くなった」と言われて、病院食が良いのだろうとも言っていたが、あんな不味い食事で顔色が良くなるのなら、逆が良いな、とは思っただけ。

 顔色のことや体調には触れるが退院時期には言及しないので、こちらも逆効果かなとあえて聞かずで診察を終える日々が続いた。

 この、顔色が、は面会に来てくれた相談支援員さんにも言われ、退院後の訪問看護さんにも言われたのだが、以前は一体どんなだったのだろうか、と想像してみたり。

 まあしかし、食事がジャンクだった自覚は少なからずあるので、味はともかく病院で3食きちんと食べていたことには良い効果があったのだろうと思う。

 食後にきちんと服用していたことも良かったのだろうし。

 退院が決まった後に会った薬剤師からも「生活リズムは大事です」となかなかに強めに言われた。曰く、入院当初の私はとんでもない状態だったが、今は見違えている、とのこと。やはり自覚はないのだが、そう言うのだからそうなのだろう、と頷く。

 しかし、昼夜逆転とジャンク食事だけで、人間、そんなにボロボロになるものか、と今も思う。もう少しタフだったのに、とも。

 ともあれ、生活リズムは健康的が一番で、食生活もバランスが大事だな、とは思っている。無茶をするのはいざと言う時だけにしておくのがベストだな、と。

 そんなこんなで入院4週目辺りの様子は以上とする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る