第10話 転んでもただは起きぬ

 人生には、苦労や失敗が付き物です。特に、初体験の行動は失敗の連続と言っても過言ではないでしょう。問題は、失敗した(転んだ)時の心の持ち方です。それに関しては、「転んでもただは起きぬ」ということわざがあります。これは、本来、「欲が深く、どんな場合にも利益を得ようとする者」のことをいう場合に用いられる言葉であるようです。

 米国の女流作家ミッチェルの長編小説「風と共に去りぬ」の主人公スカーレット•オハラは、その典型例ではないかと思います。勝ち気で情熱的な彼女は、南北戦争時代の変貌する社会に翻弄されながらも、貪欲に、かつ逞しく生き抜きました。冷酷さも伴う彼女の生き方には批判も多いのですが、その点が物語を一層魅力的なものにしているような気がします。

 さて、失敗をした時の対応は、人によって様々です。1回の失敗によって立ち直れないくらいに落ち込む人がいます。「転んだら起きぬ」人です。対照的に、同じ失敗を何度繰り返しても懲りない人もいます。こちらは「転んだらただ起きる」人です。どちらも、困りものです。そうではなく、失敗から多くのことを学びそれをバネにしてより逞しく生きてゆくことが望ましいのではないでしょうか。そのような人は、「転んでもただは起きぬ」人と言えます。

 今の世の中は、不透明•不確実の度が増し続けています。そのような中にあっては、誰もが様々な困難に遭遇します。どのような状況になろうとも、明るい未来の到来することを信じ、お互い「転んでもただは起きぬ」気構えで逞しく生きてゆくことが大切ではないでしょうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る