第6話 優しさと厳しさ

 人間は、一人きりでは、一日たりとも生きていくことができません。毎日の豊かな生活を享受できるのは、多くの人間が相互に助け合い、協力し合っているからです。そのような関係を維持していく上で欠かせないのは、他人に対する優しさではないでしょうか。

 だからといって、単に優しいというだけでは不十分だと思います。優しさの対極としての厳しさを伴ってこそ、優しさも意味を持つのではないかということです。優しいということは、包容力を持つことですが、それは無条件ではないはずです。人道を外れた行為に対しては、毅然とした態度で臨む必要があります。それが、お互い人間として生きていく上で必要であり、相手を思いやるということでもあるからです。

 人間は、ともすると、自分に甘く他人に厳しくなりがちです。お互いにそのような気持を露にすれば、良好な人間関係など築き得ないでしょう。そうではなく、それぞれの人が「他人に優しく、自分に厳しくする」という気持で行動することにより、何とかバランスがとれるような気がします。また、「厳しい」ということは、単に「(人の言動を)容赦しない」ということであってはならないと思います。大事なことは、自分なりのしっかりとした価値判断基準と勇気を持ち、毅然として物事に臨むことであると考えます。

 お互い、厳しさを内に秘めた優しさで、他の人と付き合いたいものです。

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