第4話 偉い人はいない

 かつて読んだある本の中に、次のようなことが書いてありました。その本の著者が、子供から「お父さんの職場で、お父さんは偉いほうなの」と質問されたのに対して、「お父さんより偉い人はいないよ。それと、偉くない人もいないんだ」と答えたのだそうです。その人の言いたかったことは、人間関係において「偉い」とか「偉くない」などと区別すること自体が間違っているということです。私も、全く同感です。

 一人ひとりの人間は、本来、対等な存在です。異なるのは、社会的役割です。多くの人々が共に豊かで平和な生活を維持していく上で、人間社会は不可欠なものです。そこには、一定の秩序と役割分担が必要です。その中で、各自は自分なりの社会的役割を確保し、それを基盤として日常生活を営んでいるわけです。そして、社会的役割の違いが、「偉い」とか「偉くない」などの幻想を生み出していると思います。

 大切なことは、誰もが、「人間、皆対等」の基本認識のもと、他の人とそれぞれの立場を相互に理解し尊重し合うという気持で接することではないでしょうか。また、社会的地位の高い人は、多くの人たちに支えられているわけですから、そのことを素直に感謝しなければなりません。いわゆる「実るほど頭の垂れる稲穂かな」の気持で、謙虚に過ごさなければならないと思うのです。

 最後に、あえて「偉い人」を定義づけるとすれば、「自分の立場に応じて為すべきことを確実に果たすために地道な努力を重ねる人」ではないかと考えます。

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