第2話 今生きていること

 「人生、生きちょるだけで丸もうけ」。これは、平成17年3月まで放映されたNHK朝の連続テレビ小説「わかば」において主人公の祖母が口癖とした言葉です。物語は、阪神淡路大震災で父親を亡くした女性(わかば)が父の遺志を継ぎ緑と共生する家づくりを目指して元気一杯に奔走する姿を描いたものでした。この言葉は、原作者自身の人生観を端的に表現したものでしょう。

 私たちは、今、21世紀となり不透明さと不確実さが増し続ける現代を生きています。困難な事態に直面した時は、弱音の一つも吐きたくなるものです。しかし、それは、贅沢な悩みと言えるのではないでしょうか。私たちが今日当然の如く享受している文明を獲得するに至るまでには、人類約15万年の歴史とそれ以前の約138億年に及ぶ壮大な宇宙活動がありました。私たちは、そのような宇宙の最先端である「今」という瞬間を、地球上で最も恵まれた存在として生きています。

 私たちは、それぞれ、生まれながらにして一人の人間です。それを自覚し感謝することが、それぞれの人生の原点とすべきものではないでしょうか。その上で、自分なりの人生を地道に歩んでゆくことが最も大切なことだと思います。

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