第5話 傷だらけの姫君
病院に着いたのは日付けが変わった時刻だった。つい先程まで酒や喧嘩で騒いでいた者達はすでに寝床に入り、多くの夜街の店が暖簾を中に仕舞っていた。その中でも灯りが付いている数少ない場所がその病院、「マルバス総合診療所」である。診療所と云うには敷地面積が広く、元々の武家屋敷として建築され、階層を増築されたこの建物はナルムの中でも救急の外来を持っている数少ない病院であった。
入口で3人を出迎えてくれた看護師はミサオから応急処置をした兵士からの診断書を貰うと確認のための簡単な検査のみをし、ゼロとスズカ両名を患者用の部屋の一つに案内する。
「え....?」
スズカの顔が点になる。
なぜならば2人に用意されたのは2つベッドが並んだ部屋。間にはカーテンが仕切っているのみ。
スズカが別部屋ではないの?と聞くと、この部屋しか空いてませんと突っぱねられてしまった。
ゼロは状況を受け入れ速攻で患者用の着物に着替えるとそのまま窓際側のベッドに潜り込んだ。スズカ不満を覚えつつも仕方なしに着替え、ベッドに入った。
そこから少しして二人きりになると、スズカの愚痴と不満、悪口として、ゼロに対する攻撃が始まったのである。
「不愉快。」
「....それはもう聞いた。」
すでにベッドに入ってから1時間ほど。数分おきにくるその言葉にゼロはいい加減うんざりしていた。それもそのはず。最悪な印象の初対面、その後の態度も含めてスズカから見てゼロは無礼千万で気に入らない、粗雑に扱って良い対象だと認識してしまったからである。
「本当に不愉快。」
「まだ言うか。いい加減に寝ろ。」
もうずっとこんな調子である。
未だスズカの態度が変わることはない。
ゼロもさすがにあんな場所にいたのだからさぞかし辛い事もあったのだろうと彼なりに優しく接してきたつもり(または無関心)である。が、当の自称お姫様は猫被りで性根は横暴かつ口が悪い。ゼロを見下す態度も崩すことがない。ゼロ自身もそれにヘコヘコ頭を下げる気が起こらなかったので基本的に強気な態度を崩さない。しかしさすがにそろそろ煩くなってきたので、顔に平手打ちの一発でもお見舞いしてやれば大人しくなるんじゃないか?と思い始めてきた。
(いっそケツでもぶっ叩いてやろうか?)
ゼロはどうせ子供みたいな奴なのだ、さぞかし子供の躾は効くに違いないと思った。しかし後々ミサオ達にチクられて自分の立場が危うくなるような状況になるのは避けるべき、と思い直した。
(しゃあねえ、もうしばらくは我慢してやる。この煩せえバカよりはいいコでいるよう頑張ろう。)
ゼロがそう自分の中で独り言ちると。
「おい。」
カーテン越しに不機嫌な声が飛ぶ。
「なぜ黙る。」
なぜ黙ってちゃ悪いのか、さっさとオレを寝かせてくれ、とゼロは思った。というかつい数時間前に会った女に自分の睡眠を邪魔する権利があるのだろうか?本当に何様なのだろう、この姫は。
(姫....姫か。)
咄嗟に思考の内から出た疑問。初対面の自己紹介で言った「ハイキヒメ」という言葉。
そもそも彼女の名乗った「ハイキヒメ」とはなんなのか?なぜ、そう呼ばれていたなどと自分で嘯いたのか。よくよく考えてみればおかしい話ではある。
(あの時は何言ってんだこいつ、と思ったが....)
もしあれが本当であって彼女が何処かからの囚われの姫君であるならば。まるで何処ぞの英雄譚のような話ではないか。ゼロ自身も何となく興味本位で聞いてみたくなった。
「スズカ。」
「ほへ!?」
ゼロが急に口火を切る。おそらくゼロからの問いは全く想定していなかったのだろう。もしくはいよいよ反撃されるか?とも思ったのかもしれない。
「ハイキヒメ、ってなに?」
「....。」
沈黙。これも想定されていなかった問いだったのか、それとも言いたい放題だった反撃としての言葉がいささか拍子抜けだったのか。それは定かではない。
「....ゴホン。も....文字通りの意味だ。廃棄されて、棄てられた姫。名付けて廃棄姫。位を廃された、かつては国の礎の一端としての存在が、後ろ楯がなくなり、納めていた親族もなくなり、地位も財産も全て没収された名前ばかりの捨てられた姫。ようするに特権階級だったものが尻の毛まで抜かれた憐れな姿になった、ということだ。」
随分遠回りな言い方をする、とゼロは思った。先程まで散々不平不満で突っ込まれたのだ。逆襲がてら根掘り葉掘り聞いてやるか。そんな下衆な感情でゼロは畳み掛けた。
「そいつぁ大変だったな。で?どこの姫だったんだ?」
「どこの....てぇ。」
スズカとしては微妙に意地の悪そうな態度を何となく察したのだが、一応事情を聞いてきたのだから説明する義務はあるかな、と考えた。というよりかはこれはスズカが自身の存在を一般認識程度の知識であると誤解していたことがそもそもの間違いではあったのだが。
「....ここだ。このトウオウ領。かつてはここが私の、父の国であった。しかし他国の列強、その襲来に対してあまりにも無力であったために、我々は聖帝国に土地も住民も全て託す形になってしまった。」
「何で手放したんだ。無力ってのは理由にならんだろう。」
「....父上がその方が良いと思ったからだ。そして聖帝もまた同じように考えていた。力は分散していても力にならぬ。この世界から見ても小さな島国は、島国だからこそ団結して世界に立ち向かって行かなければならない。父上と聖帝の意向は重なり、父は聖帝の手助けのために自らの国を明け渡したのだ。」
「なら、なんであんたはあんな所にいたんだ。」
スズカは押し黙った。聞かれるだろうという予感があったからだ。それは同時に答えたくないものでもあった。
(ぬう....随分突っ込んで来るな、こやつは。先程までの仕返しのつもりか?)
しかしここまで話してしまっては後にも退けないという気持ちもスズカにはあった。スズカとしてはここまで自分の身の上を知らない他人に話したのは初めてのことだったからである。
「あんたの親父さんが同意して国を渡したなら聖帝様だってそれなりの高待遇で迎え入れるだろう。オレも師匠からこの国のことに関しては多少教えてもらってるが聖帝様やその関係者が不義理を働くという話は今のところ聞いたことがない。まぁ、あくまでもオレの知ってる情報の主観だから、実際は違う事があったのかも知れねえが。」
ゼロ自身は別に聖帝の信望者というわけでもない。彼がなぞっているのはあくまでも読んだ書物や師匠から教えてもらった歴史であるからだ。そして、それにはその国の成り立ちにきっちり立ち会った当人から聞いた話も僅かだが絡んでいる。あえて実際は違う、という言葉を持ち出したのもスズカから言葉を引き出すためのきっかけでもある。
「....裏切られたのだ。」
それがスズカが絞り出した言葉だった。ゼロ「裏切られた?」と言葉を重ねる。
「そう、聖帝にではない。私の叔父上、ナカノウエサダマロにだ。」
診療所にある当直室にて1人の小柄で白衣を着た女性が茶を啜っている。彼女の名前はフェルティナ、このマルバス総合診療所の所長である。基本夜型で生きている彼女は夜の救急診療等を一手に引き受けている。なぜなら昼間の忙しい時間は全て自分の弟子たちに任せ、自身はなるべく人と関わらずゆったりと生きていたいからである。
もっともこの日は急患として入った2名の患者の処置でそれどころではなかったが。現在も当直で見回りに出ている看護師と3人でいつでも動けるように備えていた。
「こんな緊張感のある夜も久し振りだ。ちょっとワクワクしてる。」
「フェル姉さん。それ、患者さんに不謹慎過ぎると思うんやけど....。」
茶をしばく相手はミサオだった。今夜は一応ゼロの付き添いの名目で診療所に泊まっているのである。
「まぁそうかもね。でも、あの人達は多分助からないよ。仮に命が繋がってもおそらくは精神疾患と後遺症による障害でまともに生きるのは無理だ。それともまたキミが身請けするかい?」
「....昔のうちだったら....。今は、無理やな....。」
顔を背けるミサオを見ながらフェルティナは煙管に煙を潜らせる。そしてその煙を一気に吸って吐く。
「そうだよ、私達は神様じゃない。助けられない者は助けられない。いや、正確には助けられる者しか助けることはできない。いいねえ、ちったぁ成長したねぇ。ミサオちゃん?」
「あんまりからかわんといてぇな。....わかっとるよ。ちゃんとわかっとる。でもな、あんまりにも可哀想すぎてなぁ、あの子達。」
フフン、とフェルティナは笑みを浮かべる。
「人生は運だ。運が悪ければ酷いめに遭うし、運が良ければ人生だって変わる。君の場合は君が自分の力で運を勝ち取った。でも、それは君がどんなに望んでも他人に預ける事のできるモノじゃない。だから....たとえ身内だからってあの子達に必要以上に肩入れをしてはいけない。私達は一応魔女の弟子だけど、魔女の弟子であって魔女にはなれないんだから。自分に出来る範囲のことをするしかないんだよ。」
「....せやね。うん、わかっとる。」
ミサオはすでに月が見えなくなった外の闇に視線を移す。
「....あの子も....そうやったら、ええのにね。」
ミサオは寂しそうにそう言った。
その様子を見たフェルティナは急須の茶葉を変え、お茶のおかわりを煎れはじめた。
「それはそうと。」
「それは....そうと?」
フェルティナの言葉にミサオは返す。
「試しにあの2人、一緒の部屋にしてみたらなんか色々話し込んでんだよねぇ。うら若き少年少女の青春の1ページ、ちょいと覗きに行かないかい?」
「....それはさすがに遠慮するわ。ていうかそれが一緒の部屋にした目的?」
「いや?部屋が足りなかったのは本当。計ったのは認めるけどねぇ。」
毎度こういった悪戯をするフェルティナに対してドン引きしたミサオは新たに淹れてもらった茶を飲んだら寝ることに決めたのだった。
「あんたの叔父上が、か?」
「そうだ。」
その言葉にゼロは特に驚かなかった。身内同士で権力や富、資産を理由に殺し合いや裏切りが生ずる事などよく聞く話であったからだ。で、あるならば眼の前のこの意地の悪い姫はその被害者ということである。なるほど、それであればここまで捻くれた性格になるのもまぁ頷ける。頷けるが、同時にそれでは終わらないだろうという感覚をゼロはスズカの声色から読み取っていた。
「事の顛末は....そうだな、私の父上が土地や資産の譲渡のための聖帝国との調印式での出来事だった。その場にいた父上とその部下、そして列席していた聖帝の使いの者達に対して叔父上が刃を向けたのだ。その時に叔父上に迎合していた部下達と建物の外で待機していた父の私兵達での殺し合いになった。書類一式は叔父上に奪われ父とその部下たちは全員その場で殺された。そして同時に聖帝からの使いの者達も。叔父上はその場で父上を反逆者に仕立て上げた。「聖帝よ。ナカノウエサダキヨは反逆者となった。最後の最後で自らの国を売ることを拒んだのだ。我がそれを阻止したのだ。」と、そう言って自らの功績をでっち上げ死人に口無しと云うように汎ゆる事柄を自身の都合の良い良いように持っていったのだ。その中には当然、私の母上と姉上もいた。」
スズカは一度呼吸を置くと「うん」と喉を鳴らす。そして天井に再度視線を向ける。
「まず、母上は叔父上の後妻に選ばれた。元々の叔父上の妻、私の叔母は叔父上との諍いの末離縁していたからだ。母上は当然拒否したが結局叔父上の息がかかった周囲の者の計略により叶わなかった。母上はその後叔父上の寝所で毒を飲み自害したという。」
スズカは続ける。ゼロはすでにその胸糞の悪さから正直聞くのをやめようかと思ったがスズカを制止することはしないと決めた。
「次に姉上。姉上は当時近隣の聖帝国の領の統治貴族との結婚が決まっていた。それを有りもしない噂を流されたことで破談となった。勿論それは叔父上の策略だった。姉上は数年間叔父上の下で政治の道具として軟禁状態にあったのだという。しかしその生活で気が違ってしまい、自ら首を吊って死んだのだという。」
ゼロは「そうなのか」と聞こえるか聞こえないかくらいの声で相槌を打つ。スズカは一応聞こえているのか、また大きく息を吐いた。
「....私のことも話しておこう。叔父上の乱心があった日。まだ幼かった私は父の部下の1人と地方へ落ち延びた。母と姉が騒動のあった段階ですぐに私を獣車に乗せ逃がしてくれたからだ。しかし逃亡生活も長くは続かなかった。叔父上の手の者により同行していた部下は殺され、私は再度叔父上の下に送り返される、はずだった。」
「はず、だった?」
「そうだ。そこには人買いの一団が潜んでいた。おそらくは近隣の村々で商売でもしていたのだろう。叔父上の手の者達を皆殺しにするとそのまま私を捕え、あの遊郭へと売り払ったのだ。当時はまだ男の相手も出来ぬほど子供であったからな。当面は年上の者達に付いて芸事やしきたりを学んだ。そうしている内に悪くない暮らしができる程度には稼げるようになった。ああいった場所で身体を売る以外での生きる方法があった事自体に驚いたがな。」
「思ったより器用に生きてたんだな。」
思ったよりとは何だ?私がそんなに不器用に見えたのか、とスズカは思ったが話が進まなくなるので無視をした。こういう小言を挟むような男に余計に返したところで小言が増えるだけだということをスズカは知っていたからである。
「ま....まぁ器用かどうかはわからぬ。ただ顔が良ければ初めから特権を持つことは出来る場所ではあったな。すぐ近くには人間扱いすらされずに墜ちていく者も大勢見ていたからな。ああはなるまい。ああなる前にここを出なければと何度も思ったよ。だが、それも叶うことはなかったのだがな。」
「....それがあそこにいた理由か。」
ああ、そうだ。とスズカは返す。
「数ヶ月前のことだ。叔父上とその息子が遊郭に訪れる事になった。無論、客としてな。私は息子の相手に選ばれた。奴は数回に渡って私を訪ねたよ。多分私の正体に関しては知らなかっただろうがな。もっとも奴の身の上を聞く段階で私の決意は固まっていた。」
スズカは何かを握るような手の形でそれを前に突き出すように動かした。
「こう、護身用の小刀でグサっ....とな。まず金的を潰してやった。その後で逃げようとする奴の身体のあちこちを刺した。しかし、悪運が強かったのだろう。急所に至る傷はつけられず殺す事はできなかった。」
「頭や心臓は狙わなかったのか?臓器は?」
「私も当時はどうやったら人が死ぬかなどてんで知らなかったのだ。逃げながらも抵抗する奴の力に勝てなかった、というのもあるがな。まぁ子種を潰して子孫を根絶やしにした分だけ儲け物であろうよ。だが、殺しはしなかったとは言え大事な客に一生残る怪我を負わせたのだ。すぐに私は幽閉され、その罰を受けた。」
「罰?」
「簡単な話よ。安い客を充てがわれたのだ。しかも身体目的の。日に何回もな。まぁ、そうせざるを得なかった。逃げ場もなかったし。あそこにいたのは、そうだな。おそらく一ヶ月くらいか。身体を洗う事は許されたがそれ以外には怪我の手当てを少ししてもらう程度で随分ぞんざいに扱われていた。もしかしたらもう誰かの子は孕んでおるかもしれぬ。」
徐ろにスズカによってカーテンが開かれる。ゼロは話をしていた関係上、眼の前にあった「それ」を見てしまった。
「見せてやろう。これが罰だ。」
ベッドから降りたスズカは着物の帯を外して身体の前側を開けて見せた。そこには無数の刀傷とも打たれたようにも見える無数の生々しい傷跡があった。
「戯れにやられてな。もっとも私よりももっとひどい目にあった者もいたが。私は日の浅い内にあそこから出られたからこうして助かったが、もしあと一ヶ月、いや、数週間あそこにいたらどうなっていたことか。お前はいけすかん奴だが、助けてくれた事だけには感謝している。」
スズカは開けた着物を元に戻すと後ろのベッドに腰掛ける。
「辛くは、なかったのか?」
「わたしがか?まぁ過ぎてしまえばそこまでは....な。それに無念であった父上や母上、姉上の事を思えばこの程度の事など....。」
「そうじゃねえ。テメエはどうだって聞いてんだ。」
ゼロの言葉にスズカは視線を外す。それは彼女自身が自分を偽っている証拠でもあった。「それ」を言ってしまえば今の自分ではなくなってしまうとでも言いたげなように。
「....答えぬよそれは。死んでも言えぬ。すまぬな。」
それはスズカの今の自分の生き方に対する覚悟の言葉だった。ゼロはそれにはすぐには返答しない。
....そして、
「....そうかい。じゃ、これ以上聞かねえ。」
ゼロはそう言うと寝返りをうって視線を外した。言うべき事は言った、とでも言うように。これ以上お互いの尊厳に関わる部分に不躾に脚を踏み入れるべきではないと感じたのかもしれない。
ただ、スズカとしては自身の身の上を晒した以上は今度はゼロ自身の事が気になり始めていた。このまま一方的に聞かれたのでは不平等だと感じたのだろう。
「....そなたこそどうなのだ?ミサオ殿と言ったか?先程見た限りでは御主、あの御婦人の忠告をまるで聞いとらんようだったが?」
「それ、お前さんに関係あんのかい?」
ゼロが不機嫌そうに返す。スズカはその態度に苛立ちを覚えた。人に言うだけ言わせといてこれではこちらとしても割に合わないではないかと。
「ないな。ただ話を聞かんのはお互い様だと思っただけだ。あんな人の良さそうな、優しそうな方の。身体をあんな艶めかし〜く密着させてくれるような。よくあんな無下な扱いが出来るものだ。」
スズカはあえて嫌味な言い方を交える。先程の仕返しも込めて。当然ゼロはそれに反応して再度寝返りをうち、スズカ向き合った。
「....張り倒すぞお前。」
いよいよゼロもベッドから出て来てスズカの目の前に立った。スズカもそれに合わせベッドから降りて2人は互いに睨み合いながら顔面を突き合わせる。
ほぼほぼ同じ背丈の2人は呼吸を合わせたように向かい合いながら部屋の広めの位置に移動する。
「ほう、私を襲うか。構わんぞ?一晩くらいなら身体を好きにさせても良い。まぁ好きにさせた後で貴様にぶら下がってるものをこの歯でギッチリ噛み千切ってやるがな。」
「誰がお前みたいな抱きごごち悪そうなガリガリ相手にするか。少しは肉付き良くなってから出直して来い。」
その言葉と同時にスズカはものすごい速さでゼロに掴みかかった。ゼロもお返しとばかりに同じようにスズカの着物を掴むが予想以上のスズカの力にやや押され気味である。
「おのれ、言うたな?言いおったな?人の好意を無下にしおったな!しかも何だそれは。太れとでも言いたいのか?この私に太れと!これは最大級の侮辱!ええーい許さーん!!」
「んな好意いらんわ!てか太れとも言ってねえ!」
襟をきっちり掴まれ激しく揺さぶられるゼロ。と、同時に激しく動いたことでゼロの手がスズカの着物の帯にかかり、そのまま引き抜いてしまう形となった。
「わぁ!やめろ!てか帯外れてんじゃねえか!こら!やめろ!」
「知ったことか!訂正しろ!今すぐ訂正!てか裸なんざ今更見られたところで減るもんじゃないわ!よし丁度いい!この帯で貴様の首を絞めてやるわ!!」
「ぐわああああーーーー!!」
少しして騒ぎを聞きつけたミサオとフェルティナが仲裁に入る。散々揺さぶられたり無抵抗にどつかれまくっているゼロと下着1枚の姿で暴れまわっているスズカの2人を見た印象、それは当初フェルティナの言っていた青春の1ページには程遠く、ただの未熟な子供同士のじゃれ合いにしか見えなかったという。
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