閑話 生態調査報告書:イワマトイ
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ギルドにて確認をとったが正式名称の類は無いようなので勝手ながらこちらで命名。
二回層、湿地階層の河川帯にて発見した体高およそ1.5m程の牛であり、地球のものと比較した時その最大の差異はやはり魔法を使う点だろう。
恐らくは臆病な性格の個体が多いのかこちらが近づくだけで全身に岩を纏ってじっとその場から動かなくなり防御する。
赤いトサカが目立つ鳥と常にいるところが確認されており、恐らくは地球でいうカバと鳥のような共生関係を築いているものと推測される。
カバは自身の背中などの寄生虫などを鳥に食べてもらい自身を清潔にする、鳥は餌が安全に確保できるという関係があるようで、このイワマトイと命名した牛もそうだと思われる。
また共生関係と言っても重症や致命傷を負った個体、年老いた個体は非常に気性が荒くなり攻撃的になる為、鳥相手にも威嚇したり捕食しようとする。
結果として寄生虫の除去や外敵の警戒が出来なくなり、そのまま死ぬケースが多い。
自然界では年老いた個体や傷ついたものから群れから追い出したり自然と死ぬ様にプログラムとでも言うべきか、そういう風になっていわゆる「群れの健全化」とも言うべき現象が起きる。
それは常に群れが若い個体、傷ついていない個体で固定されている状態になるように群れが動くシステムだ。
老いれば動きが鈍り群れ全体の行動速度に関わる。能力や反射能力の低下により狩りの成功率が落ちる。
そうした事が無いように様々な方法で群れは自然な形で弱者を切り離し種が生き延びれる様に動くのだ。
恐らくはイワマトイが致命傷を負ったり年老いたりした個体が気性が荒くなるのは無意識かあるいは種の存続の為にそうして排除できるシステムを自ら作り出した結果なのだろう。
特にこの階層には寄生トンボなどという凶悪な虫が至るところにいる階層なのでこういった共生関係は特に大事だろう。
こちらの鳥も寄生トンボの幼体をイワマトイの体を抉り中をほじくって食べ、イワマトイの体が穴だらけの寄生トンボの苗床にならない様にするのが役割の様で、その他にも大声で鳴いて外敵の接近をイワマトイに知らせる等、体の小ささに似合わない賢さを備えた鳥の様だ。
イワマトイは五頭から六頭の群れを形成して川魚を主食としている。
鈍重なこの生物が如何にして魚を取るか気になり観察をしたところ、複数頭で岩になって英単語のCの様な形を取る事で自身の体を使ったトラップをつくりそこに魚が入ったところ残った個体が狩る、という形の様だ。
狩りを行うのは若くまだ全身に岩を纏えない個体が行う、その為群れの生存は若い個体の狩りの成功率が重要となっている。
その為若い個体を囲む様にして群れを形成する習性があり無理に若い個体を狩ろうとすれば周りのイワマトイがその全身を使って圧し潰すか岩を纏いながら体同士を擦り合わせてすり潰されるかの二択だろう。
食性としては厳密には雑食性らしく川底の藻なども食むようだ。
動きは非常に緩慢でエネルギーの消費を抑えている為と思われる。
創世樹街の人間に聞いたが全身に纏った岩が硬すぎる為か討伐報告は少なく味については「わからない」や「非常に美味」「蟹の食べられない所みたいな味がする」など真偽がはっきりとしない。
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「・・・リンの為に狩る、のは美味しいか保証が無いからなんとも言えないわね」
するとしても誰かで実験してからにしたい。
リンにはなるべく美味しいものだけを食べて欲しいからな。
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