G列伝03話 飛躍の兆し(1)

【読み始める前に一言】


 サラッと閑話を1話ほど差し込む予定が、ほんの少し増えてしまいました。

 ええ、本当に少しです。

 人により尺度は様々なため、絶対とは言い切れませんが。


 取り敢えず私は本編へ戻りますが、読み手の皆さんはゴブ達の活躍をお楽しみ下さい。

 あ、修正もせねば。


 最後に『ゴブは結構』と読み飛ばされるのは自由ですが、できれば流し読み程度でもして頂ければ嬉しいです。


 取るに足らないゴブ達ですが、何気に本作の土台もとい陰の立役者です。

 それゆえゴブ達を知ることで、ストーリーの深みがマシマシに。

 多分だけどね。


⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹



 < side 名無しのゴブ太 >



 「お前らーいくぞーっ! せーのっ!!」


 「「「ごっぶぶっ!!!」」」


 先輩ゴブの掛け声に合わせ、タイミング良くそれぞれの持ち場の岩盤を斜め横からピッケルで穿うがつ。


 ──ガガガンッ


 ──パリパリパリッ ズズドドーンッ

 ──バラッ パラパラッ


 岩盤へ亀裂が、横一線に走り抜き──


 下半分がズレ落ちて──


 音を立てて──


 倒れる。


 そしてその後から更に欠片として降って来る巨岩を、慣れた動作で躱していく。


 ふー。

 あっぶ。

 でもー、いつものこと。


 「よーし、上手く剝がれたなーっ! お前らー避けるのが上手いっ!! ガッハハ」


 笑いごとじゃーない。

 当たったらー、ぺったんこ。

 死んで終わりだ。


 「みんなー大丈夫っ?」


 「「「ごっぶ!」」」


 みんなを気遣う分隊長のゴブ美。

 優しくて可愛いゴブ。


 「ゴブ太ー見過ぎだぞー、引かれるかもなっ。っふ」


 「んで、いつ告るんだー? 二ッヒヒ」


 隣からオイラを揶揄からかうゴブ郎とゴブ吉。

 既にゴブ美に何度も告って振られた2人でもある。


 因みにゴブ江にも告っている。

 そちらは満更でない返事がもらえたようで、嬉しそうにガッツポーズをしていた。


 「……んーまだもう少し。強くなってから考えるゴブよっ」


 オイラの返しにニヤつく2人。

 この遣り取りもいつものこと。

 挨拶のようなものである。


 何だかんだでみんなが、ゴブ美推し。

 だけど争うことはない。

 ゴブ道では極々普通のことだから。


 3人ともに選ぶも、ゴブ美次第。

 誰も選ばないも自由。

 不特定多数が極々自然のこと。


 束縛もない、子沢山のゴブ道。

 お互いを応援し合い、和気藹々わき あいあい


 先輩と現場は厳しいけれども、こんな感じで現在楽しく拡張工事中である。


 補足として『掘削』スキルが生えたことにより現場の配置替えで、前までやっていた細断作業は終了。

 所謂、栄転を果たした。


 「おおおー来たぞっ! これは、大量だなーっ。ガッハハハ。よし、構えろーいくぞー、せーのっ!!」


 「「「ごっぶぶっ!!!」」」


 現場監督けん索敵さくてき』スキル持ちの先輩ゴブの号令の下、一斉にピッケルを振り上げ、掛け声に合わせて亀裂へ突き刺す。


 ──ガガガンッ


 「グーボボーッ!!」


 「ガッハハ。見事的中だなーでも、まだまだーもう一丁だっ!! せーのっ!!!」


 ──ドガガンッ


 「グッ………ゥッ………ゥ……」


 「ッハハハ。始末できたなーっ!! 上出来だーお前らーっ!!!」


 岩盤深くまで伸びた亀裂に沿って湧き出た魔蟲を無事に討伐。

 顔を出した瞬間に、天誅されてしまう憐れな断末魔も聞こえた。


 ふー。

 焦った。

 今日のはデカ過ぎ。


 安堵と共に近くの岩石に腰掛ける面々。

 先輩ゴブからの激がないようなので、オイラも。


 「っふふ。今回のは数がー多かったわねー」


 「うん。それにーサイズが一回り大きかったよー。ビビってー何度も振り下ろしたゴブ」


 近づいてくるゴブ江の手には先程の魔蟲の目玉が。

 その汁を美味しそうにジュルジュルとすすりながら、


 「んーあの人ー、誰かしらねー」

 

 筋肉好きのゴブ江がガン見する方向には、普段見掛けることのないスパーデカゴブと先輩ゴブの話し込む姿が。

 一生懸命にヘコヘコする様子から、相手が相当上の人だと分かる。


 「んーあたまー下げ過ぎゴブっ」


 「聞かれたらー怒られるわよー。でもーそうね。っふふ」


 そのあとはゴブ郎とゴブ吉も加わり、束の間の小休憩を下らない話で笑いながら過ごすのであった。



   *

   *

   *



 「休憩終わりだーっ! 今し方ー緊急出動命令が下されたー、付いて来いっ!!」


 「あのーまたー、特別軍事演習ですかー?」


 「ん、いやー違うなっ。本番だっ! 皆にも言っておくぞーこれは本番だっ!! 分かったらー付いて来いっ!!!」


 「「「まじかっ!!!」」」


 「「「やったっ!!!」」」


 「「「最高っ!!!」」」


 最前列の人がした質問への返答を聞き、一転して盛り上がりを見せるゴブ達。


 みんな、満面の笑顔だ。

 オイラも嬉しくて頬が緩む。


 「本番かー。やっと俺達もダンバトにー、参戦だなっ」


 「ああーやっと、運が巡ってきたなー。ニッヒヒ」


 隣で喜び合うゴブ郎とゴブ吉。

 テンションが上がる理由は、パワーレベリングである。


 実はダンバトと言うイベントが開催中らしく、穴下こと落下地点で待機すると漏れなく破格のレベルアップができるらしい。

 スーパー棚ボタである。


 それに運が良ければ進化も。

 そう言うことでゴブ達の間では、憧れの舞台にダンバトがなりつつある。

 でも順番があるようで、未だに参戦叶わず。


 「進化できるかなーっ」


 「それはー分からないかな。でもー可能性はあるゴブよ」


 「うんうん。楽しみねー。っふふ」


 少し興奮気味なゴブ江。

 気持ちはオイラも同じ。


 そう運が良ければ待望の進化が。

 胸熱である。


 周囲のゴブ達も同じようで、浮かれ気味。

 そういう訳で引き締まることなく、ガヤガヤとそれぞれの夢を語りながら先輩ゴブの後を付いて行くのであった。



   *

   *

   *



 「よーし、到着っ! 隊列毎に並び直せーっ!! それとー各分隊長は前へっ!!!」


 んー!

 ここはー?

 想定外。


 誰もがキョロキョロして周囲を探っている。

 少なくとも予想していた穴下ではない。


 はっ。

 もしかして──


 パワーレベリングなし。


 えーっ。

 そんなー、バナナ。


 周りのゴブ達もショックで肩を落としている。

 中には小刻み震えながら、ガビーンしている者も。

 当然、ゴブ郎とゴブ吉もその中の1人。


 そしてオイラも同様に呆然と立ち尽くしてしまうけれど、みんなのへこみ顔こと変顔で少しずつ冷静さを取り戻す。


 はー。

 残念。

 こればかりはどうしようもない。


 うん。

 次に期待である。


 それにしても凄い数のゴブ。

 一帯がゴブ塗れ。


 んー!

 あれれ。

 もしかして初期ゴブばかり?


 引率の先輩ゴブを除くと、進化前のゴブのみ。

 背丈からして間違いない。


 「ねーあれー、何かしら?」


 「んーどうしたー? おー小さっ。あれはー門だなっ」


 「いやー近づいたら、たぶんデカいかもなー。ニッヒヒ」


 気になりオイラもそっちを見ると、遠くの方に門らしきものが。

 パワーレベリングではなかったけれども、何かしらのイベントがあるのかもしれない。

 

 隣では門について早速、あーだこーだと嬉しそうに話し合うゴブ江・ゴブ郎・ゴブ吉。

 オイラも興味があるので加わろうとしたその時、まだ少し離れているけれどもこちらへ戻って来るゴブ美と──


 目が合う。


 可愛いゴブ。


 惚けていると先輩ゴブから、


 「おーい、お前らー注目っ! ここから見えるー門っ! あれはーゲートだ!! あれを潜ることでー対戦相手のダンジョンへの侵入がー、可能になるっ! 分かったなーならばーよし、行って来いっ!!」


 「「「………」」」


 突然の先輩ゴブからの突撃命令に、シーンと静まり返る面々。

 意味不明過ぎる。


 「ッハハハ。冗談だー許せっ! お前達は77番目に突撃だっ!! 暫く時間があるからーそれまで休憩っ!! ガッハハ」


 「「「……っ」」」


 いやいや。

 まったく笑えない。

 冗談が過ぎる。

 

 オイラ達のビビった姿を見て、未だ豪快に笑う先輩ゴブ。

 質が悪い。


 そんな中、淡々と隊のメンバーへゴブ美が語り掛ける。


 「はーい、注目ねー。今聞いた通り、敵対ダンジョンへ攻め入ることになったからー頑張ろうね。あ、それとーピッケルの状態はしっかり確認してねーっ」


 ゴブ美が受け持つ分隊は、20名。

 勿論、オイラもその一員。


 ゴブ美の話ではひびの入ったピッケルがあれば、取り換え可能らしい。

 有り難い話だけどオイラのピッケルは、ピッカピカ。

 毎日しっかりと磨いている証。


 その後も隊員からの質問に対して、丁寧に応じるゴブ美。

 でも顔がほのかに紅潮してて、これからの戦闘が楽しみで堪らないといった様子。

 それもまた──


 可愛いゴブ。


 それにしてもー。

 200名ずつ送り込むような話。

 スケールがデカい。


 んー。

 77番。

 まだまだ先。


 そして目の前に広がるゴブ塗れの光景を眺めていると、


 「「「ごぶぶぶぶっ!!」」」


 「「「ごぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!!!」」」


 「「「ごぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶっ!!!!」」」


 おお。

 すごっ。


 呼応していく雄叫びに圧倒されて、鳥肌が立つ。


 間違いなくダンバトの開始である。

 オイラの初めてのイベント。

 湧き上がるワクワク感。


 ここからでもしっかりと分かる光輝くゲート。

 そこへ吸い込まれるようにゾロゾロと進み始める隊列。

 そして出陣するゴブ達のために、より一層増幅する咆哮。 


 でもオイラ達の番は、まだまだ遠い。

 逸る気持ちを抑え、一先ず一休みである。

 ピッケルへ体重を預けながら、ゆっくりと腰を下ろすのであった。



   *

   *

   *



 「77番目の中隊ー前へっ!!!」


 「よし、お前達の番だっ! 気張きばってこいっ!! 」


 「「「ごぶぶぶっ!!!」」」


 「あ、そうだ、そうだっ! 危なくー言い忘れるところだったっ! えー良く聞けーっ、状況はー不明、情報なしだーっ!! 相手ダンジョンへ侵入した者達とはー連絡が取れんっ。なのでーさっぱり分からんのだー面目ない。でもだーっ、頑張れっ、諦めず戦ってこいっ、俺はここでーお前らの凱旋を待つっ、以上っ!!!」


 「「「ごぶぶぶぶぶっ!!!」」」


 テンションが高くなっている所為せいか、トンデモ発言にも衝撃を受けることなく、前のめりに返事をするオイラ達。


 そして周囲から大声援を受けながら、更にお互いを鼓舞しながら、臆することなくゴブ美のあとを追い光り輝くゲートへ突入を果たす。


 初めてのゲート。

 一瞬視野が屈折したかのようにグニャっとなる感覚。


 普段使っている転移陣とは、使用感が全く違う。

 そして視界が開けた先には──


 巨大な洞穴どうけつが。


 「「「うわーっ!!!」」」


 「「「すっげーっ!!!」」」


 「「「キレイだーっ!!!」」」


 初めて見る外の世界。

 呆気に取られ、見蕩みとれてしまう。

 

 周囲のゴブ達も同じようで、それぞれが思い思いの感想を口にしている。


 穴の高さは20mほど。

 山岳地帯なのか、周囲はゴツゴツとした剥き出しの岩ばかり。

 離れたところには森らしきものも見える。


 でもここは敵の領土。

 暫く眺めていたいけど、悠長なことはできない。


 オイラ達同様にゲートを潜ったゴブ達が、次々と降り立つ。

 当然周囲は、既にゴブ塗れ。


 そして準備ができた分隊毎に、洞穴こと入口へ突入していく。


 「みんなー準備はーっ? うんうん、大丈夫そうねー。じゃーいこっかーシバキにっ!! っふふ」


 軽めの口調から始まり、ドスを効かせた語尾。

 そして先程までの可愛過ぎる笑顔は消えさり、そこには鬼の形相で不敵に笑うゴブ美が。


 「「「ごぶっ!!!」」」


 震えながら大声で返事する分隊の面々。

 これはー、武者震い。

 たぶん。


 こうしてオイラ達も意気揚々いき ようようと入口こと敵ダンジョンへの侵略を開始するのであった。




⊹⊹⊹徒然つれづれスレ⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹⊹


真っ当なゴブ :ねえねえ

うす塩好き  :ん

真っ当なゴブ :そもそも閑話にプロローグって、必要?

うす塩好き  :必要ない(キリッ)

真っ当なゴブ :内容的に……プロローグでしょ、これ

うす塩好き  :えっ!


真っ当なゴブ :話が始まってないよ。怒らないかいら素直に吐露とろちゃいな

うす塩好き  :文字数的にー

       :区切ったらー

       :たまたまー

真っ当なゴブ :いやいや、端折はしょっちゃえばー良いじゃん

うす塩好き  :タイトル的にーそれは無い(キリッ)


真っ当なゴブ :だってー、閑話だよ。

       :それとその顔ームカつくから止めてっ

うす塩好き  :え、酷っ!

真っ当なゴブ :あ、それよりもー

       :話が長くなった的なこと言ってたけど……

うす塩好き  :少しねー

真っ当なゴブ :それーほんと?

うす塩好き  :気持ち的に少し増えた感じだからー、少しだねー

真っ当なゴブ :んー怪しいなー

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