G列伝04話 飛躍の兆し(2)
< side 名無しのゴブ太 >
「な、なんだーお前等ーっ! ごらああーっ!!」
「か、カチコミっすっ。兄貴を呼べえええーえ、ま、待てっ、ぐわあああっ……助けぇー………ぐぅ………ぅっ……」
「……種族は………ロックゴブリン……」
透かさずに目が良いゴブ江が種族を言い当てて、みんなへ周知。
いつもの流れ。
そして突如ダンジョン壁をブチ壊し出現したオイラ達に、狼狽える敵ロックゴブリン達。
見た目は、少しテカリのある岩肌が特徴。
色は、薄緑を帯びた灰色。
体は、オイラ達よりも三回りほど大きい。
賄いを食べている者。
装備の点検をしている者。
壁に寄っかかり休息をとっている者。
ほとんどが者が突然の襲撃に、
反撃どころか防御態勢もとれぬまま、ゴブ美のピッケルで打ち抜かれ散って逝く。
「はい、はーい。死んでねーっ。んーと、そっちもー、えいっ!!」
――ガンッ
――ブッシュッ ブッシューーーッ
――バタッ バタンッ
そして更に弾かれていく頭。
主を失った首から盛大に吹き上がる
そして重力に耐え切れず次第に、倒れていく残りの体たち。
おお。
カッコよ。
つい見入ってしまうけれども、すべきことをせねばと後方を確認。
チラッと振り向いた先の破れた壁こと侵入口からは、予定通りに流れ込む仲間のゴブ達の姿が。
うん。
イイ感じ。
そして視線を前に戻せば、早速とばかりにゴブ美を囲って対処しようと動き始めた敵ロックゴブリン達が。
ならばと、
「よし、いくぞっ! そっちのヤツらを押し止めてー、囲うゴブっ!!」
「「「ごっぶっ!!!」」」
「ぐおっ、なんだーこいつ等っ!」
「「邪魔っ!!」」
「くそーっ、ちょこまかとっ!!」
「マジーうぜっ、ノーマルゴブリンめっ!!」
左側から接近しようとしていた敵ロックゴブリン4体へ、次々と纏わり付くゴブ達。
うん。
イイ感じの嫌がらせ。
それにこれでゴブ美の後方へ、回り込まれる心配がなくなる。
たぶん。
因みにここはダンジョン5階層。
目の前で戦っているゴブは、全てゴブ美の指揮下に入っている。
入口である洞穴を潜ると、整えられた石造りの道幅6mほどの通路が張り巡らされた造りへ変貌。
驚きはしたけれども他の分隊同様に、最短で行けそうな方角の壁を破壊しながら驀進することに。
当然その途中で何度も遭遇戦となり仲間を失いつつも、その道中で出会った半壊状態の維持継続できない隊を次々と吸収して突破していく。
その結果、現在はご覧の通りの大所帯に。
そのうえ苦手だった指示も回を重ねる毎に慣れていき、今や連携も滞りなく上手にできるようになってしまった。
でも戦闘スタイルこと基本は変えず。
多数で囲み、丁寧なカウンターを重ねて倒す。
避けては打つ。
躱しては打つ。
それを油断なく、愚直に繰り返していく。
何しろ相手は、常に格上。
喰らえば、終わり。
だけど気後れはしない。
いつものことだから。
慌てることなく。
焦れることなく。
リズム良く打ち込む。
「当たれ、この野郎っ! な、ぐああーっ!!」
「くっ、班長までもーっ!! でもーなんでー、俺らの部屋にっ!! くそ、くそ、くそがーっ!!」
増えるゴブ。
減る敵ロックゴブリン。
こうしてこの部屋での戦局が、こちら側に傾きつつあるその時に――
「なんだーお前等っ!!! どこから来やがったっ!!!」
「「小隊長ーっ!!」」
「ああー兄貴ーっ。あそこの壁をーブチ破ってーゴブリンどもが、……ごふっ……ぶふぇっ……」
突如奥の通路から勢い良く飛び出て来たのは、更に二回りほど大きい敵ロックゴブリン小隊長こと兄貴。
後ろには沢山の部下も連れているようだ。
そして手前で
「ちっ。壁を壊すかーありえねなーっ! それにー好き放題やってくれちゃってーっ! 全然、笑えねーっ!! ほんと笑えねーだよっ!! 全員ー殺してやるっ。オラーーーっ、死にやがれっ!!!!!」
「っふ。
――ガッキンッ
死角からのゴブ美の必殺を
「くっ。あっぶねーなーっ! ノーマルの
「あっ、れれー、スキルー発動失敗かなー、残念。んーいけない、いけない、集中、集中だねーっ! っふふ」
「なに、余裕こいてやがるーっ! 気にくわねーっ、このアマは俺がヤルっ!! お前等はー後ろをヤレっ!!!」
「「「ッサアアアーーっ!!!」」」
「んーとっ、口悪いなーコイツっ! えーと、ゴブ郎ー30連れてー右っ! ゴブ吉も同じくー左っ! ゴブ江はー後方の調整と全体へのフォローっ! ゴブ太ー残り連れてー通路っ!!」
「「「ごっぶぶぶっ!!!」」」
透かさず各々の配下達に、指示を送る兄貴とゴブ美。
早速、双方入り乱れの混戦へ突入する。
そして兄貴の攻撃を華麗に躱すゴブ美を尻目に、残りのゴブ達を引き連れ通路を塞ぎにいく。
「分かってると思うけど相手の正面には立つなっ! 避けてー足元を狙うゴブっ!!」
「「「ごっぶ!!」」」
指示を飛ばしつつ敵の斬撃を躱していく。
そして狙い澄まし、ガラ空きの重心が置かれた敵右足を――
打つ。
――ドドンッ
「ぎゃああああああっ!!!」
見事に命中。
床の石板ごと膝下を砕き飛ばす。
当然、装備してある
そしてバランスが取れずに地面へ崩れたところを透かさず、みんなで一斉に打ち込む。
「よし、畳みこむゴブっ! せーのっ!!」
――ガンッ ドンッ ドガンッ
「ぎゃっ、ぎゃっ、ぎゃぁっ………ゃぁ……ぁ……」
数舜で原形が無くなる敵ロックゴブリン。
無論、お亡くなりに。
その骸を捨て置き、次へ。
当然こちらの意図に気付いた相手側も、通路へリソースを割いてくる。
「そっちにー倒れるぞっ! 避けるゴブっ!!」
「「ごっぶぶっ!!」」
――ズドーン ドーン
そんな彼らと
更に通路側も同様に。
そんな開けた空間ではないところでの交戦。
躱すスペースが少なく逃げ場も限られてしまうため、相手の攻撃を避け切れずに被弾するゴブ達が増加する。
自ずと目の前には奮闘の甲斐なく昇天したゴブ達の死体が横たわることに。
やむなし。
少なくない被害を出しながらも暫し続け、漸く――
封鎖が完了。
「ふーこれで、やっとー任務完了ゴブよ」
「「「やったっ!!」」」
「「「ごっぶっ!!」」」
生き残った周囲のゴブ達が安堵ともに沸き立つ。
これで敵側の増援はなくなった。
あとはこの部屋のヤツらを倒せば終わり。
見る限りゴブ郎とゴブ吉の方も大丈夫そうである。
囲みながら堅実な戦いをしているようだ。
あとは中央で激しく戦っている――
ゴブ美と兄貴。
無傷のゴブ美。
素早さで圧倒しているようだ。
勝利は目前のように見えるけれども、1発でも貰えばゴブ美の負け。
反対に、ボロボロの兄貴。
武器である大剣は真ん中で折れ、避けきれずに被弾した個所は装備ごと
それでもゴブ美の一撃をどうにか
「くっそ、くっそがーっ! 当たればーっ!!」
「さっきからーそればかりよねーっ。そろそろ素直に当たってくれないかなーっ」
「フザケルなっ!! このアマっ!!!」
「ほんとー口が悪いなコイツっ! 早く死んでくれないかなー無理だよねー、でもお願いっ!」
言い合いをしながらも、更に手数を増やすゴブ美。
そしてその攻撃の芯を
このまま暫くこの遣り取りこと交戦が続くと思いきや、後方へ下げた左足が穴に取られ――
バランスを崩す兄貴。
「くっ、くそっ!!」
「会話に付き合ってー、正解っ! 足元、注意だねー。っふふ。これでー終わりだよーっ」
「……これでもっ!!」
「……ほいっとねー、バイバイっ」
「……っ」
兄貴からの鋭さの欠けた苦し紛れの一撃を難なく躱して、半回転したままの勢いで打ち込むゴブ美。
――ドガガンッ
「ぐわあああああっ!!!!」
最後に出した空いてる兄貴の左手ごと、ゴブ美の一撃が胸を
ポッカリと穴が開く。
「ぐぞおおっ………ぐぉっ………ぅぉ………ぃ……」
吐血しつつ自らの身体に空いた穴を見つめながら、膝からゆっくりと崩れ落ちる兄貴。
そして次第に腕が脱力していき、時を待たずして動かぬ屍と化す。
こうしてこの部屋においての最後の1体が倒れて、戦闘終了に。
「「「よっしゃーっ!!!!」」」
「「「勝ったぞーっ!!!!」」」
「「「ごぶぶぶーっ!!!!」」」
固唾を呑んで見守っていた周囲のゴブ達が一斉に喜びを爆発させる。
そして少し照れくさそうにハニカミながら振り向くゴブ美。
「ゴブ美、流石ねっ!」
「凄かったなっ!」
「いやーお見事っ! ニッヒヒ」
「うん。それにー迫力があって、カッコ良かったゴブよっ」
「んー余裕。でもー少し危なかったかなー。っふふ」
手放しで称賛するゴブ江・ゴブ郎・ゴブ吉・オイラ。
沢山の返り血と血塗れ状態の顔で、嬉しそうに微笑むゴブ美。
ある意味ホラーだけれど、誰一人気にしない。
みんな同じで、血塗れだからだ。
ん!
ゴブ美?
「ん、あれ?!」
「「「ゴブ美っ!」」」
ゴブ美の体が優しい
「おいおい、これってーっ」
「もしかしてー、例のーっ」
「いやー、何事かと思ったがー。ゴブ美ー良かったなー。ニッヒヒ」
「ほんとー安心したよー。それにしてもー綺麗な光ゴブ」
そして全体が光に包まれて完全に見えなくなり、シルエットのみとなるゴブ美。
これはオイラ達が待ち焦がれていた――
進化。
一瞬何事かと焦ったけれど、問題なし。
進化であることに気付いた周囲のゴブ達も羨望の眼差しと共に、固唾を吞んで見守る。
そして未だに中の状態は、見えない。
でも光のシルエットのゴブ美のサイズが大きく膨らみ続けているのは分かる。
おお。
また大きくなった。
凄っ。
突然のゴブ美の成長期に、
でもこれが進化である。
あ!
止まった?
これ以上はサイズアップしないようだ。
ある意味、残念。
そのうえ光も収束し始め、消えていく。
そしてベールが剝がされたそこには、怪獣のように一段と逞しくなった――
ビッグなゴブ美が。
うっ。
デカい。
でもー、ゴツ可愛いゴブ。
サイズは六回りほど大きなって、体長6mほど。
色合いは以前より全体的に濃く、更に赤みが強くなった感じ。
更に着ていた装備品も
そのために色々なものがはみ出てしまっている。
でも気にする様子を見せないゴブ美。
シャープさがなくなり
当然オイラも。
ん!
隣にゴブ江が。
「……ラージ・ハイ・ゴブリン・ソルジャー……ね」
「それーゴブ美?」
「そうそう」
「……先輩ゴブで『ラージ』はいなかったような。聞いたことがないゴブ」
「……そうねー、私も初めてよ。珍しい種に進化できたのかもねー」
「っはは。ある意味ーゴブ美らしくてー、良かったゴブ」
「っふふ。ええーそうね。ゴブ美らいしわねー。あとーそれに私達もー続かないとねー」
「ああーそうだね。次はーオイラ達がー、進化する番ゴブ」
嬉しそうにゴブ美のバキバキと割れた腹直筋を見つめるゴブ江。
そして着れそうなもの、装備できそうなものを物色し終えたゴブ美がオイラ達の下へ。
「えーと、やったのはー?」
「んー敵ロックゴブリン42体だなっ」
「それと二回りデカいソルジャーが3体。ニッヒヒ」
「えー最後にゴブ美が討ち取ったー、リーダーが1体ねー。っふふ」
順番に討伐数を応えていくゴブ郎・ゴブ吉・ゴブ江。
「んーもう少し居たような気がしたけどねー。あ、そうだ。こっち側は? 多そうだけどー」
「……んー逆算してー130以上が、ご臨終ゴブ」
「うんうん。なるほどーでも、まー妥当な線ねー。えーと、みんなー聞いてーっ!! 小休止後ー前進するよーっ!」
「「「ごっぶ!!!」」」
元気良く返事をする生き残ったゴブ達。
そして早速討ち取ったロックゴブリン達を切り分けて、
特に人気の兄貴はあっという間にブロック状の肉塊へ。
既に原形の欠片もない。
「オイラ達もっ」
「「「だなっ(だねっ)」」」
無くなる前にいつもの面々を誘い、負けじと食べに行く。
当然ゴブ美も一緒に。
そして隣でガツガツと大きくなった姿に見合う量を平らげていくゴブ美に、オイラもと夢馳せながら両手持ちで肉塊を頬張るのであった。
⊹⊹⊹
忖度なしゴブ :閑話これで終わり?
コンソメ好き :ん? 終わりーではー
忖度なしゴブ :いやー終わりでよくない
コンソメ好き :え?
忖度なしゴブ :見せ場も少しはあったからー十分じゃーない
:書きたいことあったら、他の閑話ですればー
コンソメ好き :んー、それはー違う(キリッ)
忖度なしゴブ :えー、逆にーなんで?
コンソメ好き :秘密(ボソッ)
忖度なしゴブ :あ、そう
:それよりー、それはー
コンソメ好き :栄養ドリンク(キリッ)
忖度なしゴブ :風邪?
コンソメ好き :んー、体調崩しただけー
忖度なしゴブ :なんで?
コンソメ好き :寝不足気味?
忖度なしゴブ :ああーだからー、目に
:しっかりと睡眠取りなよー
コンソメ好き :時間がなくてー
忖度なしゴブ :いやいや、ゲーム時間減らせばー
コンソメ好き :それはー無理(キリッ)
忖度なしゴブ :ならーアニメはー録画にしてー
コンソメ好き :それはー嫌(キリッ)
忖度なしゴブ :ならー漫画はー
コンソメ好き :それはー心の潤い
忖度なしゴブ :あ、そう
:はー
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