第035話 ゴブ子
フウカに勝利してから追加で、2戦。
結果、2日目は3戦全勝となる。
その時の順位は、
➡1位 タオ・イエシキ 23戦 23勝 0敗 1階層 1,528BP
2位 ユウキ・ソウマ 11戦 10勝 1敗 38階層 902BP
3位 ミコト・コハル 9戦 9勝 0敗 41階層 801BP
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掲示板での大方の見方は、2日目のタオは様子見でダンバトしないと思われていたので、突然の3勝でザワつくことに。
その流れでフウカを含め俺と対戦した3名は、ちょっとしたヒーローになってしまったようだ。
加えて3人から引き出した僅かなタオ情報をネタに盛り上がりを見せる数々のスレッド。
一応念のためチラチラと偵察がてらに覗いたりしていたけれど、どうも入口こと巨穴の深さに興味津々のようで、俺としては総じて大した情報とは言えず、一安心。
そして欲しかったデイリー報酬の宝箱は、
・2日目の参加報酬: 高級木製宝箱x 1個
・ 〃 対戦報酬: 〃 宝箱x 3個
・ 〃 階層報酬: 〃 宝箱x45個
・ 〃 勝利報酬: 高級銅製宝箱x 3個
今朝起きて真っ先に宝山へ、配置済み。
当然DPもたんまりゲットで、ニコニコ。
そして現在は3日目の昼過ぎ。
初日や2日目と比べてそれぞれが自分に合った攻め方や守り方を何となく掴んだようで、積極的にダンバトが行われている模様。
それに付け加えて順位表の
上位陣も昨日の俺とフウカの一戦を皮切りに、激しくぶつかる様に。
ダンバト前半戦の残りが今日と明日となり、順位を少しでも上げたい者達にとっては、追い込まれ感が多少なりとも生じ始めたのかもしれない。
それに付け加えて初日は誰も全く気にしていなかった縛りが邪魔をしているようだ。
・同じ相手のとの連戦不可
・同じ相手とは12時間ほど間を置かないと次戦不可
何度も対戦したい相性の良かった相手や、抜くのに手っ取り早いちょい上との直接対決が繰り返しできなくなることへの
因みに2位と3位からダンバトの申請があったが、現在スルー中。
BP差がもっと縮まり追い抜かれそうになってから、検討をしようかなと。
しかし昨日とは打って変わり、本日は相手に困らず。
タオ打倒に燃えている残念な人達からの申し込みが絶えないのだ。
それも精神的に前のめり気味になっているのが原因かは分からないけれど、対戦相手としては遣り易く既に4戦を終え、全勝。
ありがたや、ありがたやである。
そして現時点での順位は、
➡1位 タオ・イエシキ 27戦 27勝 0敗 1階層 1,992BP
2位 ミコト・コハル 15戦 15勝 0敗 43階層 1,193BP
3位 ユウキ・ソウマ 14戦 13勝 1敗 40階層 1,187BP
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何気に首位独走気味に。
それに漸くの2位と3位の入れ替わりも。
まあ、僅かな差なので直ぐにでも、順位が元に戻りそうではある。
どちらにしても下位の面々が、足の引っ張り合いをしてくれること願うのみだ。
そして今は休憩しながら掲示板の流し読み中。
因みに見てる内容はキーワード絞り込みで、ダンバト対策のみを表示。
勝利だけでなく、階層突破の重要性を熱く語る人がなんとも多い。
でもまあ、逆に言えばそれに関わる質問も、多いということになるが。
そしてその中には自慢げに話す、
次に多いのがBPと宝箱。
少しでも多くゲットするためのハウツー的な感じだろうか。
『負け確でもすると良い10のこと』とかもある。
そうこうしている内に休憩時間が終わったようで、本日の第5戦目が開始される。
開通されたゲートへ、鼓舞しながらゴブ達が次々と入って行く。
そして忘れずに『強くなって帰ってこい!』と心の中でエールを。
1戦当たり平均して1万4千ほどのゴブ達がお亡くなりになっているので、このダンバト終了後には5戦で7万超に。
それでも生存率が50%超えなので、数値からもゴブ達自身の奮闘が
それに加え見ることのできない相手ダンジョンでの交戦内容が気になり、帰還したゴブ達から話を聞いてみたけれど、要領を得ず。
(Q)格上の魔物をどのように倒しているのか?
(A)みんなで囲って、掘って掘りまくるゴブ
(Q)掘れない魔物は?
(A)掘れないヤツはいないゴブ
(Q)近寄ることができない魔物は?
(A)周囲の地面や壁から掘って掘りまくるゴブ
(Q)持って行った武器は?
(A)お守りゴブ
(Q)ピッケルが壊れたりして使えなくなったら?
(A)死んだ仲間のを拾って使うゴブ
言っていることは何となく分からんでもない。
イメージとしては拡張工事中の遭遇戦かなと。
岩石を掘削しながらピッケルで、そのまま瞬殺する姿を何度も目にしている。
でも得心がいかないためアヤメを呼んで、解説を頼むことに。
すると武器を使わない理由が判明。
拡張工事もダンバトも戦う魔物は格上ばかりで、通常手段の攻撃では傷すら付けれないようだ。
そのため『穴掘り』スキルを用いてそれを解決しているとのこと。
魔物を岩石と見立てることでそのスキルを発動させて、岩石同様に掘削こと討伐が可能に。
そしてそこで重要になるのが発動トリガー。
携帯している武器ではイメージが固定できずに、発動しないようだ。
だからこそのピッケル。
因みに歴戦の先輩ゴブ達になるとピッケルとか関係なく、好きな武器で発動可能とのこと。
ほうほう。
成る程と感心してしてまった。
付け加えほとんどのゴブ達は『穴掘り』ではなく、昇華した『掘削』スキルを活用とのことである。
補足としてダンバトで相対する『魔物・装備している武器と防具・ダンジョン内の壁』は、岩石や岩盤よりも硬くないとのこと。
更に地中型の魔物と比べれば、どれも柔らか過ぎだそうだ。
何とも恐ろしい攻撃手段では思ったが敢えて突っ込まずに、話の先を促し更に聞いていく。
そして何よりも気になっていた攻略スピードが突如上がる原因が判明。
良く攻略状況ボードから目を離している間に、次の階層にいっていることがあるのだ。
まず教えてもらった限りでは、認識のズレと言うか前提が違っていた。
相手ダンジョン内では道なりに進むことが無いそうだ。
驚愕の事実に
初っ端から壁を壊しながら次の階層がありそうな方向へ
偶に入口と出口が真っ直ぐな造りの階層があるらしく、その場合は一直線になるため自ずと最短ルートが出来上がってしまうようだ。
そりゃ、早い訳である。
そしてフウカが言っていたのは間違いなく、これのことだろう。
この話を聞いた今なら、同情の余地が十二分にある。
可哀相に。
ヤバいなこの子達。
ダンジョン泣かせ。
対戦したダンマス達も、
痛々し過ぎる。
俺だったら相当に
お!
もう13階層へ。
先ほどのダンバトよりも若干ペースが速い。
おそらくはダンジョンの壁を破壊しながら突き進んだ先に、運良く下層への階段があったのかもしれないな。
聴取できたお陰で少しずつだけれど、ゴブ達のダンジョン内での行動がイメージできるようになったようだ。
それにしても階層を迷路のように作ってるダンジョンは、
自動修復機能で元に戻るとはいえ、DPの大量消費は免れない。
新たに作るよりは安く済むけれど、早めに直そうとすると特急料金が発生して更に高くなる。
即時修復になると遥か上の超絶特急料金だ。
次のダンバトのこと想定すると、嘸かし頭が痛くなることだろう。
ご愁傷様である。
因みにシロツキは落下地点周辺から指揮をするそうで、今日はコアルームことモニタールームに来ていない。
アヤメの方はゲートで見学だそうだ。
ついでに出陣前のゴブ達にアドバイスもしてくると言っていたような。
兎にも角にもそんな訳で今現在、
勿論、コーラとポテチも一緒にね。
お、14階。
いやー、素晴らしい。
イイね。
ゴブ達と攻略中のこのダンジョンの相性が、余程良いのかもしれない。
ただその活躍を映像で見れないのが残念過ぎるが。
でもまあ、出来ないことを願っても詮無きこと。
前向きに、目の前に置いてある──
コーラを飲む。
う、うまいっ!
心にシュワシュワが染み渡る。
「かっはははっ!」
「カッはははっ!」
声に出して笑うと更に、気持ち良い。
ポテチを摘まんで、コーラで流し込む。
かっ、最高っ!
「かっはははっ、がっはははっ!」
「カッはははっ、ガッはははっ!」
ん!
声が
「かっはっ」
「カッはははっ」
んー!
ズレた?
「かっ」
「カッはははっ」
んっ、違う!
誰かいる?
パッとモニターから後ろのソファーへ振り向く。
うおっ!
お、女の子?
そこにはソファーで寛ぎながら、俺と目が合うと二ッと人懐っこい笑みを浮かべる少女が。
髪はキラキラしたピンク色のロング。
服装はサイズ大きめの真っ白の貫頭衣で、至る所に大きな穴が。
所謂、ボロボロ。
だが汚れなし。
布からはみ出た手足は細長く、ツヤツヤの透き通るような肌。
目は髪とお揃いのピンク色で、長い睫毛にパッチリお目目。
んー。
どう見てもー。
ゴブに見えないが。
でも
なので必然とゴブになるが。
あっ!
もしかしてー。
連日連夜のダンバトによって沢山のゴブ達が進化しまくっている中の特殊ケースなのかもしれないな。
外見的にも多種多様な変化を遂げている現状から鑑みると、この子のようなゴブがいても変ではない。
それにエンペラー8人衆も体のサイズは全く違うが、人に近い容姿の美男美女であることを考えると──
うんうん。
得心できるな。
布は上等で真っ白だが、穴が開いてボロボロの状態。
ダンバトの激しい戦闘でそのようになってしまったのだろう
そしてどうにかダンジョンへの帰還に成功したものの仲間達と違う進化に戸惑い、こっそり俺のろころに相談しに来たのかもしれない。
うんうん。
なるほどねー、可哀相に。
見たところオドオドさはなく、笑みからは
我慢しているのか。
強がっているのか。
そう考えると段々と
幸せそうにテーブル上のポテチをパクパクと口に運んでいる。
好きなだけお食べと言ってやりたくなる。
でも相談しに来たことを忘れ、ポテチに夢中。
少しおバカなのかもしれないな。
それもかえって切なさを増幅させる。
「これ、旨いなっ」
ごく自然にこちらへ同意を求めてくるゴブ子。
戦場から帰ってきた直後のファースト・ポテチ。
そして何よりも負の感情を一切含まない物言い。
逆に憐れみが増し過ぎて涙が零れそうになるけれど、グッと堪え──
「そうだなー。それよりもーどっちから来た?」
「あっち。あっ、無くなってしまったのじゃー」
「そっか。ほれっ」
無くなってしまったポテチのお皿に、俺がさっきまで観戦しながら食べていたポテチの残りを全部入れてあげる。
「わーありがとうなのじゃ、旨いのじゃーっ」
指さされた方向にはゲートがある。
やっぱり帰還したばかりの凱旋ゴブなのだろう。
あとでシロツキに連れて帰ってもらおうかな。
いや、同じ性別のアヤメの方が良いか。
うんうん。
そうしよう。
取り敢えずはダンバト中なので、モニターへ向き直す。
おし、15階層だ。
敗北宣言をしてきても良い頃合いだと思うが。
まあ、このまま続けてもらった方が俺としては、貰えるBPと宝箱が増えるので非常に有難い。
そしてそのままゴブ達の階層突破が続き、20階層に辿り着いたところで漸く敗北宣言が。
ふー。
また勝ってしまった。
これで本日の5戦目も、勝利。
6戦目までまだ時間があるので、一息つくことに。
そしてソファーへと振り向くとそこには先程までいたはずのゴブ子の姿がなく、テーブルには──
カス一つないピカピカのお皿が。
そう言えば途中から静かになっていたなと思い返す。
相談しに来たのに相談にのれなくてゴメンと思いながらソファーへ横になり、束の間の休息を取るのであった。
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