第031話 21戦目(2)
誰だろー。
強くない人でありますように。
願いを込めながら確認。
名前は――
フウカ・トドロバネ。
ん!
見た記憶が。
確かー、上位にいたはず。
んーと。
彼女の現在の順位は、
6位 フウカ・トドロバネ 8戦 6勝 2敗 30階層 630BP
あ、やっぱり。
名前見たことあったんだよね。
もう少し下だったはずが、現在6位に。
申請の内容は、
-------------------------------------------------------------------------
首位の実力を見せて!
:お初っ! 今日ダンバトしてないけどー、様子見?
:このままだとー宝箱もらえないぞ
:
条件1: 敗北宣言有無 有効
条件2: 制限時間変更 2時間
賭物1: 300万DP
-------------------------------------------------------------------------
ほうほう。
条件は悪くない。
コメントの内容はさておき、ゴブ達がどこまで通用するか知っておきたい。
そう考えると上位陣であるフウカとこの際やるのは有りかもな。
上手くことが運んで勝利できるかは分からないが、少なくともデイリーの参加報酬で宝箱1個はもらえる。
うんうん。
やるべきだな。
「ほー、このアマっ! コッホん。……タオ様ー、フウカとやらと是非ともやりましょうっ」
お!
内容を覗き込んだアヤメ。
おそらくフウカのコメントが気に入らなかったようで、少々
「望み通り実力をーこのアマっ、コッホん。喉の調子が……失礼。えーと、力は見せるべきときに見せないと力とは言えないのでー、是非戦うべきですよ。タオ様っ」
言ってることは分からないが、ニュアンス的には理解できた。
少々興奮気味でもあるので、
「アヤメー、どうどう」
「タオ様ー、ペットじゃ、ないですよー」
「あ、ごめん」
んー。
アヤメはヤル気満々かな。
それに対して俺も反対する気はない。
そもそも昨日までとは違い、相手がいない悲しき本日。
対戦相手を選べる立場ではないことは重々承知。
なので逆にフウカへ感謝である。
そう言うことで俺が尻込みしてても意味がないので、賭物を倍の600万DPへ変更して送り返す。
一応、開戦は10分後と付け加えてね。
これで合意になれば――
お!
早っ。
フウカが了承したようだ。
即断即決ですか。
ではではと言うことで館内放送でダンバトを周知。
それから今日買ったばかりの腕輪ことバングルこと
するとチャンネル選択パネルが表示され、『10』を選び、『接続』をタップ。
すると――
――ニャ ニャ ニャ ニャーン♪
『はい、シロツキです』
お!
上手くいった。
ドーム内にいるシロツキと繋がったようだ。
つい呼び出し音である猫の鳴き声が気になってしまう。
最後の『ニャーン♪』の音が高くなっているところが特に。
この
映像付きを探したけどなかったから、音声のみになる。
因みに領域外や相手ダンジョンでは作動しない。
「準備はー、大丈夫そう?」
『問題ありません。ゲート前に突撃用ゴブ6万、スタンバイ中です』
ん?
ええええー!
更に増えてる。
3万じゃ、ないの?
3万って言ったじゃん。
心を落ち着かせ、
「んー、了解。えっと、因みにー守りは前回と同じ?」
『……いえ、今回の主力は2次進化済のリーダーと3次進化済のナイトで、合間合間に1次のソルジャーを差し込んでいこうかと』
ほうほう。
ジェネラル以降は参戦しないのか。
他のゴブ達に対応できない事態が生じたら、出陣する的な。
臨機応変ですかね。
うんうん。
イイじゃー、ないかな。
多分だけど。
「ん、了解。健闘を祈っている」
「はい。お任せください」
ぅえっ!
え、なんで?
横に――
シロツキ。
えっとー。
現場の指揮は?
あれやこれやと突っ込みたいが、驚きもあり纏らない。
こちらのことは露知らず、当然のように俺の斜め後ろに控えるシロツキ。
んー。
まあ、大丈夫なんでしょう。
いざとなれば、転移陣で現場付近へピューッである。
細かな指示も
俺は左腕に1個、シロツキとアヤメは左右2個ずつ、合計4個ほど身に付けているバングルこと
見た目の材質は、クリスタルっぽい感じ。
そしてサイズは、自動調整機能付き。
更に個別通話とグループ通話の切替可能タイプ。
補足としてデザインは様々あり、俺のは猫が歩いたように『猫きゅう』があしらってある。
呼び出し音の猫声パターンも色々あり、俺のは『なゃーん♪』。
因みにエンペラー組のチャンネルは、10~100。
部隊を率いる者達こと隊長格は、千番台から割り振っている。
昼過ぎの掲示板で『便利だ便利だ』と騒ぎになっていたのだ。
試しに購入してみて正解にゃん。
ん!
おっと、失礼。
さっきの鳴き声が脳内に焼き付いていたようだ。
いけなっ、いけないにゃん。
おっとと!
あっぶ、あぶないにゃん。
っふ。
つい猫語で遊んでしまった。
反省、反省にゃん。
今は置いておいてまたの機会にゃん。
えーと。
冗談はこれくらいにしてー。
やり忘れていることはないよね。
大丈夫かな。
あ、そうだ。
ゲート前の映像を表示してなかったので、選択してアップ。
そこには石造りの豪華な装飾と華麗な曲線が特徴の大きな門が、一定の間隔て5つ。
その中央にある門の前には、大勢のゴブ達が隊列を組んでガヤガヤしながら待機する姿が。
そのダンバト用のゲートで、相手側ダンジョンへ魔物を送り込むのである。
サイズは『ショップ』で色々あったが大は小を兼ねと言うので、高さ20mの幅8mを設置。
今回は相手がフウカだけなので、真ん中の門だけが稼働中。
だけど接続されていないので、まだ通ることはできない。
ダンバト開始と同時に相手側の転移陣と繋がり、通れるようになる仕組みのようだだ。
ドキドキ。
やっぱりこのような時は緊張感が高まってしまう。
チラッと右側のシロツキを見るが、俺とは違いソワソワした様子なく泰然としている。
流石っす。
左側に控えるアヤメを見ると楽しみでワクワク感が止まらないといった感じだ。
俺の視線を感じたのか、目が合う。
「タオ様ー、そろそろですね」
ん!
言われて時間を確認すれば、10秒前。
もう少しじゃん。
今回は初の侵略でもあって、緊張マシマシかもしれない。
ドキドキとバクバクが入り混じった感じ。
「タオ様、始まりのようです」
シロツキに促されてモニターを注視。
するとその時がやってきたようで、ゲート全体が輝きだし相手ダンジョンと繋がったようだ。
ゲート右側面には、縦並びに輝くボタンが5つ。
それは相手ダンジョンの入口付近にある転移陣5個とそれぞれが接続されている証左で、切り替え可能である。
今現在その中の上から3番目こと真ん中のボタンが押下されて設定状態の赤色に。
ゲートを通ればその転移陣に降り立つことなる。
それが相手ダンジョンの入口周辺のどこであるかは分からないけどね。
「200体を1個中隊として矢継ぎ早に投入していきます」
「ん、了解」
うんうん。
なるほどね。
ん!
始まった。
部隊単位で動き出す標準ゴブ達。
雄叫びを上げながら
そう言うことで少しの間、見守ることに。
ジーっと只々ゴブ達を見送り続けるが、問題は生じず。
懸念とは裏腹に滞ることなくスムーズに進む隊列。
うんうん。
大丈夫そうだね。
ならば今度は送ったゴブ達がどうなっているかを確認せねば。
タップして攻略状況ボードを表示。
・0階層: 50体
・1階層: 40体
・2階層: 0体
・3階層: 0体
・
・
・
そこには階層毎に送り込んだ魔物の生存個体数がリアルタイムで表示されている。
ほー。
こんな感じになるのね。
0階層こと入口付近にいるゴブが、50体。
入口から1階層へ侵入を果たしたゴブが、40体。
しこもこれが唯一の情報となる。
通信も映像も一切使えないので、想像する他ない。
一応、投入しているゴブ数はカウントしているので、引き算をすれば昇天ゴブ数を弾き出すことはできるが、正直厳しい。
順風満帆にことが運んでいるのか。
試行錯誤しながら進んでいるのか。
四苦八苦しているのか。
絶体絶命のピンチを迎えているか。
俺の勝手なイメージだが、ゴブは容易に死んでいく生きもの。
エンペラー8人衆を見ると強いだろうことは分かるが、こびり付いたイメージを払拭するには
なので昇天コブ数のみでは想像し辛いのである。
因みに今現在の対戦スコアは、
(タオ) (フウカ)
789 VS 824
両者共にスコアをゲットしている模様。
と言うことは撃破ポイントが発生していることになる。
即ち、戦闘中。
フウカ側の方がスコアは高いが、僅差。
もしかすると拮抗しているのかもしれない。
まだ始まったばかりだけどね。
交戦内容は分からないけど少なくとも昇天ゴブが、次々と生産され始めてるはずである。
でもゴブ達もスコアを稼いでいる訳だから、負けじとフウカ側の魔物を討ち取っているのかな。
んー。
やっぱり映像がないと
俺のイメージの限界と言うか乏しさを痛感せざるを得ない。
取り敢えずは様子見で。
既に戦端が開かれていたけどね。
ゴブ達をフウカ側に問題なく送り込めているので、一先ず一安心することに。
んで、こっち側こと
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