第028話 宝山
――ザッ ザッ ザッ
斜面を踏みしめる音。
ドーム内にある小山を登山中。
遠くから見た感じと現実とのギャップに少なからず傷心中でもある。
そんな中、敢えてモチベを上げるために昨日のダンバトで稼いだDPの足し算してみる。
・ 1~ 5戦: 5億8,844万8,600DP
・ 6~10戦: 6億2,375万4,900DP
・11~15戦: 5億5,921万5,200DP
・16~20戦: 3億4,537万1,500DP
(※賭物込みの合計)
合計は、21億1,679万0,200DP。
うんうん。
実に素晴らしい。
これだけ増えたらいくらでもゴブをショップで買えてしまう。
・ゴブリン 1体 10DP
即ち、
2億1,167万9,020体の爆誕。
いやいや、買わないからね。
そもそもいつでも幾らでも買えてしまうゴブ。
怖過ぎる。
そして何よりも勝手に増えいくゴブ。
恐ろし過ぎる。
購入要らずのゴブ。
家計に優し過ぎる。
ん?
微妙にニュアンスがズレて、三段落ちせず。
ガッカリ。
本来だったらお気に入りの魔物を購入して更なる戦力強化に邁進するはずだが、俺のショップ一覧には代わり映えのない標準ゴブのみの表示。
嫌過ぎる現実が嫌過ぎてガーンである。
取り敢えず見上げて、山頂を確認。
勾配がきつく、あともう少しが長いような気も。
ならばと逆に下を覗いてみる。
淡々と良く登って来れたなと感心するほどの
元々の地球での俺の身体能力では到底登れないレベル。
しかし今現在、意外に余裕もある。
息切れもなし。
クライミングの専用器具を装備していないのにも関わらずにだ。
改めて感じるステータスの偉大さに感謝をしつつ、ラストスパート。
――ダッ、ダッ、ダッ
「よっ、ほっ、はっと!」
最後は、出っ張った岩石を勢いよく蹴り上げ、山頂へ。
「よし、到着っ!」
うんうん。
風が気持ちが良い。
そして見える景色は――
画角が変わっただけのいつもの風景。
幻想的で綺麗だけどね。
新鮮さが足りないのが少々残念。
えーと。
変化あったかなー。
よっと。
早速、定期になりつつあるダンバトの順位確認。
登り始める前にも見たのだけど、つい気になってしまう。
リアルタイムで更新されていく順位。
ただ見るだけでも楽しいのだ。
そして表示された順位は――
➡1位 タオ・イエシキ 20戦 20勝 0敗 1階層 1,180BP
2位 ユウキ・ソウマ 6戦 6勝 0敗 37階層 570BP
3位 ミコト・コハル 5戦 5勝 0敗 40階層 490BP
・
・
・
1位である自分の順位に、ニンマリ。
そしてホッと一安心。
2位とはBPに差があるので短時間で抜かれないとは思うが、どうも気になる。
順位は上位に入れば、
正直現状の1位は、出来過ぎの棚ボタだと思っている。
維持する自信もないし、その気もない。
でももしかしら1位で居続けることができるかもと夢想し、頬が緩む。
そんな他力本願塗れの甘い思いが横切ったりもする。
どちらにても為るようにしか成らない現実。
順位表の項目は左から『順位・名前・勝敗数・階層・
因みにBPはダンバト毎にゲットでき、加算されていく。
・勝利: 50BP
・敗北: 1BP
・ボーナスポイント取得: 3BP
1位の俺は勝利数でBPを稼げているが、今回だけの手法。
特異な稼ぎ方をしたのだ。
セオリーは階層突破。
ボーナスポイントの対象である各階層突破毎に3BPが入ってくる。
掲示板を見る限り、それ狙いの多いこと。
今回は全て攻めなしの20戦なので、そこにおいてのポイントは、
残念過ぎるが、前提からそのような作戦だったので致し方なし。
今後上位を目指し維持していきたいのであれば、皆同様に階層突破を視野に戦略の練り直しが生じる。
しかしダンバトせずにこのまま前半戦を終了という手も。
既に罰則回避は出来たからね。
んー。
それに順位を上げて少しでも良い報酬をゲットしたい。
色々とニョキっと頭を出す欲に気持ちが揺れ動いてしまう。
悩みどころ。
そのうえ掲示板を見る限り、滅茶苦茶に警戒されてる俺。
タオ打倒を掲げている人達が集団化してるような気もしないでもない。
想像以上の勝ち星は嬉しいが、目立ち過ぎは良きも悪きも程々が丁度かな。
と言いつつも同じ状況になったら、繰り返すだろうなと思ってしまう。
勝利すること自体が純粋に気持ちが良いのだ。
ドーパミンがドバっとね。
あとは今後の立ち回りをどうするか。
ダンバトをするしないに関わらず、ほとぼりが冷めるまでは静かにするのがベスト。
要検討である。
それにそもそもここへは眺めに来た訳ではない。
なので大切なことではあるが、取り敢えず考え事は頭の片隅へ。
そして本来の目的のために、頂上を見回す。
んー!
どこか良き場所はー。
歩きながらも探す。
うんうん。
この大岩が良いかなー。
上が平で置き易そうである。
よっと。
リズム良く『ダン倉庫』から取り出したのは、木製の――
宝箱。
キラリと表面が光を反射。
ほー。
なんて素晴らしい。
艶感たっぷりの
幼稚園でお菓子の空箱を使って作った
一応先生のススメで折り紙の金色と銀色でキラキラ演出をした思い出が。
これが本物。
正真正銘の宝箱である。
イメージを超える佇まい。
因みにこの宝箱は今朝、ダンジョン向上委員会から送られたきたダンバト初日のデイリー報酬。
・1日目の参加報酬: 高級木製宝箱x 1個
・ 〃 対戦報酬: 〃 宝箱x20個
・ 〃 勝利報酬: 高級銅製宝箱x20個
なんかゲームっぽいけど。
モチベは確実に上昇中。
参加報酬は、1戦以上すれば1個ゲット。
対戦報酬は、20戦したので20個ゲット。
勝利報酬は、20勝したので20個ゲット。
宝箱は『ショップ』でも購入可能であるが、高級でない普通タイプしかない。
しかも高い。
・普通の木製宝箱 1個 50万DP
・ 銅製宝箱 1個 500万DP
・ 銀製宝箱 1個 1億DP
・ 金製宝箱 1個 50億DP
値段が高い理由は、中身が自動補填されるためだ。
・木製: 1日
・銅製: 2日
・銀製: 5日
・金製: 7日で
なので設置していれば元が取れると思いきや、そんなに甘くない。
自ダンジョンの宝箱は開けることが出来ない悲しい縛りが。
付け加え中身についてはダンジョンシステムがランダムで決めるので、何が何個入っているとか全く分からない。
そのようなことで購入を見送っていた宝箱が、ひょんなことから入手することに。
だからかもしれないが、かなり嬉しい。
中身は手に入らないが、外見的には申し分ない。
そんな幼少から夢見た宝箱をダン倉庫に仕舞っておくのは勿体無いと感じて思案していたところに目に映ったのが、この小山である。
ちょっとした閃きでしかなかったがあそこに飾ったらバエるかもと思い、その後は居ても立っても居られず、その勢いのままここへ。
我ながらなんとも短絡的なヤツだと思うが、置いてみると想像以上にしっくりき過ぎてビックリである。
ダンジョンに宝箱。
まさに
違和感は全くなく、最初からここにあったのではないかと錯覚するほどである。
そしてある程度満足できたので、残りの宝箱も次々と置いていく。
置き終わったら今度は趣向を凝らすために
それから不規則に浮遊しては消え、またフワッと現れる
うんうん。
素晴らしいね。
よし、完成。
本物の宝箱で、最高のオブジェの出来上がりである。
我ながら
光による演出効果もバッチリ。
宝箱の光沢感も更にアップ。
キラリからキラキラにグレードアップだ。
素敵過ぎる。
ふー。
スッキリ。
やるべきことをやり、晴れやかな気持ちになったので戻りますか。
ここを宝山と名付けようと心に決め、転移陣を幻想的な輝きが増した山頂へ設置して満足気に帰っていくのであった。
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