個人戦

第025話 開幕


 ――ピッコン♪


 電子音と共に――


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ダンジョン・メニューの更新

闘戯とうぎが開放されました

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 更新お知らせメッセージが表示。


 お!

 マジか。

 こう言う感じの始まりなのね。


 早速、開いて見てみると新たなに増設された『闘戯』が目に飛び込む。

 タップすると『ダンジョン戦(仮)』が選べるようで、他に選択肢がないのでそのまま更にタップ。


 すると新たな画面が表示され、そこには一覧3つが横並びに。

 左側の一覧は順位表のようだ。


 ほうほう。

 なるほどね。


 項目は、左から『順位・名前・勝敗数・階層数・BPバトル ポイント』となっている。

 因みに名前はアイコン画像付き。

 写真を撮った記憶はない。

 どう言うことだろうね。

 不思議だ。


 そしてまだ始まったばかりなので、


   ・  順位: 俺含め全員が同率1位

   ・ 勝敗数: 0戦0勝0敗

   ・獲得BP: 0BP


 項目が並ぶ上部には、『前半・後半・累計』の切替タブが。

 更にその上には、『前半戦残り:3日23時間55分34秒』のカウント表示。


 ほうほう。

 リアルタイムでダンバトの結果が反映されるようだ。

 その内、目まぐるしく順位が入れ替わっていくのだろうな。


 ん!

 ソート可能?


 んーと。

 昇順と降順ね。


 取り敢えず、各項目をソートしながら触れてみる。

 順位。

 オール1位なので変わらず。


 名前。

 知らない名前ばかり。

 それに幸せ一杯の顔の子はさぞかし恥ずかしいことだろう。お察し。

 でも俺のすまし顔に比べたら……、マシか。


 勝敗数。

 オール0なので順位と同じく変わらず。


 階層数。

 昇順をすると一番上あたまに――


 『タオ・イエシキ』が。


 あ!

 1階層だから先頭に。

 ヤバ。


 逆に降順をすると一番下けつに――


 『タオ・イエシキ』が。


 ああ。

 やってしまった。


 今更どうすることも出来ないが、これは由々しき事態。

 悪目立ち過ぎて、必要以上に狙われてしまう可能性が。

 ガーンである。


 1階層のみであることがバレるのは時間の問題だと思っていたが、即バレになるとは。


 因みに気になる対戦相手がいれば、アイコンか名前をタップすれば楕円型の吹き出しが表示され、『紹介文・直近20試合の戦闘スタイルと対戦記録』を見ることが。


 紹介文は、意気込みや挨拶コメントの記載ができるようで、現在はデフォルトの『宜しくお願いします』となっている。


 戦闘スタイルは、『攻・防・速・運』の項目があるレーダーチャートで、項目間のバランスや全体的な傾向を図形の形状や大小で把握可能。


 対戦記録は、『対戦日時・対戦相手・スコア・勝敗』の簡易一覧で、その勝敗には『圧勝・白星・辛勝・せき敗・黒星・ざん敗』の6つの分類が使われてるようだ。

 ん、引き分けは?


 少し疑問に感じつつも更にその下にある『宣戦申請』ボタンへ視線を移す。

 注釈の吹き出しによると小画面が表示されそこで対戦相手へ提示する条件決めができるようだ。

 問題がなければ最後に『送る』をタップして、申請完了に。


 なるほどね。

 取り敢えず申請までの流れは分かった。


 次は真ん中の一覧である。

 気にしないように敢えてスルーしていたが、ピッコンピッコンと色々と煩わしく点滅中。

 そこには宣戦の申請状況が。


 そして残念なことに、もう12件。

 お早いことで。


 そしてまた、1件増える。

 なんだかなー。


 普通だと初めてでつ不安だから開始直後は尻込みしたりするもんだと思っていたが、違うようだ。

 二の足を踏んだり、様子見をしたりと手を拱くこまねことなく俺に申請を出しているように感じる。


 んー。

 1階層のみが相手となれば、警戒心がなくなるのも至極当然か。

 

 逆の立場だったら俺も狙うしな。

 肩慣らしに丁度良いからね。


 あ、増えた。

 今度は、2件。

 好評だが、ちっとも嬉しくない。

 虚し過ぎるだけ。


 因みに右の一覧は、対戦履歴。

 まだ1戦もしてないから、真っ白。

 何もなし。


 改めて、賑やかに成ってしまった真ん中の一覧を眺める。


 はー。

 どうしたものか。


 取り敢えずタップして対戦内容を確認していく。


 うんうん。

 なるほどね。

 どれもこれも、『条件なし』。


 ダンバトを有利に運ぶためや相手を不利にするための縛りが、条件である。

 戦う上では非常に重要な要素にも関わらず条件を付けないのは、『好きにしてね』的な感じ。

 普通は考えられない。


 もしかしたら俺からの条件提示待ちの可能性はある。

 相手の出方を見極めてから、条件の再提示。

 だが可能性は極めて低いと思う。


 だって間違いなく、絶賛舐められ中だからだ。

 上から2番目は、


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戦いではなく、手合わせをお願いしたい

:条件はですが、タオさん側は気兼ねなく条件提示をして下さいね

:良い返事を待ってます

:一緒にダンバトを楽しみましょう


 条件1: なし

 条件2: なし

 賭物1: 50万DP

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 完全なる誘い水。

 だからこの上なく優しい。


 お、次は3件。


 因みに双方『条件なし』でダンバトが開戦した場合は、制限12時間以内に相手ダンジョンのダミーコア1個を先に破壊した方の勝利となる。

 時間内に決着が付かずタイムオーバーになってしまった場合は、より多くのポイントを獲得した方の勝利。

 加えダミーコアはショップで、33万DP。


 補足として提示条件数には上限がある。

 宣戦した側は、2個。

 受けた側は、3個。

 

 何度か遣り取りをして合意できた場合のみ、調整した日時での開戦となる。

 もし合意できなかった場合は、対戦が流れるだけ。

 罰則はどちらにも発生はしない。


 それと条件は選択範囲内からのチョイス。

 だから荒唐無稽こうとう むけいなことにはならない。多分だけどね。


 ん!

 お、5件。

 こんなに熱烈なアプローチを受けたことはないけど、全くもって

喜べない。


 只今、ムカムカ度、上昇中。


 んあ!

 そうだ。

 良いこと思い付いた。


 善は急げ。

 直ぐに館内放送でシロツキを呼び出し、一緒に入口ある地表へ。


 グッフフ。

 我ながら悪い笑みである。

 ちょっとした意趣返し。

 でも成功するか分からないけどね。

 心の底から首尾よく行く転がってくれることを祈るのみ。


 それで何をするかと言うと、入口の増設。

 今からまたと思うことなかれ。

 思い立ったが吉日である。

 

 んー、何個増やそう。

 今立っている盆地は長細い楕円型で、その中央に入口1号こと巨穴がある。

 

 因みに入口から3kmは、別入口の増設不可である。

 それ以上ならば問題なし。

 

 そしてうちのダンジョンことドームは半径60kmオーバー。

 余裕でおNewニューな入口を作ることができる。多分だけどね。

 

 盆地こと周囲の地形に合わせ、ここから両サイドに展開していきたいと思う。

 西方面へここから3km毎に入口2号と3号を。

 東方面へ同様に、4号と5号を。

 

 隣で周囲の警戒をしてくれてるシロツキに、俺の思い付きを相談してみることに。


 「タオ様、問題ありません。西から東まで一足飛びで行ける距離なので、現状とさして違いはありません」


 「お、マジか!それは凄い。ならー大丈夫そうだな」


 「お褒め頂くほどのことでは、……」


 「そんなことはーないと思うぞ」


 「いえいえ、未だ未だです。タオ様の足元にも届いておりません」


 ん!

 いやいや、十分凄いよ。

 そもそも俺からしたら、違いありまくりだから。

 直線で12kmを時間を掛けずに移動って、ヤバいからね。


 それに足元でなくて、俺の遥か上空にいますけどアナタ。

 戦力だけでも俺の30万倍のシロツキ。

 

 突っ込みどころ満載だが、取り敢えず大丈夫そうなので作業を開始することに。

 まずは入口を作るための場所を選ぶ。

 

 んーと。

 ほうほう。

 内部の領域ことドームの真上の地表だったら、どこでも選択可能なようだ。


 んー。

 デフォルトは2x2mだけど、変更する。


   ・  形: 円

   ・サイズ: 半径50m


 それではと『入口作成』を実行する。

 問題なく入口として成立している入口1号とほぼ同じ条件なので、心配せずに待つこと数秒。


 無事に審査通過。

 これで入口2号の完成である。

 そのあとは同じ手順で入口3~5号を作成していく。


 あとは入口周囲の領域拡張と勾配および周辺の整理である。

 と言うことでゴブ達も大量に動員して、手分けしてパッパッと終わらせていく。

 所謂、マンパワーでのゴリ押し。

 

 大量のDPを消費したが、有効活用できたので良しとする。

 皆に感謝を伝え、コアルームへ。


 これでダンジョンの入口が、5つに。

 取り敢えずこれにて準備完了である。


 反撃の狼煙のろしではないが、舐めプ然の同期達に一泡吹かせることができれば万々歳。

 どうなることやら。


 提示する条件と賭物は、


   条件1:勝利条件の変更 ダミーコア3個撃破

   条件2:敗北宣言有無 有効

   条件3:制限時間変更 1時間


   賭物1:50万 → 200万DP


 ダミーコア3個撃破は、時間稼ぎ。

 敗北宣言有りは、損切りできように。

 制限1時間は、最小時間。

 もっと短い方が良いのだが、それ未満の選択がないので致し方なし。


 賭物200DPは、おまけ。

 相手が嫌がらない額を設定しておいただけだ。

 

 この内容で問題ないなら、『10分後にお願いします』と返信していく。 

 こっちは、1階のみの底辺ダンジョンことゴブダンゴブリンダンジョンだ。

 失うものはない。


 ダメそうだったら、戦力を失う前に敗北宣言をすれば良いだけ。

 そのタイミングだけ、見間違わないようにすれば万事OKなはず。


 送ったのは、5人。

 そして即5人から承諾の通知が届く。


 館内放送でゴブ達にダンバトの通達。

 そのあとはソファーからモニター前のチェアーへ移動して開戦を待つ。


 上手くいくかは分からないが、これでもう中断はできない。

 確実に10分後開幕する初のダンバトに、当初よりはワクワク感有りのドキドキで胸が高鳴るのであった。

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