第014話 進化玉


 実はこのダンジョンのゴブの数は、20万を優に超えている。


 日課の救済ガチャ3連でゲットすることができるスポナー。

 俺の心境を他所よそにその効果でゴブ達を誕生し続け、


 日産7,000体越え。


 沢山誕生して、沢山お亡くなりに。

 南無である。


 それでも、着実に増えていってる現状。


 そんなに沢山いたらドームの中は、ゴブ過多で寿司詰め状態だと思うかも知れないが、専用の居住区などは別にあるのでそのような心配は無用である。

 なのでドームへ作業をしに来ているゴブが常に7~8万、多くはあるがそこまでにはならない。


 そんな中、俺の知らぬところでゴブ達は進化していた。

 見られるのが恥ずかしいのかなと邪推したりしてしまう。


 あんなに光り輝くならドーム内の近くにいたら気付きそうな気もする。

 もしかして通常進化は、派手さが皆無だったりしてね。

 そんなことは、流石にないか。


 本人も気付かず周囲から指摘されて自覚するとか。

 可能性は無きにしも非ず、だと思いたい。


 実際にゴブ達に聞いたら良いのだけどね。

 聞けないでいる。

 

 だって、嫌じゃん。

 俺に『見られたくなかったから』と言われたら。

 その内、追々に良きタイミングでと思い棚上げにしておく。


 色々と感じるところはあるが――


 俺の目の前には数舜前とは明らかに違う新たなゴブ6体が。


 進化の凄さを感じる。

 マジで。

 鳥肌が立ちっぱ。


 因みに地球上の進化は数百万年を掛けて緩やかに進む、非常に速くても数万年を必要とする。

 それで得れる変化は、気付くか気付かない程の小さな変化。

 たったそれだけでも非常に貴重であり凄いことなのだ。


 それがどうだろうか。

 瞬く間に変わってしまったのだ。


 色の変化は、少し濃くなった程度だが。

 体格の変わり幅が凄まじい。

 

 形相も整形20回分だろうか。

 それほどの変化なのだ。


 ヤバい。


 全てを作り替えたような。

 正に、神秘。


 いや、ちょっと違うか。

 奇跡と言った方が、ニュアンス的にピッタリかも。


 自分の体の状態が気になるのか、手をグッパーして確かめたりしている。


 取り敢えず『簡易鑑定』で、確認していく。


 種族は軒並み、ソルジャーからリーダーへ。

 まあ、あそこまで光って進化してなかったら詐欺である。


 メモっていた『進化玉』使用前の情報と見比べていく。


 ほうほう。

 どの子も凄い伸び率。


 えーと。

 6体の中で戦力が一番伸びたのが、このゴブかな。


 進化前、

-----simple Analyze-------------------------

【名前】 

【種族】 ハイ・ゴブリン・ソルジャー(♂)

【戦力】 648

---------------------------------------------------


 進化後、

-----simple Analyze-------------------------

【名前】 

【種族】 イエロー・ハイ・ゴブリン・リーダー(♂)

【戦力】 8,640

---------------------------------------------------


 概算で戦力が、13倍に。

 種族には亜種を示す『イエロー』が、追加されている。


 戦力だけならば、先程まで開催していた脳筋競技でも優勝が狙えるほどである。

 実際は戦闘に有用なスキルなどの諸々が揃ってないと難しいと思うけどね。


 それにしても進化のヤバさを痛感させられてしまう。

 無論、逆のヤバさも。


 ゴブリンでこれなのだ。

 他の強力な魔物の進化は、ゴブリンしか持っていない俺からは想像ができないほどの大化けをするに違いない。


 同期のマスター達も当然、進化玉を持っており、お気に入りの魔物に使っていることだろう。


 うーん。

 あまり想像したくないな。

 これって、戦力差が増々開いてない?


 不安になる。

 とても凄ーく。


 すぐさま、掲示板を開く。


 あ!

 その前にと。

 目の前で新たに得た肉体に感動している面々へ、席に戻るように伝える。


 次は自分達だと息巻いてスタンバイ中の脳筋達にも席へと促す。

 ガーンと肩を落とし戻る。


 その後ろ姿に罪悪感が沸くが、席に戻った途端、ポテチを食べて笑顔に。


 単純かよ。

 我慢できずに心の中で突っ込んでおく。


 そんなことよりも条件を絞り込んで『進化玉』関連をピックアップしていく。

 並行して信頼性の低い阿保コメントを弾きながら、見易いように整理。


 んー。

 それにしてもこの半日で、進化玉を使用しているマスターが多いこと。

 俺も同じ穴のむじなであるが。


 うーん。

 なるほど。


 更に読み漁る。


 んー。

 ほうほう。


 そんな感じか。

 新たな情報はこの先も出てくると思うけどね。

 一旦、ここまで。


 ふー。

 取り敢えず軽くだけど、理解できたかな。


 「……よかったー」

 

 ホッとしたためか独り言が大きくなってしまった。

 席に座って楽しそうに団欒だんらんしている面々が、反応する。


 「あ、ごめん。気にしないでー楽しんでてね」


 面々に声を掛け、安心させる。

 全く気にせずコーラにご満悦な脳筋もいるが。


 念のため情報をもう一度、精査する。


 うんうん。

 間違いないな。


 決して安心できないが、詰んでいないことは分かった。


 焦った。

 ほんと、めっちゃ焦ったよ。


 結論から言うと、どうも種族毎に進化玉の必要数が違うようで、同期達は四苦八苦しく はっくしているようだ。

 

 一番のお気に入りの魔物1体を進化させるか、その次の推しである魔物数体を進化させるべきか、検討中の連中が多かった。


 中にはダンバトに備え、中堅どころに進化玉を使った方が良いと唱えている者も。


 目に付いた魔物の進化玉必要数は、


   ・バトルオーガ    5個

   ・ワイバーン     6個

   ・ドランミノタウロス 6個

   ・バトルベアー    4個

   ・グリフォン     5個

   ・イビルリッチ    9個

   ・サラマンダー    4個

   ・ムーンウルフ    8個

   ・キラースパイダー  7個

   ・ホーリースケルトン 8個


 うんうん。

 どの魔物でもゴブ達を纏めてワンパンである。


 ノーダメで負けそう。

 正直いって羨まし過ぎる。


 他にも色々な魔物がコメント欄を賑わしているが、見過ぎると精神衛生上よろしくないので――


 掲示板を閉じる。


 それに進化が進むごとに進化玉必要数が増えると思っていたが違うようだ。

 正確な情報かどうか分からないが。


 やってみれば直ぐに判明することである。

 それよりも進化玉1個で進化させている情報が、1つもない。


 同期達が試していた魔物の1進化に必要なの数は、4~9個。

 それと比較するとゴブはなんとお手軽なことだろう。


 でもまあ、費用対効果ことダンジョンの戦力強化に繋がるかと言えば、Yesイエスとは断言できない。

 ゴブ一択の俺には、そもそも他への道はないが。


 だから問答する必要もない。

 極めて単純明快たんじゅん めいかい

 前進するのみである。


 よし、脳筋組+α秀才ゴブをやろう。


 「お待たせー、再開するよ」


 呼んだら直ぐに来て、横1列に並ぶ。

 相当、進化玉を欲していたようだ。


 後半組の内訳は、1次進化済み1体、2次進化済み7体。


 まず景気付けに、ステ強化玉の『知力』を4個ずつあげることに。

 進化後に頭が悪過ぎるようなヘマをして、早々にお亡くなりになるようなことは避けたい。


 まあ大会で上位に入るほどだから、そこまで心配はしてないけどね。


 次はステ強化玉の『巧力』。

 効果は、巧力+10。

 少しでも武器や魔法などの扱いが上手になりますようにと願い込めて4個ずつあげる。


 そらから前半組と同様にステータス項目の『体力・魔力・筋力・耐力・俊力』の5つから秀でた3項目を選ばせ、それぞれ400アップするようにステ強化玉を渡す。


 そして、『物攻・物防・魔攻・魔防』の4項目が30アップするように。

 最後に、『物貫・魔貫』の2項目が20アップするように。


 これで、下準備完了かな。


 進化玉を取り出し、『強くなってね』と願いを込めながら渡していく。

 ゴブ達は、各々のタイミングで吸収。


 次々と光に包まれていく。

 そして同様に光で部屋が、いっぱいに。


 ん!

 そろそろかな。

 俺は用意したサングラスを装着。


 「ふっふふ」


 同じてつは踏まないのが、モットーです。

 キリッ。


 おお!

 凄っ。

 色とりどり光の帯まで見える。

 

 うんうん。

 綺麗だ。

 最高。


 サングラス、サンクス。


 そして先程は、目にダメージを負い見れなかったクライマックスへ。


 溢れる光量がマックスになり、弾け、真っ白に。













 あっ、うー。

 目がー、目がー。


 変わらずチカチカするのであった。

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