第006話 褒賞と報酬


 『えー、お待たせ致しました。精査が終わり、褒賞が確定しましたので、発表を始めたいと思います。


 まず初めに、当褒賞はダンジョン・システムにより、条件に一致した者達が抽出されております。私も含め、女神の介入はございません。悪しからず。


 では、1つ目、『魔物の種族数ランキング』。

   ・該当:支配下の魔物が3種族以上

   ・報酬:1~10位

       ①5万DP

       ②スキルガチャ10連チケットx1枚

       ③魔物ガチャ10連チケットx2枚

       ④進化玉x3個

       ⑤ダンジョン階層増築キットx2個

       ⑥ダンジョン階層拡張キットx2個


      :11~100位

       ①2万DP

       ②スキルガチャ単発チケットx5枚

       ③魔物ガチャ10連チケットx1枚

       ④進化玉x2個

       ⑤ダンジョン階層増築キットx1個

       ⑥ダンジョン階層拡張キットx1個

        

      :101位~

       ①1万DP

       ②スキルガチャ単発チケットx2枚

       ③魔物ガチャ単発チケットx5枚

       ④進化玉x1個

        

   (※DP:ダンジョンポイント)


 報酬は個々の『ダンメセ』へ送られます。既読をトリガーとして自動的に受け取ることとなり、アイテム類は『ダン倉庫』へ送られます。悪しからず』


 えっ、マジで!

 俺、該当しないじゃん。


 モニター上に、報酬を受け取った人達の嬉しさ溢れるコメントが一気に流れる。


 :やったねーガチャチケット、げっと!

 :わーい、やったっ

 :くーっ、惜しくも11位

 :階層増築、何気に嬉しい

 :早速、ガチャります(キリッ)


 当然、ゴブリンの1種族しかいない俺には、報酬が届くことはない。


 愕然がくぜんとする俺を置き去りにしたまま、続けられる褒賞発表。


 2つ目、『魔物の総戦力ランキング』。

 該当は、総戦力評価G以上。


 3つ目、『ダンジョンの階層数ランキング』。

 該当は、3階層以上。


 報酬内容は、ほとんど同じで微妙に個数が違うようだ。

 そして依然いぜんとして、俺の元には何も届かない。


 4つ目、『累積DPランキング』。

 該当は、100万DP以上。


 お、これは!

 ちょっと自信があるかも。


 透かさずダンジョン・メニューを開き、購入履歴も含め素早く暗算していく。


 うっ、んー、微妙ー。

 99万とちょい。


 でも、俺の暗算が間違ってるかもしれない。


 精神的に追い込まれている状況下だ。

 平時と同様にこなす自信は、俺にはない。


 自分の演算ミスを願う。


 間違っててくれー、お願い。


 頼む、本当に!


 そして、来てくれ!


 マジで!


 皆に報酬が届いたのだろう、モニター上のコメントが沸く。


 俺の所には、何も届かず。

 これも、ダメなのか。


 諦めかけたその時――


 ――ピローン♪


 ん!

 脳内で着信音が鳴る。


 なんだ!


 意味が解からず、数舜ほど思考が止るが――


 ダンジョン・メニューの『ダンメセ』を開き、確認。


 おお。

 新着メッセ。


 ダンマス・チャンネルからだ。

 やったー。

 やっほい。


 一瞬で元気になる俺。

 透かさず、タップ。


------message------------------------------------------

 この度の『累積DPランキング』で100万DP未満のため該当外となりましたが、近似値により参加賞が送られます。


 以下の報酬を受け取り下さい。

   ・魔物ガチャチケット単発チケットx1枚


 尚、当メッセージへの返信は出来ません。

------------------------------------------------------------


 ん!


 ーっ。


 んーっ。


 うーぃーんぅーぐぐぐぐっ。


 あやうく叫ぶところだった。

 咄嗟とっさに口元を腕で押さえ、回避。


 取り敢えず自分を褒めたい。

 セーフ。


 でもここまで来たら叫んでも良いかもしれないが、同期達に醜態しゅうたいさらしたくないわずかばかりの羞恥心がブレーキとして働いたようだ。


 それにしても、そんな報酬――


 いらんよ。

 マジで。


 せめてもの慰めとして今回は俺同様に該当しなかった人達もいるようで、不平不満コメントが流れていることくらいだ。


 5つ目、『ダンジョン攻略難易度ランキング』。

 該当は、評価G以上。


 ゴブリンだけでは評価Gには達しないようで、参加賞として先程と同様の魔物ガチャ単発チケットx1枚が届く。


 6つ目、『ダンジョン準備期間、頑張ったで賞』。

 該当は、全員が対象。


 やっとヒットした報酬は、1万DPと魔物ガチャ10連チケットx1枚。


 因みに、これが最後の褒賞だったようだ。


 俺が手に入れたのは、

   ・1万DP

   ・魔物ガチャ単発チケットx2枚

   ・魔物ガチャ10連チケットx1枚


 なんだ、これ。


 呆然としていても目の前のモニターが、自然と視界に入り込む。

 そこには、同期達のテンション爆上がりコメントが流れている。


 :やべー、俺、更に強くなっちゃうわっ

 :また神引きしてしまうかも

 :ガチャ、最高ーっ!

 :今度はー可愛い系の魔物が当たりますよーに


 現状を打開できる何かがもしかしたらゲットできるかもと夢見てしまっていた分、精神的ダメージが半端ない。


 考えてもネガティブなことしか思い浮かばず、暗い未来だけ。

 良くないな。


 ポジティブに切り替えようと思うが、頭が付いて来ない。


 んー。

 今日はもうダメ。


 意気消沈してポンコツに為り掛けている俺。

 こう言う時は現実逃避が一番で、寝るに限る。


 モニターでは、女神オリティアが締めの言葉を述べ始め、終わりを告げようとしている。


 んー、本日は終わり。


 ベットまで行く気になれない。

 そのままソファーで寝るかと体勢を横へ変える。


 女神の声を聴きながらお腹が冷えないように『アイテムボックス』からタオルケットを取り出し、モゾモゾと寝心地の良い状態へ。


 脳も相当にいた様で、まぶたを閉じると直ぐに意識が遠のいていくのが分かる。


 今日まで、頑張ったよ。

 本当に。


 自分だけも褒めてあげよう。

 そして、明日からまた頑張ろう。




     ◆

     ◆

     ◆




 コアルームでは、モニターから依然として女神の声が流れている。

 心が躍るほどの透き通る声だが、残念なことに聞き手は誰もいない。


 なぜならば、先程まで苦悩に満ちた表情だった部屋の主は、ソファーで既に規則正しく寝息をたて始めているからだ。


 そんな中、佳境ではあるが、運命の流れに少しばかりの変化をもたらすために女神オリティアの話は続くのであった。




 『えー、これでダンジョン準備期間終了に伴う褒賞発表は終わります。手に入れた報酬を有効活用し更なるダンジョン向上に励まれることを願っております。


 因みに、これからの皆さまのため、ダンジョン向上委員会が様々なイベントと報酬を用意しておりますので、その際は奮って参加下さい。


 最後に、褒賞とは別に特殊ミッションが有り、後ほど該当者には先程と同様の仕組みで報酬が送られますので、受け取り下さい。


 それでは、皆さまの健闘と活躍、そして多幸ならんことを祈り、終わりたいと思います。

 次回、会えることを期待しております』

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