第004話 卵のお世話
うーん。
ペシペシ。
やっぱり、また大きくなってる。
今いるこの部屋は、ドームの側面に穴を掘ってもらって作った卵保管室。
同様の部屋が5つある。
そして眼前には、綺麗に陳列された橙色の卵が200個ほど。
小さいものは50cmほど。
大きいのは4mを超える。
サイズ毎に部屋分けしたかったが、それぞれで成長速度の違いが著しく早々に断念した。
因みに、『簡易鑑定』では、
-----Simple Analyze-------------------------
【名前】
【種族】???(魔物の卵)
【戦力】???
---------------------------------------------------
種族・戦力ともにも分からないが、魔物の卵であることは確かなようだ。
因みに、ドーム拡張中に偶に穴と遭遇することがあり、その中に10~20個の卵が生み捨てられているらしい。
最初に発見した10個をゴブ達が嬉しそうに各々両手で抱えながら『食べて良いか』と確認してきた時は、大きさに圧倒されたこともあり、良く考えもしないままにOKを出してしまった。
その後で気になり、ダンジョン・メニューの『ヘルプ』で調べたところ、魔力を流して与えることが出来れば、テイム可能らしいことが分かった。
それからは、発見したらまず魔力を与え、吸収するか否かの確認。
可ならば、保管庫へ。
そうではないものは、ゴブ達のお腹の中へ。
合掌である。
なので『ヘルプ』調べを全面的に信じるならば、ここにある卵の全てはテイム可能個体となるはずである。
まだ、1つも
戦力の乏しい我がダンジョンの救世主とまではいかなくとも少しでも足しになってくれればと、それを切に願い毎日、魔力を与え続けている。
付け加え俺自身の『魔力操作』の訓練にもなっている。
更に魔力量が少しずつだが増えて一石三鳥。
ダンジョンマスターとしては全くもって順調ではないが、出来ること増やす努力を忘れないよう心掛け、少しでも生存確率を上げなくては。
――ピローン♪
ん!
脳内で着信音が鳴る。
新着メッセージのお知らせが届いたようだ。
存在を強調する新着のポップが揺れ動く、ダンジョン・メニューの『ダンメセ』を開き、確認。
友達登録してあるユノカの顔写真にお馴染みの赤丸通知バッチが。
そのまま、タップして遣り取りを開始。
------auto Chat------------------------------------------
【ユノカ】今、何してる?
【タオ】卵に餌を
【ユノカ】うっふふw。例のやつだねー
【タオ】育ててる感があるから意外に楽しいよ
【ユニカ】孵化した?
【タオ】まだー
【ユノカ】そうなんだー残念だね。それにいつもやってるんでしょ、それ。大変じゃない?
【タオ】1人なら魔力提供が追い付かないけど、ゴブ達にも手伝ってもらってるからね
【ユノカ】なるほど。想像以上にゴブ優秀w
【タオ】んで、そっちは?
【ユノカ】今さっき、入口を開放したところ。絶賛、ドギマギ中
【タオ】ドギマギ中ってw それより、ダンジョン開放、おめ
【ユノカ】緊張するー
【タオ】斥候は出した?
【ユノカ】もち、タオに教えてもらった通りにやってる
【タオ】入口周辺のダンジョン化も?
【ユノカ】もち。入口周辺に即カメラ設置してモニタで見れるようにしたよ
【タオ】なら、あとは待ちだな
【ユノカ】うんうん
【タオ】因みに、今、何階層?
【ユノカ】14階層、エッヘン
【タオ】マジかー。凄いなー、それ
【ユノカ】タオは、今だ1階層のみでしょー。それと何も準備せず、初日速攻ダンジョン開放だもんねー。ある意味、勇者超えだと思うわ
【タオ】勇者と言うより、蛮勇だな
【ユノカ】そうかもしれないけどーw なんだかんだ言って、タオは生き抜いてるからねー
【タオ】あ、そうだ。パワーレベリング、忘れるなよ
【ユノカ】強くなって、私がタオを守ってあげるよー。エッヘヘ
【タオ】おう、それはゴブ達より遥かに安心できるな。それ、マジで頼む
【ユノカ】あ、ウサギさん? っふふ、顔が可愛くないけどーw お客さんが来たみたいだから、頑張ってみるよ。それじゃーまたねー
【タオ】了解。ガンバ
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忘れず最後に、声援を送りユノカとのチャットを終了する。
映像も音声も繋がってないが、有用なチャット。
声に出しても良いのだが、頭の中で意識するだけで自動で書き込んでくれる便利機能付きである。
同じ中学校出身のユノカ。
小学校低学年の頃は、良く一緒に遊んでいたから、ギリ幼馴染と言って良いかもしれないが、お互い成長するにつれて同性と遊ぶようになり自然と疎遠に。
それが同じ高校に進み異世界召喚に巻き込まれ、それも同じダンジョンマスターになってしまったことを契機に再び連絡を取り合うようになった。
他に知り合いもいるが、特段の仲ではない。
親友と呼べる者達は他校への進学だったこともあり、本性をある程度知っていて遠慮なく話せるユノカからの連絡は有り難い。
与えられたダンジョン作成期間は、2カ月間。
あと1週間でその期限である。
『ダンメセ』のメッセンジャー機能には、個人やグループでの遣り取りも出来るが、誰でも自由に書き込める掲示板も用意され、ここ数日間でユノカ同様にダンジョン解放へ踏み切った者達が増えているのが
因みに、期限を過ぎると強制的に入口が解放されるようだ。
俺の場合は、初日、自暴自棄ほどではないが、精神が不安になってしまった結果、無性に外の空気を吸いたくなり、何度も表示される注意喚起のメッセージを無視して解放する愚行を冒す。
そのような行為をしてしまったヤツは掲示板やユノカの話からでは、俺以外は居ないようだ。
やってしまったことは致し方がないが、空気を吸い終わり、正気に戻った俺の慌てふためきようは、黒歴史の1ページとして深く己に刻むこととなる。
唯一の救いは、誰にも見られていなかったことかな。
思い出したくもない過去を思い出し身震いしてしまう。
そんなことよりも、卵の面倒である。
晩御飯はカップ麺のきつねうどんにしようかなと思いを馳せながら、『大きくなーれ、強くなーれ』と魔力を与えていく。
もうすぐ夕方。
そして、残り1部屋。
まだ終わらないが、あともう少しである。
お腹も減って来たし、ユノカに連絡して上手に対処できたのかも聞きたいので、ここからは魔力回復具合ギリギリでピッチを上げ残りの卵達に魔力を与えていくのであった。
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