第003話 回想 ガチャ*


 ダンジョン・メニューには『ガチャ』という項目があり、それをタップすると更に分岐がある。


   ・スキルガチャ

   ・魔物ガチャ


 どちらのガチャも専用のチケットでガチャることができる。


 今現在はチケットがないためガチャることは出来ないが、転移直後には女神から貰ったチケットがあったので、即、回すことができた。


  スキルガチャ10連チケット x2枚


 最初の10連目は、

   ・(N)筋力+10

   ・(N)魔力+10

   ・(N)体力+20

   ・(SSR)魔力操作

   ・(N)耐力+10

   ・(N)筋力+30

   ・(N)魔防+10

   ・(N)物防+10

   ・(N)俊力+20

   ・(N)魔力+10


 次の20連目は、

   ・(N)体力+20

   ・(N)耐力+30

   ・(N)魔防+10

   ・(N)魔攻+10

   ・(N)魔力+10

   ・(N)魔力+30

   ・(N)筋力+10

   ・(SSR)魔力操作

   ・(R)知力+10

   ・(N)物攻+10


 (※N:ノーマル、R:レア、SR:スーパー・レア)

 (※SSR:スーパー・スペシャル・レア)


 率直な感想は、ガーンでした。


 女神からは、10連で2~4個ほどスキルが出るだろうと聞いていたので呆然ぼうぜんしかない。


 何度見ても1個。


 それも被りでもう1個。


 所謂、爆死。


 知り合いからのガチャ結果報告を受けて、自分だけが爆死してしまった事実に今度は唖然あぜん


 精神的ダメージが著しく思考停止することに。


 そして意識を取り戻し、速やかにダンジョン・メニューから『サポートセンター』への猛烈な抗議。


 恥も外聞もない。

 だって、これからの俺の生死に関わることだから。

 諦めず、何度も何度もした。


 そうして得た、泣きの10連チケット。


 結果は、

   ・(N)体力+20

   ・(SSR)魔力操作

   ・(N)筋力+30

   ・(N)耐力+10

   ・(N)魔力+10

   ・(R)知力+10

   ・(N)魔力+20

   ・(N)魔防+10

   ・(SR)幸運+10

   ・(SSExR)ショップ改(ダンジョン・メニュー)


 (※SSExR:スパー・スペシャル・エクストラ・レア)


 目をパチパチさせて見ても爆死。


 愕然がくぜん


 辛過ぎる現実に自然と体が震える。


 意識を手放すことなく運営に懇願したが、これ以上は公平性を著しく欠くため同情の余地はあるが無理だと拒絶されてしまった。

 イベント報酬・条件達成報酬・特典でもガチャチケットをゲットできるので、残念ながらそれまで待つしかないとのこと。


 まあ、それまでに俺が生きていればの話である。

 初心者に優しい世界であることを願うが、現実は想像以上に厳しいと相場が決まっている。


 考えれば考えるほど、不安が募っていく。


 結果、30連ほど回して、スキルは『魔力操作』が3個。

 ダンジョン・メニューの機能である『ショップ』機能向上パッチの『ショップ改』。

 それと外れ枠の各ステータス項目のアップ。


 その時のステータスが、


-----status-----------------------------------

【名前】 太桜たお 己己己己いえしき

【種族】 人族(ノーマル、♂)

【年齢】 15歳

【位階】 Lv.1


【体力】 140 → 200

【魔力】 100 → 190

【筋力】 130 → 210

【耐力】 120 → 170

俊力しゅん】 150 → 170


たく力】 190

【知力】 160 → 180


【幸運】  10 →  20


物攻物理・攻撃力】 0 → 10

物防物理・防御力】 0 → 10

魔攻魔力・攻撃力】 0 → 10

魔防魔力・防御力】 0 → 30


物貫物理・貫通力】 0

魔貫魔力・貫通力】 0


【スキル】ダンジョン・メニュー(Up‼)、

     言語理解、簡易鑑定、アイテムボックス、

     魔力操作Lv.20(New‼)


【称号】ダンジョンマスター

------------------------------------------------


 召喚特典である『言語理解』・『簡易鑑定』・『アイテムボックス』についても勇者組同様に当然、ダンマス側も貰えている。


 女神ティナカレの話を信じるならば、勇者組との違いは、称号が『勇者』か『ダンジョンマスター』くらいのようだ。


 無論、個々の細かなステータス差はあるので、足りないところは各々で自力で鍛えるなり、ガチャってスキルやステータスをゲットしてくれとのこと。


 取り敢えず、気になる項目をタップしていく。


------------------------------------------------

【ダンジョン・メニュー】

・ダンジョンマスター専用の以下メニューが使用可能になる

  →ヘルプ

  →サポートセンター

  →ガチャ

  →ショップ

  →ダン作成

  →ダン倉庫

  →ダンマップ

  →ダンメセ

------------------------------------------------

【魔力操作】

・魔力の操作が上手になる

------------------------------------------------


 ふむふむ。

 なるほど、なるほど。

 概要が表示されるようだ。


 魔力操作は3個ほど手に入れた訳で、1個目でスキルが生え、それ以上の被りはレベルが10毎アップ的な感じかな。


 被りが無駄になってなかったのが、せめてもの救いかもしれない。


 因みに、自分を『簡易鑑定』すると、


-----simple Analyze-------------------------

【名前】 太桜たお 己己己己いえしき

【種族】 人族(ノーマル、♂)

【戦力】 66 → 71

---------------------------------------------------


 名前・種族・戦力の3項目のみのシンプル表示である。


 『戦力』はステータスの総合評価値らしく、スキルや称号は含まないようだ。

 なので女神からの注意喚起で、『戦力が高いから自分の方が強い』と勘違いすると痛い目を見るから気を付けるようにとのこと。


 因みに、召喚時の330名の『戦力』は、60前後。

 似たり寄ったりだ。


 取り敢えず、スキルガチャで『戦力』が71に。

 この戦力アップでどれほど強化されるか分からないが、普通に考えて展望は暗い。


 誰もが欲するだろうスキルを『魔力操作』のみしか手に入れることが出来なかった

惨憺さんたんたる結果。


 惨敗したこのような状況では、冷静になるまで時間を置くなり、後日にして間隔を空けるのが正しい対処の仕方だと思うが、その時の俺は間を置かず衝動のままにもう1つのガチャへ。


  魔物ガチャ10連チケット x3枚


 最初の10連目、

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx5

   ・(N)ゴブリン

   ・(SR)ゴブリンx100

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx3

   ・(N)ゴブリン

   ・(SR)ゴブリンx70


 次の20連目、

   ・(R)ゴブリンx7

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx3

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx3

   ・(R)ゴブリンx5

   ・(N)ゴブリン


 最後の30連目、

   ・(N)ゴブリン

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx3

   ・(N)ゴブリン

   ・(SR)ゴブリンx100

   ・(N)ゴブリン

   ・(R)ゴブリンx3

   ・(N)ゴブリン

   ・(SSR)ゴブリン・スポナー(10体/1h)

   ・(N)ゴブリン


 この結果に俺は震え、そのままの勢いで再び『サポートセンター』に。


 その時の遣り取りが、


-----------------------------------------------

 ――トゥルルン♪、トゥルルン♪、トゥルッ


 『はい、はーい、魔物ガチャ・サポートセンター・トラブル担当の女神カノンでーす』


 「実は、魔物ガチャでトラブってしまって」


 『ん? うーーん? あ、あれ?』


 「ん、どうしました?」


 『なぜか聞いたことがある声なんだけど、あれ?』


 「あ、それ、いまさっき、カノンさんにスキルガチャ対応でお世話になったタオです」


 『おー、どおりで、聞き覚えが。でもー』


 「でも?」


 『ここサポートセンターって、なかなか繋がらないはずなんだけどー』


 「えっ、そうなんですか?」


 『変なヤツが多いからー、特に勇者とかね。


 だから、主観ではなく、客観的に困難な状況の人しか繋がらない仕様になってるんだよね。条件厳しいはずなんだけどなー。


 あ、ごめんごめん。話それちゃったね。んで、タオ君は魔物ガチャだったよね?』


 「はい、そうなんですよね」


 『んーと、ちょっと待ってねー。見てみるから』


 ――ルンッ、ルンルン♪

 ――ルンッルンッ、ルン♪


 『はーい、確認したよ。ん、でもー見方によっては、良い感じに見れなくもない?』


 「いやいや、ないですっ!有り得ないですってっ」


 『だ、だよね。冗談、冗談だよー。っふふ』


 「ゴブリン一択いったくは、キツ過ぎっ」 


 『でもー覗いた感じ、バグとかの不具合はシステム的に一切生じていないんだよねー。ん、あれ、タオ君の『幸運』があがってる?もしかしてこれが影響したのかなー』


 「いやいや、『幸運』値が上昇して、ゴブリンじゃー、幸運詐欺じゃん」


 『まーそうだけど。でも変な個所がないんだよねー。だから、タオ君がゴブリンに好かれている? のが原因なのかなー』


 「いやいや、好かれるも何も、ゴブリンとは一度も会ったことないですってっ。無理くり、理由をこじ付けてません? 取り敢えず、もう一度ガチャらして下さいよ」


 『んー、10連ガチャは難しいかなー』


 「えっ、マジで! それは、いくら何でもー鬼畜縛り過ぎじゃー。ゴブリンじゃー戦えないし、イメージ的に穴掘り要員なんですけどっ」


 『いや、待って、どうどう。落ち着いてー、タオ君。10連は無理だけど。単発はできるから』


 「えっ!」


 『言葉足らずで不安にさせちゃったね。えーとですねー。今回のタオ君のガチャ結果は、サポート対象条件に含まれているので、それに則った補償を受け取ることができるから安心してね』


 「おっマジか!取り敢えず、助かったのか? えっと、補償内容は?」

 

 『えー、発表します。レア度ノーマルが排除された魔物救済ガチャ単発チケット、3枚ー。パチパチッ』


 「……」


 『あれれ? タオ君、聞いてますかー。反応ないですよー』


 「ゴブリンが出てしまう……未来しか想像できないだが」


 『そんなことですかー。うっふふ。大丈夫ですよ。救済ガチャなので、例え今から3回ガチャってゴブリンしか出なくてもー1日ほど置いて再度3回まわせる画期的な神仕様ですよ。取り敢えず、タオ君、引いてみましょうよ』


 「えっ! 今、ですか?」


 『ですです。って言うでしょ。いざ尋常に勝負、勝負っ』


 「楽しんでません。でも引かない選択は無いし、乗せられるのはしゃくだけど、回しますね。えーと、おっ、新たに『魔物救済ガチャ』ボタンが」


 『ですです』


 「それじゃーいきますよっ! 刮目して見よっ! 単発1回目、おりゃっ」


   ・(R)ゴブリンx7


 『ありゃっ、でも、ファイトっ! まだあと2回っ』


 「うー、あーぁぁぁあっ、単発2回目、りゃぁーっ」


   ・(SR)ゴブリンx100


 『マジかっ。タオ君ー、ちょっと深呼吸しようー。今までのは、前振りよ。最後が良ければ、万事OK』


 「ふー、ふー。ですね。最後が良ければ」


 『うんうん。がんばれー』


 「俺のこの指に、全ての運よ集まれっ! 周りにある全ての運も。そして、女神カノンの運も全て、集まれっ『えっ! ちょっと、それはーっ』うーっ、あーっ、3回目だーっ。てぃあーっ」


   ・(SSR)ゴブリン・スポナー(7体/1h)


 『……』


 「……、ひど」


 『いやー、なんていうか、最後はビックリしたけど、安定の逆引き? ある意味、凄いし、記憶に残る戦いだったかなー。でも明日、また3回引けるからラッキー感もあったり』


 「女神カノンの運を使ってもダメじゃん。それにスポナーの性能、若干落ちてるし」


 『えっ! わたし、私の所為? えーそれは、酷いよー。なぜか完全にタメ口になってるしー』


 「俺は、今から女神に敬語は使わない。決めたっ」


 『っふふ。そっちのタオ君の方が素敵かも。今日は、久々に面白いものが見れたので、私はラッキーだったのかな。うんうん。諦めずに頑張ってね。それじゃーいずれどこかで、まったねー』


 「あっちょっ、言いたいことがっ」


 ――ツーツー、ツーツー、プチッ


-----------------------------------------------


 まあ、そのような経緯があって、それから毎日3回、この時間帯にガチャってる。


 ボチボチ、やりますか。


 緊張はない。

 少しばかりの期待がある程度。

 肩の力は、程良い感じで抜けている。


 それでは、本日の救済ガチャ3連、いざ尋常に勝負。 


 『単発』ではなく、『3連』ボタンをタップ。


 そして、当初に比べ豪華になったガチャ演出がスタート。


 気合いの入ったミニスライム3体がピョンピョン跳ねながら登場。


 姿は、真っ白な大福餅のようなフォルムで可愛い。


 勇ましい姿ではないが、『オイラ達がしっかりとゲットしてくるから、安心して待ってろー』的な力強い眼光がキラリ。


 当然、演出を盛り上げるためのBGMもあり、期待感が少々上昇。


 風がないのになびくマントを背に、言ってはいないが『いってくるぜ!』とキザな言葉を並べてからの大ジャンプ。


 瞬く間に、キランと3つの星となる。


 そして、ドクンドクンと脈打ちながら急速に輝きを増して、大爆発。


 そして、硝煙が薄れていく中、シュタッと降り立つミニスラ3体。


 ズタボロではあるが、みな勝ち誇った顔。

 おそらくは、想像を絶するほどの戦いが繰り広げられていたのだろう。


 そんな満身創痍のミニスラ達の頭上にはおのれ以上のサイズのプラカードが。


 勝ち取って来た成果である。


 それを左から順にリズムに合わせてオープンされていく。

















   ・(R)ゴブリンx5

   ・(SR)ゴブリンx60

   ・(R)ゴブリンx3



 本日も無事、新たなゴブリンを入手することに成功したのであった。



∝∝∝MEMO∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝∝

(1)ダンジョンマスターの称号を得ることにより、『ダンジョン・メニュー』が生える。因みに、勇者なら『勇者・メニュー』に。


(2)召喚特典(言語理解・簡易鑑定・アイテムボックス)は、異世界召喚された人全てが対象。

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