4日目昼? また、壊れる

 眩暈と共に、締め付けられるような頭痛に襲われ、僕はその痛みの先を反射的に指で押した。

 甲高く、楽器のように響く反響音。

 少し前から聞こえていた『あの音』だ。

 最初は耳鳴りのようなものだと思っていたが、勘違いじゃない。今、この瞬間確実に鳴った

 ものだ。

 目を開けると、セッカが驚いたような表情をしていた。

 恐らく誰がどう見ても、『驚いた』という表現をするであろう目の開き方で、僕を見ていた。

 彼女は、知っているのか?

 この音の正体を、この音の存在を。

 僕は、隣にいるセッカさんに伝えようと口を動かし──パキ

「     」

 ……声が、出なかった。

「……そっか。もうなんだ」

 いや、違う。自分の声が認識できないのだ。

 僕には、自分の声が聞こえなかった。

 だが、彼女は反応して僕の声に反応し、僕を視てきた。

 彼女の名前を発するために、喉を震わせ、音を発する行為は正常に機能しているのだ。

 なら、別の手段で話すことにしよう。

 ──セッカさん。聞こえますか。

 彼女は、ゆっくりと頷いた。

 僕の心理は聞こえているようで何よりだ。

 ──ピシ

「    ?」

 ただ、今度は音が認識できなくなった。

 い・お・え・う……「聞こえる?」か。

 はぁ……頭が痛いなぁ……今日は天気がいいのに。

「     」

 今、そこを考えるの?って感じの顔をされてしまった。

 ──パキン

 ただ、そんな彼女の呆れ顔にも、安堵するようにも見える表情が、暗転する前に見えた最後の視界だった。

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