第9話 一旦いい感じ

翌日。

「喜咲、今日遊びに行かない」

「うん。いいよハナちゃん」

おー。うまくやったのか花野は。少し無理があるように思えたが。

いったい何があったのだろうか。

まあ仲直りしたなら良しとしよう。

「お、花野、仲直りしたんだな。まああんだけ思い詰めてたしよかったな」

あ、佐野、こいつ。

そして佐野はボコられた。


「じゃあ、今日は一緒に帰れないから」

「おう、楽しんできてな」

そうして俺は鈴木と別れた。たまたま佐野も部活がなかったから途中まで一緒に帰ることにした。

「おいおい、すっかり夫婦みたいじゃねえかよ」

「うるせえな、別にそんなんじゃねえよ」

ああ、そういう関係ではない。そうなろうと思うこと自体を俺は避けている。

「それにしてもマンション同じなのによくもまあ小学校と中学校違かったよな」

「ああ、なんでだろうな。あんましないよな」

良かった。違くて。


「ただいまー」

「お帰り、お兄ちゃん」

「アイス買ってきといたからな」

「わー、ありがとうお兄ちゃん」

そして俺は自室に入る。

バックをかけて制服から部屋着に着替える。手を洗って1日の予定を実行する。

まずは筋トレ、1時間で終わらせる。その次はお風呂掃除、そのあとは勉強といったように着々とこなす。

小学校4年生の時から俺は毎日毎日計画に沿って生きてきた。計画性がありすぎるのだ。それは俺のいいところでもあり、悪いところでもある。なぜならその生き方は時間がすべてだからだ。言ってしまえば時間の奴隷。その影響は昔も今も、そしてこれからも続く。

だからこそ未来の俺がいる。そして神様に拾われたのだ。


はあ、眠くなってきた。少し最近夜更かししすぎか。読書や勉強、ゲーム、アニメ鑑賞、映画鑑賞、筋トレ等々、やりたいことが多すぎる。

時々思う、成功者は1つのことにフォーカスしてやってきたから成功したのではないかと。だからスポーツ選手は怪我1つでキャリアが終わる。なぜならそれ以外をしてこなかったから。見てこなかったから。俺は逆にやりたいことが多すぎる。サッカーをやっていた時からだ。もともと高校でサッカーを続けようか迷っていた。なぜならやりたいことが多すぎたから。時間が足りなかったから。そんなことを考えて今日が終わる。


今日も鈴木さんと登校した。

「おはよう、末野さん」

「おう、おはよう鈴木さん」

そしてまた今日も平和な朝がやってきた。

「あ、そういえば末野さん身長伸びた」

「え、そうか」

「うん、絶対伸びてるよ」

「じゃあ170のったかな」

こう見ると鈴木さんとは結構身長差あるな。

ジーーー。

「末野さん絶対今私の身長見下した」

「いや、してないよ」

「大丈夫です、もう何も語らないでください。あなたの気持ちはわかってます」

「本当に思っていないからな」

てか変ないいまあしだな。鈴木さん。

「そんな末野さんにお願いです。これからはどうか私のことを呼び捨てで呼んでください」

「あー、わかった。これからは呼び捨てで呼ぶよ。あー、鈴木」

「うん、よろしくね末野さん」

「えーと、鈴木、呼び捨てにしてくれないか。俺だけ呼び捨てで呼んでんのなんか変だし」

「無理です、それは何というか、もっと関係が深まってからじゃないと駄目な気がして・・」

「はー、わかったよ」

そんな話をしていたら学校についた。


「はい、じゃあこの問題解ける人」

「はい!」

そう返事をして手を挙げたのは花野だった。

ここでまた彼女の設定を再確認した。花野は成績優秀、運動能力も高く、それでいて容姿端麗の学級委員長。ただの鈴木好きの暴力女ではないのだ。

「起きてください、佐野君」

それに比べて佐野はほぼ毎授業寝ている。


昼休み

「ところで佐野、お前中間の勉強とかしてんのか」

「ん、中間?」

あ、こいつしてねえな。

「2週間後にあるだろ、今日だって中間の範囲告知されてたじゃねえか」

「へ、そうだっけ」

「あんたやばいんじゃないの。授業だっていつも寝てるし、家でもあんたろくに勉強してないでしょ」

「実は私もあんまし勉強得意じゃないんだよね」

「あれ、そうだったけ」

鈴木も勉強苦手なのか。俺もできるわけではないがいつもの時間割を勉強に割けば困ることはないだろう。だけど、佐野は本当にまずそうだな。

「なあ、末野ー。俺ら親友だろー。なあ、今度勉強教えてくれよ」

「俺が、えー。めんどくせえ」

「はー、そりゃないぜ」

「じゃあ、今度勉強会でもしない」

「お、いいね」

「けどどこでやんだ」

「んーー」


勉強会当日

「なあ、末野、なんか飲み物ねえか」

はー、そうなったか。

結局、俺の部屋で勉強会をすることになってしまった。そんなに俺の部屋は広くないのだが。

「おー、いいのあんじゃん」

そう言って佐野は俺のパソコンを触り始めた。

「おい、あんま勝手に触んなよ」

「そろそろ勉強始めない?」

よく言った鈴木。

「そうね、はやいとこ終わらそ」

「おい、佐野もそろそろやんぞ」

「へいへい」

そんなこんなで勉強会が始まった。


「あのー、この問題誰か教えてくれない?」

「数学の問題ね、私無理よ」

「俺も無理」

皆の目線が俺に向く。とりあえず問題を確認する。

うん、ぎりできるくらいのレベルだ。これなら教えられる。

「たぶんできるよ」

「お願いします、末野さん」

そう言ってこっちにノートをもって近寄ってくる。

ち、近いな。彼女のにおいが香る。女の子慣れしていない俺にはなかなか厳しい。


「ありがとう末野さん」

「お、おう」

俺が門題を教え終わったときにはもう外の日は暮れていた。

「そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか、門限とかもあるだろ」

「そうね、そろそろ帰るは」

「んじゃ,俺もそろそろ帰るとするか」

「私も帰る」

そう言って、三人は帰りの支度をし始めた。


「じゃ、またなー」

「お邪魔しました」

「お邪魔しました」

そう言って三人は家をでて行った。

数分後。

「ピンポーン」

家のインターフォンが鳴った。

誰だろうか、急いで自室を出てリビングに向かう。

誰だこんな時間に。

「はい、末野です」

「あのー、末野君、私の家の鍵無い?」

「俺の部屋には鍵らしきものはなかったぞ。まさか鈴木」

「うん、鍵どこかに落としちゃったみたい」

「わかった。親が帰ってくるまで俺の部屋にいなよ」

「いやけどそれは迷惑じゃ」

「いいよ、別に。妹も話し相手が増えて面白いだろ。じゃ、そこで待ってろ」


「お邪魔します」

「いつ親は帰ってくるんだ」

「んー、日によって違うけど、遅くても8時くらいかな」

「じゃあ八時に帰りな、一応連絡はしとけよ」

「うん、本当ごめんね」

「だから別にいいよ、あ、夜ご飯食べてくか」

「それは・・」

「いいよ別に、母さんはオッケーするだろうし」


そんなこんなで俺と鈴木は夜ご飯を食べ、その後彼女は帰った。


翌日

「末野君、昨日はありがとう」

「おう、別にいいよ」

そしてまた一緒に登校した。だんだんと彼女との関係が深まっていくのを自分でも感じる。

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