第6話 ゴリラ
「あ、あー。委員会同じだしちょっとね」
適当に流そう。そうするしかないのだ女性経験が少ない個の俺には。
「委員会だけで登下校共にするかなー普通。私はそれは無理あると思うんだけどなー」
「俺もそれは無理あると思うな〜」
ちっ、佐野め、ここぞと思って入ってきやがったな。ここでてきとうこいてもめんどくなるしな、ここはちゃんと答えておこう。
「帰り道とマンションがたまたま同じだったんだ。そこからちょっと仲良くなったんだ」
「へーそうなんだ、じゃあこれから関係が発展していって付き合う可能性もあるってことね。なるほどなるほど」
ん?花野さんって面倒臭いんだなと俺は内心思った。やっぱり女子って怖い。
あんな人でも裏があるとわ。
「委員長って意外と面倒臭いんだなー」
あ、佐野こいつやったな。
「うるさい、猿は黙ってなさい」
「あ、ごめんなさい。すいませんでした花野様」
うわ怖い。俺も花野様とお呼びしよう。花野様にはファンクラブがあると聞く。いったいいつものお淑やかなキャラとこの今のキャラのどちらをファンクラブには使っているんだろうか。
考えるだけでもゾッとする、家ではどっちのキャラなのか、あるいはまた他のキャラを演じているのか。
「あのー、ところで花野様、鈴木さんとはどう言ったご関係で」
「あなた様ずけはやめて頂戴、呼び捨てでいいから。けど佐野さんあなたは様付けで」
「はー、なんで俺だけ」
「黙りなさい猿」
「申し訳ございませんでした花野様」
案外こいつらは気が合うのかもしれない、漫才を見ている様に思えた。
「話を戻しましょう、私は何というか、その、き、あ鈴木さんとは幼稚園からの幼馴染なの。昔は仲が良かったんだけど今はちょっと色々あってそのなんて言えばいいのか、話しにくくなっちゃったの。その、なんていうか、気になってね。最近の彼女を」
「へー、よはまた仲良くなりたい訳か」
「な、ま、まあそうよ。私はもう一度喜鈴木さんと仲良くなりたいの、昔みたいに」
「昔の友達のことを今でも忘れられない私、ああなんて」
「お前はいいから黙れ」
「はいすいませんでした花野さん」
昔仲良かったね、そんなことはよくある話だとは思うがな。手伝ってやれないこともないがあまり二人の関係についてはよく知らないからな。
しかしながら彼女は本気に見える。どうしようか、まあ暇だしなあ。俺は三人称視点に見立てて自分に二つの選択肢を与えることにした。
手伝うか手伝わないか、どうしたものか。俺はよく三人称視点に見立てて自分を操作するように物事を選択することがある。これも俺の自暴自棄の現れなのかもしれない。さてどうしたものか、暇だしな、手伝おう。
そうして俺はシナリオ数の多い選択をした。
「よければ手伝うぞ、あんまし力にはなれないと思うがな」
「え、本当に!ありがとう末野さん。話しかけにくい感じだったけど案外いい人なのね」
こいつ。よく言われることだが。中学校時代からよく言われていたことだ。小学校時代は全く言われていなかったのにな。
俺は小学校時代は普通に女子とも話していたし俺の休み連絡には他のマンションから女子が来たこともあった。
俺はそのありがたみに気づくことができなかったのだ。
気づいた時にはもう手遅れだったのだが。
そんなことをいつものように回想しているうちに体育の時間も終わり帰りの時間になった。
その日もいつものごとく鈴木さんと一緒に帰った。
「なあ、鈴木さん。高校に昔からの知り合いとか幼馴染とかっていないのか」
「います!」
彼女はそう即答した。
「今はそんなに話していないんですけどね」
そして、彼女は少し考え込む様にして空を見上げていた。
俺は帰ってから花野さんから貰った電話番号に早速電話をかけて帰りのことを話した。
「まあ、そんな感じで鈴木さんも花野のこと忘れてないみたいだぞ」
「そう」
彼女はそうどちらともつかない返事をした。そして、他に話すこともなかった為電話をきった。
そして翌日。
「なあ鈴木さん。部活やってみないか」
「え、部活ですか。確かに楽しいかもしれないですね!」
そうして、彼女は必要最低限の情報を伝え、早速放課後学校の空き教室に呼び出した。
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もう電気がついてる。もしかして、もう末野さんいるのかな。
「失礼します」
扉を開くと、その中には恵ちゃんがいた。
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話があるって言われて来てみたわ良いものの末野はまだなの。
女子を待たせるとは本当にどうしようもないわね。
「ガラガラガラ」
やっと来たのね末野、軽く叱ってやろうかしら。そして扉を見るとその前には鈴木さんが立っていた。
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両者が小学生ぶりに顔を合わせる。数秒の沈黙、その空気の重みが両者の現状の関係を表す。だが、その沈黙を打ち破るかの様に花野恵が発言する。
「鈴木さん、久しぶり。鈴木さんも末野に呼ばれたの」
「あ、はい。末野さんに部活の誘いを受けて来ました」
少し遅れて鈴木喜咲が答える。
そしてまた沈黙。この歪みはいったい何からなるものなのだろうか
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